不妊治療や2度の流産という辛い経験を乗り越え、9月に双子を出産した中川翔子さん。妊娠中に『Numéro TOKYO』で行った対談(記事はこちら)をきっかけに、産婦人科医であり双子ママでもある安部まさき先生と意気投合。奔走するふたりが考える、育児と仕事、プライベートに奔走する現代女性のあり方とは。

不妊治療も妊娠も産後も、不安はいっぱい
安部まさき(以下、安部)「中川さん、ご出産おめでとうございます! 大きなお腹の時にお目にかかったので、双子ちゃんの誕生が我がことのように嬉しかったです」
中川翔子(以下、中川)「ありがとうございます! 検診に行くたびに『高齢・ハイリスク・多胎をなめるな!』と怒られっぱなしの妊婦ライフでしたが、なんとか無事に産まれてくれて」
安部「双子妊婦さんは早産などのリスクも高くなるので、どうしても医師からあれこれ注意されてしまいがちですよね」
中川「私は2回の稽留流産という引き裂かれるような悲しみも経験しているので、正直、妊娠中は不安でいっぱいでした。お腹が大きくなるとどんな体勢でもしんどいし、妊娠後期には肺と横隔膜が圧迫されて、声も出なくなったことも。大丈夫かな、無事に産まれてくれるかなという怖さがずっとつきまとっていました。35週すぎて『むくみがひどいから入院しましょう』と言われた時にはほっとしました」

安部「高齢出産の方だと、妊娠中期から半年近く入院というケースもあります。お仕事をしながら、発信しながら無事に出産なさったのは本当に素晴らしいですよ」
中川「帝王切開は麻酔が効いていて術中は痛みがないので、『本当にいま赤ちゃん産んだの?』と不思議な感じでしたね。泣き声が聞こえた時に、時間はかかったけれど、2人でここに来てくれたんだなという実感が湧きました。先祖だったり、家族だったりの血をバトンタッチするという子どもの頃の夢が叶って、畏れ多いし、大変だし、怖いし、可愛いしといういろんな感情がせめぎあっています。ただ、そのかわり術後の後陣痛と子宮収縮はめちゃくちゃ痛かったですね」

“大変”はすべて“面白い”に変換!
中川「双子妊娠などリスクが高いと、とにかく安静にと言われるんです。特に妊娠後期はスーパーにも行かないように、歩かないようにと注意されていて、ただぼーっと楽な体勢を探しながらアニメを観て横になるしかなかった。双子合わせて5.2キロでお腹が巨大になりすぎて、シムスの体勢でもしんどいんですよ。家の中ですら、お風呂やベッドの上り下りもきつい。足元が見えなくてぶつけるし、トイレも近い。一人でいる時間は、身体もメンタルも相当きつくて、かなり追い込まれていました」
安部「医師である私も、妊娠中はやはり不安になりましたよ。特に初めての妊娠で双子を授かったときはいつも心配していて。その気持が出産の日まで続くんですよね。」
中川「むくみがひどくなって、ついに入院になった時は、逆にホッとしました。家にいても、どうしたらいいのか分からないくらいお腹が巨大になっていたから。入院する時、たまたまiPad miniを持っていったんです。今の大変さって、人生の中でもすごく貴重な出来事の連続の日々なのでは…!と思って、絵日記を描いてみたんです。インスタに載せたら、先輩ママたちから『わかる!』『そうだったよね!』とたくさん反響をいただいて。もともと絵を描くのは大好きなので、ベッドで動けない毎日の息抜きとして、絵日記が新しい趣味になり大活躍しました。いつか双子にプレゼントしたい!という気持ちで描いていると、いくらでも描きたいことが溢れてくる。それが“大変”を“面白い”に変換するきっかけになりました。妊娠中はずっと時間があったのに、これをやろうという発想になれなかったのは、きっと不安で頭がいっぱいだったからかも。入院して、塩分コントロールされたご飯を3食出していただけて、先生が赤ちゃんが無事かどうか毎日診てくださる。そうやってやっと、心と身体がホッとできたんだと思います」
安部「中川さんの絵日記、私も拝見しててすごく楽しかった! うちのクリニックにいらっしゃる皆さんの話を聴いていても、たくさんのママさんたちがあの絵日記に励まされているのがよくわかります」
中川「そうなんですね、嬉しい! 以前、日常のあれこれをエッセイ漫画にしようと挑戦したことがあるのですが、なかなかうまくいかなかったんです。それが、妊娠や出産、子育てとなると、無限に書きたいことが出てきて。40歳くらいまで生きてくると、なかなか“初めて”ってないじゃないですか。でも、妊娠や出産についてはすべてが初めてで、びっくりで、大変で。『あ、これはぜんぶ面白いんだ!』と、絵日記を書くことで再認識できたんです」
安部「フォロワーさんの中には、『しょこたん、絵日記書くよりもちゃんと寝て!』なんて心配している方もいらっしゃいますが、むしろストレス発散なんですね」
中川「今思えば、産後すぐは麻酔でハイになってぎっしり書いていた時もあります(笑)。でも、絵や文にしないと忘れちゃうからその時にしかわからない気持ちを残しておきたいなと思うし、子どものことが心配で一睡もできない時に、絵日記を書くことでむしろ頑張れたんです。新しい趣味を見つけた感じ!」


