ロディアル 創業者のマリア・ハッチステファニスにインタビュー | Numero TOKYO
Interview / Post

ロディアル 創業者のマリア・ハッチステファニスにインタビュー

弱冠29歳で自身スキンケアブランド「ロディアル(Rodial)」を立ち上げたマリア・ハッチステファニス(Maria Hatzistefanis)。伝説的な美容液「スネーク セラムO2」を生み、成功を掴んだ彼女のそれまでの道のり、起業家として、女性としての生き方の流儀とは?

スキンケアブランド「ロディアル(Rodial)」の伝説的な美容液「スネーク セラムO2」が発売された当初、人々は「一夜にして掴んだ成功」ともてはやしたが、ロディアル 創業者のマリア・ハッチステファニスが「すべての成功はオーバナイト(一晩)なんかでは叶わなかったわ!」と笑いながら語る。 ブランドの初期資金調達に失敗した彼女が、カイリー・ジェンナーやエル・マクファーソン、ポピー・デルヴィーニュなど数多くの著名人から絶大な指示を受けるブランドへと「ロディアル」をどのように成長させたのかを綴った著書『How To Be An Overnight Success』が話題を呼んだ。イギリスでは発売後すぐに完売となり、今を生きる多くの女性の心に響くメッセージを投げかけてくれる。 「人は私のビジネスを一夜にして掴んだ成功だというの。でも、クレイジーで胸が張り裂けそうになったことや、これまでの道のりはみんな知らないの。会社をクビにもなったし、店頭に立って自分で商品を売ったわ。世界の高級デパートから門前払いも受けたわ。自宅のキッチンで商品の配送作業をしていた時代からこれからまで、とっても長い道のりでした。でもゴールはまだまだ先よ」 本の発売を記念して来日したマリアに、起業家として、一人の女性としてのフィロソフィーを語ってもらった。

──まず、「ロディアル」を立ち上げようと思ったきっかけを教えてください。

「大学生の時に初めてついた仕事が『Seventeen Magazine』の美容ライターだったんです。28年ぐらい前のことですがその頃、肌トラブルに対して的確に対応するスキンケアがとっても少なくて…。なんとなく当時から、肌悩み別にターゲットしたスキンケアを自分で作りたいというアイデアが生まれていました。ただその時、私はまだ学生でビジネスをするには早すぎて。
その後、ニューヨークへ移住し数年間、金融系の仕事をしていたのですが、私の情熱はいつだって美容にあることに気が付き、金融の仕事を辞めて、自分自身のスキンケアブランドを立ち上げることにしたのです。それが、29歳のときでした」

──ライターとして10代の頃に美容業界に関わっていたとはいえ、実際に化粧品業界で働くのが初めてという状況のなか、起業することに不安はありませんでしたか?

「ネガティブなことを一度も考えたことはなく、周りにもポジティブ思考の人しかいなかったので、不安はありませんでした。的確に言えば、自分のモチベーションがポジティブすぎて、マイナスなことを考える隙間がなかったんです(笑)」

──化粧品は今も昔も競合が多く、レッドオーシャンのマーケットと言われますが、「ロディアル」がその中から飛び抜けて注目されたきっかけは?

「ネーミングにとてもこだわったんです。一番初めに作ったアイテムは『スネーク セラムO2』という名前。普通でしたらアンチエイジングクリームとか、エイジングクリームという名前をつけがちですが、それでは埋もれてしまうなと。
美容液の核となる成分に『シンエイク』というヘビ毒成分(ヘビの毒に似たペプチド配合の成分)があり、そこから『スネークセラム』と名付けました。そうしたら、名もないブランドなのに、いろんなところで『蛇の美容液』と口コミで広がり! ネーミングって、本当に大切だと実感しました」

──「ヘビ毒」や「ドラゴンズブラッド」など、商品に使用する成分にパンチがありますよね。どんな成分を選ぶのかは、マリアさんの直感なのですか?

「仕事やプライベートで世界中を飛び回っていることもあり、旅先でもコスメのお店を回ったりと、日頃からリサーチは心がけています。アメリカでもロディアルを販売しているので、アメリカからアップデートされた最新の美容情報や新成分に関するニュースを定期的にいただいています。でも、『いまこの成分が業界で注目されそうです』という新成分が40個ぐらいあったとすると、そのうちの5つぐらいしか実際には使えない。だから、本当に商品として出来上がるまでには、成分を含めいろいろと大変な思いをしていますね。
でも最終的には『新しいことをやりたい!』という自分の直感が、どの成分を選ぶかの判断基準。他の人がどう考えているかや、世間のトレンドなどはあまり関係なく、私自身の直感が今のロディアルに導いてくれた気がします」

──金銭的な問題が生じて、従業員を解雇しなければいけなかった…なんていう大変な局面も本に書かれていましたが、今までで一番大変で「チャレンジだったな」と思うことはなんですか?

「そう、過去にはお金の問題で辞めていただかなければならない状況になったこともありました。やはり、一番大変なのはいつも人材に関することですね。だから採用する際の面接は、私が必ず行うようにしているんです。会社の規模が大きくなっても“人”こそが、一番大切だと思っているから。実際にお会いしてみて、必要としているポジションに合わないなと感じた場合は、スタッフが足りなくてもいい方が来るまで待つことにしています」

──ファウンダーとして会社のトップとして、社員のためにやっていることはありますか?

