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People Interview

「Valentino」ピエールパオロ・ピッチョーリが表現するクチュール×ストリート

2018リゾートコレクションのポップアップストア(〜11月19日)をオープンした「ヴァレンティノ(Valentino)」。オープニングのために来日したクリエイティブディレクター、ピエールパオロ・ピッチョーリにインタビュー。

Interview & Text:Etsuko Soeda
Edit:Masumi Sasaki

VALENTINO CREATIVE DIRECTOR PIERPAOLO PICCIOLI By Kenta Cobayashiのコピー
(c) Kenta Cobayashi,Courtesy of G/P gallery

スポーツやヒップホップといったユースカルチャーにインスパイアされた今コレクション。そのコレクションを展開する場と選んだのは表参道・原宿だ。オープニングに駆けつけたピッチョーリ氏が、ブランドが誇るクチュールの技巧とストリートから掬い上げたモダンでアンダーグラウンドなエッセンスとの融合の秘訣について語ってくれた。

──2018リゾートコレクションのインスピレーション源となったのはスポーツ。このテーマを選んだ経緯は?

なぜならスポーツが、現代の私たちにとって生活の大切なパートとなっているからです。ビジネスの場にふさわしい装いをしたり、パーティに行くためにイブニングドレスに着替えたりするように、走るためやジムに行くためスポーツウエアに着替えることは、現代の女性のライフスタイルのなかに組み込まれています。そして、さまざまなシーンがパラレルに存在するこの世界のあり方を表現したかったのです。

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──美しいファッション性とスポーツウエアの持つ機能性を融合することに難しさはなかったですか?美しさと機能性を両立させるための秘訣とは?

2つの要素を融合することはとてもナチュラルな作業でした。例えばトラックジャケットやプリーツスカートに使用した白い糸のステッチですが、これはクチュールの技法のプロセスの一つで、あえてデザインとして取り入れています。スポーティな素材やアイテムに、クチュールの技法を生かすことで、相反する2つの要素を融合させることができたと思います。

──今回発表したヴァレンティノ流のスポーツウエアの特徴についてお聞かせください。

今コレクションの象徴的なアイテムといえば、トラックジャケットやパンツです。現代における新しいスーツと言えます。シルク素材やレースを組み合わせたり、ステッチを施したり、一つひとつ実はクチュールのテクニックを駆使した作りなのですが、出来上がったものはとてもスポーティなルックです。トラックスーツと同じライクラ素材によるドレスやプリーツスカートによって、軽やかなスポーツマインドがありながらも、フェミニニティを表現しました。また、バッグにあしらうスタッズは本来ゴールドなのですが、今回は白で仕上げたことで、アイコン的なバッグに新しいバイブが生じました。このように、何かをほんの少し変えることで、「ヴァレンティノ」の本質を捉えながらも、新しさを創造していくこと、これが今コレクションの目的とも言えるのです。

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──ザンドラ・ローズとのコラボレーションも再び実現しましたが、ザンドラの魅力とは何だと考えますか?そして彼女とのコラボレーションによって、コレクションにどんな変化が生まれましたか?

彼女の一番の魅力は、独自のパンクロマンティシズムだと思います。彼女はどんなステレオタイプにも当てはまらない、非常にユニークな感性の持ち主です。70〜80年代に彼女が打ち出したスタイルは、ただの反逆精神ではなく強いメッセージ性がありました。そんな彼女とのコラボレーションが、ひねりが効いた、そして洗練された革新性をブランドにもたらしてくれたと思います。

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──ヒップホップも今回のコレクションの重要なテーマの一つですが、今コレクションになぜその要素を取り入れたのでしょうか?

ヒップホップは、既存の音楽に手を加えたりリミックスすることで、アイデンティティを巧みに表現しようとした人々による音楽です。さまざまな手法を使って、まったく新しい価値を見出そうとした、彼らの音楽へのアプローチ方法を、今回のコレクションに取り入れたかったのです。

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ピッチョーリ氏が見る東京ストリートとは?

──今回のポップアップストアにはピンクをキーカラーとした日本限定アイテムがいくつか登場します。日本限定アイテムのカラーとしてピンクを選んだ理由は?

ピンクは僕が最も好きなカラーの一つです。この色には不思議なパワーがあると思っています。決してスイートなカラーではないと思います。着る人のアティチュードによって自在に変化する色です。そしてパンクな精神が宿っています。日本人のファッション性にはどこかそんな精神に通じるところがあると思っています。

TOKYO - Valentino VLTN Pop Up Store (21)

──今回のポップアップストアもあえて、東京のストリートカルチャーの発信地である、原宿です。この場所で展開する意味とは?

このプロジェクトの狙いは、「ヴァレンティノ」の持つ歴史や伝統といった要素をいい意味で解き放ち、ストリートカルチャーを独自の観点で表現するブランドという認識を人々に持って欲しいというものです。ストリートを歩く人々に近い距離でアプローチしていきたいのです。バスケットゴールを取り入れるなどして、人々が交わり、スポーツをプレイしたりとインタラクティブな空間を目指しました。僕が表現したい空間を実現するためには原宿という街に集まる人々のバイブが必要だと感じました。



──今コレクションに限らず、「ヴァレンティノ」というブランドを、フレッシュでモダンにアップデートさせることで常に我々を驚かせてくれます。あなたはどのようにして時代の空気感を掴んでいるのでしょうか?

僕は人々を観察することや、ストリートからのバイブを感じることを常に楽しんでいます。何かを創造する上で、人間の営みというものがインスピレーションの源なのです。マーケティングの手法を使うことで時代の空気をキャッチすることはできるとは思いません。オープンマインドでいることで、街や人々や時代のスピリットを感じることができるのです。ファッションとは人々の生活の延長線上にあります。何かをクリエイトするためにはそのことに目を向ける必要があるのです。実際に街を歩いて何時間も人間観察をしますよ。

TOKYO - Valentino VLTN Pop Up Store (3)

──今回の来日ではすでに東京のストリートをウォッチしましたか?

海外を訪れると、必ず時間をとって街の隅々まで見に行かないと気が済まないんです(笑)。今回は昨日到着したばかりですが、裏原宿と明治神宮を訪れました。ほかにも滞在中にカラオケにも行かなければなりません(笑)。忙しい滞在になりそうです!

「VLTN」トウキョウポップアップストアの情報はこちら

Profile

ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo PiccioliI) ローマのヨーロッパ・デザイン学院を卒業後、いくつかの経験を経て1990年フェンディに入社。アクセサリーラインを担当。その後マリア・グラツィア・キウリとともにヴァレンティノに入社。アクセサリーラインの立ち上げを手がけ、2008年にマリア・グラツィアとともにクリエイティブディレクターに就任。その後わずか数年で、世界的に成功したブランドへと成長を遂げる。2016年から単独でクリエイティブディレクターを務める。

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