“ひとりじゃない”が大きなパワーに
安部「産後の母親のメンタルケアは、今もなお大きな課題です。中でも双子のママさんたちは育児の大変さが重なり、心身ともに大きな負担を抱えやすい状況にあるので、心を病んでしまうことも少なくありません。そんな中で、中川さんが絵日記をつけることで毎日の小さな出来事に楽しみを見出し、『楽しさ』や『幸せ』へと変えていったことは本当に素晴らしい! これから出産する、あるいは育児に向き合っているお母さんたちの励みにも、希望にもつながると思います」
中川「逆に、私もフォローしてくださるお母さんたちに励まされています。妊娠中に落ち込むことがあってデジタルデトックスしていたのですが、インスタは治安が良くて、みなさん優しいし色々教えてくれる。産後も、Threadsを見ていたら授乳中の夜中のお母さんたちのグループができていて、みんなで『一緒に頑張りましょう!』ってなって救われました。ひとりじゃない、いろんな人がいる!って思えるのは大事。いつかリアルでママ会をやりたいです」
安部「そのバイタリティ、すごいですね」
中川「直接は会えていないけれど、全国にママ友ができたような感じ。みなさんが受け止めてくれることで、居場所ができたなと思いました。だから私も、不安に思っている妊婦さんやママさんに大丈夫だよ、なんとかなるよ!と伝えていきたい。子どもたちにも、皆で助け合って楽しくしている大人の姿を見せたいですね」
安部「私もそういう妊婦さんやママさんを応援したいので、うちの病院で出産もしていただけるように準備中なんです」
中川「なんて素敵! まさき先生は4人の育児も楽しんで、お医者さんとしても活躍されていて、本当に大リスペクトです」
安部「少子化が進んでいるといわれる今だからこそ、妊婦さんが安心して出産できる場所や、産後の回復を支えてくれる場所が必要じゃないかと。ただ『産む場所』ではなく、喜びのあるお産を迎えられる場所を作りたいと思っています」
中川「本当ですよね。病院やホテルなど、産後ケアには4回ほどお世話になりましたが素晴らしい! あれがなかったら、私は絶対に倒れていたと思います」
安部「産後の体の辛さや育児の大変さをひとりで抱え込むと、産後うつにつながってしまうこともあります。頑張りすぎず、手助けを求めるということも大切。今は産後のケアやサポートも以前よりかなり充実してきているので、遠慮せずにどんどん利用していただきたいですね」
中川「双子は可愛いけれど、お腹は痛いし、眠れないし、鏡を見ると自分がボロボロで落ち込むし…。産後ケアにいってプロの方が双子を見てくれた時に、やっとゆっくり眠ることができて救われました。わからないことを教えていただいたり、産後の養生になるお食事を用意してくださったり、おっぱいマッサージなど産後の体のケアができたり、場所によっては本やまんがまで用意してあって。この憩いの場がどれだけ尊いかと感動しました」
安部「一泊でもストレス発散になりますよね」
中川「産後ケアを奥様にプレゼントする素晴らしい旦那さんもいるそうですよ。ほかにも、私が住んでいる地域は医療費が高校生まで無料だったりと、支えてくれる仕組みがたくさんある。すごく安心できるし、社会に感謝しますね」

