チャーチズ、愛は死んだのか!? 待望の3rdアルバムに込めた思い
グラスゴー出身のエレクトロポップユニット、チャーチズ(CHVRCHES)が待望のサード・アルバム『ラヴ・イズ・デッド(Love Is Dead)』を発表。7月のフジロックフェスティバル出演も控え、さらなる活躍に期待が高まる3人を直撃。
──2015年に『エヴリ・オープン・アイ』をリリースして以降、どんなふうに過ごしていたのですか?
マーティン・ドハーティ(Key,Vo) 「一年半くらいは、とにかくツアーで世界中を回ったね」
ローレン・メイベリー(Vo)「それから去年の初めだったかしら。『ラヴ・イズ・デッド』の制作に取りかかったの」
──バンドが大きくなるにつれ、ツアー生活も長くなっていくものだと思いますが、各国を巡る楽しみは何ですか?
ローレン「日本も、かつてはまさか自分が訪れるなんて思ってもいなかった場所なのよね。もちろん公演や取材などでスケジュールは埋まってしまうとはいえ、ちょっとした空き時間に観光をしたり、その土地ならではのものを食べたりして、自分にとって新しい体験をするのが楽しいの」
──では新作『ラヴ・イズ・デッド』についても聞かせてください。これまでのチャーチズの作品では“二面性”がクローズアップされていたと思うのですが、今作に取りかかるにあたり何かイメージしていたことはありますか?
マーティン「スタジオに入るまで、いつも特定のイメージは持たないようにしていて、『ラヴ・イズ・デッド』についても、実際に手を動かしながら方向性が見えてきたような気がする。ただ、今回のアルバムはよりライヴ感を大事にしたアルバムであって、また自分たちに自信がついてきたことで変わった部分もあると思う。サウンドや歌詞における陰と陽のバランスについては、どちらかに寄りすぎることなく、妥協点を探すのでもなく、どちらも突き詰められるよう心がけてはいるよ」
──“陰と陽”は現在、私たちが置かれている状況を考えるうえでのひとつのキーワードですよね。制作期間には周りの刺激をシャットアウトするタイプですか?それとも、日々のインプットを作品に反映させていく?
ローレン「音楽については、知らないうちに影響を受けてしまわないよう、なるべく聞かないようにはしているの。でも歌詞に関しては、自分が見聞きする世界や理想に対して抱いているフラストレーションや失望が投影されていると思うわ」
──具体的に心を動かされたニュースや出来事はありましたか?
ローレン「世界情勢や大きな事件というより、私自身の人や物事に対する視点が反映されているのかも。昔から、何かに対していい面だけでなく同時に悪い面も見えてしまって、それによって悲しい気持ちになることも多くて。これまでもそういった歌詞やフレーズはあったと思うんだけど、今作では、それでもどこかに希望を見つけたい、という葛藤や願いも描けているんじゃないかな」
──タイトルの『ラヴ・イズ・デッド』にはどんな意味を込めたのでしょうか?
ローレン「過去2作のタイトルは収録曲の歌詞から引用していたんだけど、今回はなかなかピンとくるものがなくて。あとは今回、それぞれの曲がひとつのテーマでつながっているような気がしたから、それを表すようなタイトルにしようと思ったの。といってもそれぞれの曲で綿密なストーリーを考えたというよりは、たとえば1曲めの『グラフィティ』では過去に起きた出来事を回顧していて、逆に最後の『ワンダーランド』では自分の思いを整理して未来を見据えていたり、曲順でなんとなく流れを作っているイメージなんだけど。“愛は死んだ”だなんて、きっとみんなの目に留まるような強いフレーズだけど、断定しているつもりではなく、疑問を投げかけ、受け止めた人が考えるきっかけになればいいな、と思って」
──強いフレーズや歌詞とポップなサウンドとのコントラストは意識しますか?
ローレン「そうね。さっきの陰と陽の話の延長線でもありつつ、メロディが立っているからこそ、歌詞やプロダクションで冒険できる部分もあると思う。たとえば甘いメロディのポップ・ミュージックの歌詞は必ずしも甘くなくてはいけないわけではないし、もっといろいろな感情をのせる選択肢があってもいいじゃない?」
──セルフプロデュースだった過去2作に対し、今作ではアデルやベックを手がけたグレッグ・カースティンを迎えていますが、初の試みに取り組んだ感想は?
マーティン「今回、グレッグと一緒に仕事をしたいちばん大きな影響は、これまでの5年間、自分たちが築き上げてきたサウンドをさらにレベルアップさせてくれたことだと思うんだよね。しかもチャーチズのエッセンスを何も損なうことなく。あとはこれまで僕らがやってきたことにすごく自信も持たせてくれた。あれだけのキャリアを持った人と密にコミュニケーションを取りながら曲を作る中で、過去には3人だけで『いいね!』と盛り上がって進めてきたところ、彼も一緒にワクワクしてくれて反応を返してくれることで、以前なら躊躇してしまっていたチャレンジにも踏み切ることができたりね」
──収録曲の「マイ・エネミー」では、ザ・ナショナルのフロントマン、マット・バーニンガーをフィーチャーしていますね。彼が参加した経緯を教えてください。
イアン・クック(Key,B,Vo)「あれはデモの段階ではマーティンが歌っていた曲なんだ。だけどマットの声の素晴らしさ、物語を伝える力を曲に取り入れたくてオファーしたんだよね。結果、ローレンの声とのいいコントラストも生まれたと思う。ザ・ナショナルというギターバンドを背負う彼と僕たちのエレクトロニック・サウンドとのケミストリーも働いているんじゃないかな」
──コラボレーションといえば昨年、セカンド・アルバムの収録曲「ダウン・サイド・オブ・ミー」のPVで、女優のクリステン・スチュワートがメガホンをとっていますよね。
ローレン「(ザ・ナショナルの)マットも参加するNPO『プランド・ペアレントフッド』を支援するチャリティ7インチのプロジェクトのために、『ダウン・サイド・オブ・ミー』のスペシャルバージョンを提供したの。クリステンとは友人を介して知り合っていて、実は以前、彼女が監督した短編映画の音楽を担当しないか誘われたものの、残念ながらタイミングが合わなくて…。そんなこともあって今回声をかけてみたら、快く引き受けてくれたの。アーティストとしても人としても尊敬する彼女と、意味のある作品を一緒に作れたのはとても光栄なこと。彼女、とってもクールな人よ」
CHVRCHES『Love Is Dead』
前作『エヴリ・オープン・アイ』から2年半あまりでリリースされた、初めて外部からプロデューサーを招いたサード・アルバム。サード・アルバム。ザ・ナショナルのマット・バーニンガーをフィーチャーした「My Enemy」も収録。
¥2,490(hostess)
URL/hostess.co.jp/chvrches/
フジロックに出演決定!
フジロックフェスティバル’18
会期/2018年7月27日(金)~29日(日)
場所/苗場スキーリゾート
住所/新潟県南魚沼郡湯沢町三国202
URL/www.fujirockfestival.com
Photos:Kohey Kanno Interview&Text:Minami Mihama Edit:Masumi Sasaki