「スタッフみんなが職場でお互いを“ファミリー”だと感じてもらえるように、ロディアルのチームを私自身が家族だと思って接しています。オフィスのなかに『ブレイクルーム』という部屋を作り、仕事で疲れたときに立ち寄ってみんなでコーヒーを飲むとか、金曜日には普段より少し早く仕事を終わらせて、ピザを頼んでみんなでお酒を飲みながらいろいろと話しをしたり。今では100人もスタッフがいるので、普段なかなか話せない方に『最近どう?』と私から声をかけて、カジュアルにコミュニケーションできる機会をつくるようにしています。その部屋に、“Make It Happen(やってみようよ)”というコーポレートスローガンを飾って、みんなでロディアルの感性を共有するようにしています」

https://instagram.com/p/BdwigFeHWvg/?hl=ja&taken-by=mrsrodial

──「ロディアル」がスタートして18年目。その間にインターネットが発達し、SNSなどのソーシャルメディアの力がとても大きく。SNSの進化によって、仕事内容やマーケティング、PRの仕方などはどんな風に変わりましたか?

「私たちのような小さな会社は、大企業のように大きな広告費をかけられないので、SNSによって『ロディアル』というブランドのコスメを世間に知ってもらえる良いきっかけになりました。エンドユーザーと直接繋がれることもメリットです。ただ、SNSは現在どこの企業も力を入れているので、非常に競争率が高くなっていることも確かなんです。私自身、Instagramのアカウント(@mrsrodial:フォロワーは100万人以上)を持っていますが、化粧品を売るために宣伝するというよりは、もうちょっとライフスタイルよりな情報を発信して、自分が好きなファッションだったり、トークショウしている様子などを掲載し、ただ商品を宣伝するのではなく、ブランドとして興味を持っていただけるようにしています。楽しんでInstagramをしているのですが、結果も出ているので素晴らしいマーケティングの手法だと思いますね」

──起業してどんなことが変わりましたか?

「誰かのもとで働く状況と、自分自身で働く場をつくる…という状況は、やはり違いますね。でも一番大きな違いは、起業してからの自分の時間にプライベートな時間はないということ。旅行をしたり、誰かに会ったり…それが例えプライベートな行動であったとしても、開発のインスピレーションとなったりして、すべてが仕事に結びつく。だから私自身の時間はなくなりましたが、いまでもとっても楽しんでエキサイトしているというのが正直なところ」

──マリアさんは起業家であり、ママでも! ものすごく多忙だと思います。

「子どもたちは12歳と14歳の男の子。ちょっと前までは、もっと手がかかってとても大変だったのですが、最近は学校での部活やアクティビティに専念をしたりと、彼らもずいぶん忙しい生活に(笑)。平日はあまり子どもたちとゆっくり過ごす時間は持てない分、週末は一緒に映画を見に行ったり、美味しいレストランに食事に行ったりと、なるべく家族と過ごすように心がけています」

──著書のなかに“End Goal”の目標を持つことが大切と書かれていたのですが、マリアさんにとってロディアルを立ち上げてからのEnd Goalは今のところどんなものですか?

「とにかくハッピーでいることがとても重要。『あれもしたい』『これもしたい』って、頭のなかは常にビジネスのことばかり考えているんです。だから一つのミッションのゴールを目指すというよりは、あれもこれも仕事を楽しみながらハッピーであることが今のゴールですね」

──どんな女性を素敵だと思いますか?

「自信のある人。自信があると、すべての目的意識が決まっているんです。そのなかにはもちろんスキンケアやメイク、ファッションに対する意識もあり、結果、スタイルがある女性になれるから」

──今まで出会った方で、一番印象に残っている女性は誰ですか?

「『ロディアル』の妹ブランドとして立ち上げた『Nip+Fab』というブランドで、キム・カーダシアンを通じて知り合った、カイリー・ジェンナーをキャンペーンのミューズにしたことがあるんです。撮影はLAで行ったのですが、当時17歳だった彼女はLAに到着してすぐに撮影をスタートし、14時間以上にも及んだ撮影に文句も言わず、素晴らしい作品に仕上げてくれ! 17歳とは思えない、本当にプロフェッショナルな働きで。そういう彼女の姿勢に感動しました」

──「ヌメロ・トウキョウ」の読者のなかに「ユニークな人生を送りたい」と願っている方がとても多いと思いますので、なにかメッセージをいただけますか?

「『素敵だな』と思う女性の著書だったり、その方がどんな人生をたどって来たのかを知り、そこからたくさんインスピレーションやアイデアをもらうこと。私自信もいつもそうやって、素敵な女性がたどって来た道からヒントを得て、自分の生き方やビジネスに生かしていますよ」

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Photos : Takeshi Nishimura Interview & Text : Hisako Yamazaki

Profile

Maria Hatzistefanis (マリア・ハッチステファニス) 美容起業家。1999年、特定の肌悩みに応えるスキンケア「Rodial」をイギリス・ロンドンで立ち上げる。ロディアルのほか、Nip+Fab、Nip+Manも展開し、現在は35カ国以上、20,000店舗で販売されている。昨年夏に著書『How To Be An Overnight Success』を発売。www.rodial.jp

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