「すみません」は封印し「ありがとう」に
中川「妊娠や出産って物理的にも大変ですけれど、精神的にもきますよね。私は、こんなに仕事をストップさせたことがないので、それに対する焦りや“社会から取り残されている”感があって」
安部「産まれるまでも大変ですが、産まれてからの身動きのとれなさも想像を超えていますよね」
中川「今まで何も考えないでやってきた自由が、物理的に封印されて。特に、双子用のベビーカーだと大きくて通れない場所も多いので、スーパーすらなかなか行けない現実にびっくり」

安部「よくわかります。私がひとりで双子を連れて外出できるようになったのは、産後1年経ってからでした。子どもが4人となった今は、主人や母、それに子どもが3人いる妹の協力なしには暮らしていけません。お互いの家を行き来しているので、夜になると子ども7人がどちらかの家でガヤガヤしてます(笑)」
中川「子どもたちが、親族のきずなをつなぎ直してくれますよね。夫や母の助けも嬉しいのですが、ほとんど連絡をとっていなかった従姉妹まで手伝ってくれるんですよ。恐縮すぎて、周囲に『すみません』『ごめんなさい』って言ってたら、従姉妹が『ありがとうでいいんだよ!』って言ってくれて」
安部「その言葉は泣けますね」
中川「助けてもらうことに罪悪感があったんだなと思って、メンタル手術をして『ありがとう』を言えるようにしました」

育児も仕事も、追い込みすぎず楽しむ
安部「私は最初の出産が研修医のときだったので2か月で復帰しましたが、やはり周囲にはすごく助けられました」
中川「本当ですよね! 産休でこんなに長く立ち止まるのも初めてだったので、すごく怖かったし焦りもありました。妊娠中は『来年のお仕事、全部やります!』なんて言っていたけれど、産後3か月経ってもこんなに身動きがとれないんだ……と、想像していなかったことがいっぱいです。でも、双子はめちゃくちゃ可愛いし、お仕事も楽しいし、外の空気を吸えるって幸せだなとも思うんです。赤ちゃんがまだ小さいのに働きに行く罪悪感への葛藤もありました。でも、家族やまわりのみんなで一緒に育てている感覚もあって。双子と自分の身体を第一にしながら、無理はしすぎず、お仕事をいただけるありがたさも噛みしめて、ママと仕事の両方を頑張れたらいいなと思っています」
安部「私は完璧主義なほうなのですが、子どもができて、うまくできないことは適当でいいかなと思うようになりました(笑)。靴が履けないとか、あっちに行きたいとかぐずられて、待つのが当たり前なので」
中川「大変だけれど、たくさんのママさんたちから『大変だね』とか『よく頑張ったね』とSNSでもリアルでも優しく声をかけてくれて救われます。大変だけれど可愛いが勝る!」

出産や育児で、“人生のチャプター2”へ
安部「そういえば、私は昨日、まんが好きな子どもたちとアニメイトに行ってきました。子どもが大きくなるとそういう楽しみも増えますよね」
中川「それもすごく楽しみ! 食べものとかまんがとか遊びとか、子どもたちが何を好きになるかなって想像するだけで泣けちゃう。押し付けちゃいけないとは思っているのですが、神である『ドラゴンボール』と『ゲゲゲの鬼太郎』だけは目につくところに置いておきたいな(笑)」
安部「妊娠する前は『女の子だったらラプンツェルのコスプレさせたい』なんておっしゃっていたけれど、双子男子はいかがですか?」
中川「男の子、めちゃくちゃ可愛い! 最高可愛いです! 親子でディズニーにも行きたいし、チップ&デールを着せたいなとか、夢が膨らみます」
安部「楽しみが広がりますよね」
中川「以前、NHKの『おかあさんといっしょ』のファミリーコンサートに出させていただいたことがあるんですが、『ぼよよん行進曲』で、曲に合わせて親が赤ちゃんを持ち上げるんですよ。ステージから観ると、客席にたくさんの赤ちゃんが飛んでいるみたい! 今度は私もお客さんとして行って、双子をぼよよんさせたい!」

安部「それは絶対に楽しいですね! 子どもが産まれると生活はがらっと変わり、毎日が子ども中心になりますよね。けれどその中で日々新しい発見があり、子どもと一緒に成長し、これまで知らなかった楽しさに出会ったり、小さな優しさや喜びを感じたり、人とのつながりの温かさに気づいたり…。そんな時間が少しずつ積み重なっていくのだなと実感しています」
中川「私は、そもそも子どもを産む人生になると思えない……と悩んだこともあるし、過去のLINEを見たら『もう私は孤独に死んでいくんだ』なんてつぶやきもあって(笑)。40歳からでも人生の第2章が始められるんだと、双子に教えられている気分です。実はまだ、不妊治療中に採った卵が2つ、保存されていて。年齢もあるしさすがに大変だから無理だなと思いつつは破棄できないんですよ」
安部「母親の年齢が上がるにつれて、妊娠中のリスクも高くなってきます。その点で、中川さんが若い年齢のときに採卵し、凍結胚が残っているというのは良いですね。もしかしたら中川さんの未来には第3章が始まる可能性もあるのかも?」
中川「双子が二卵性ということもあるのか、同じ親なのにこんなに違うんだ!というのが面白くて。あと2個の卵はどうなんだろう?と考えてしまいますね」
安部「どうしても双子って、どちらが足が速いとか、どちらが勉強できるとか比べられがち。でも、それぞれ個性があるまったく違う人間ですよね」
中川「すごくわかります。ふたりは全然違って、どちらも可愛い。そして、その愛がどんどん広がっているんですよ。“赤ちゃん可愛い”から始まって、“すべての人が赤ちゃんだったんだ……みんな可愛いじゃないか!”ってなってきて。私は人が怖いと思いながら生きてきた部分があるんですが、出産を経て人が好きになりました。マネージャーさんからも『子どもが産まれて明るくなったね』と言われたし(笑)。出産して世界が狭まるのでは?という恐怖があったのですが、逆にマインドが広がった感じ。これも大変、あれも知らないーーーそして全部が面白い!」
コミックエッセイ『しょこたんの子育てクエスト ママLV.1』を発売
中川翔子によるコミックエッセイ『しょこたんの子育てクエスト ママLV.1』が、2026年5月1日に宝島社から発売される。2025年9月末に双子の男の子を出産した中川が、妊活から妊娠、出産、産後の双子育児までの体験をユーモアとリアルを交えて描いた一冊。SNSに投稿された漫画に加え、本書限定の描き下ろしエピソードも。発売を記念し、5月24日には六本木 蔦屋書店でイベントも開催予定。
『しょこたんの子育てクエスト ママLV.1』
発売日/2026年5月1日(金)
定価/¥1,980
Photos:Asuka ito(Portrait) Direction & Styling:Ako Tanaka Hair & Makeup:KENJI(Shoko Nakagawa),Kei Kouda(Masaki Abe) Interview & Text:Satoko Takamizawa Stylist Associate:Makoto Matsuoka Edit:Naomi Sakai Special Thanks:Maki Konikson,Masaki Abe,Nanohana Ladies Clinic
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