この春、銀座に満開のアートが花開く——現代美術家SHUN SUDO独占インタビュー | Numero TOKYO
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この春、銀座に満開のアートが花開く——現代美術家SHUN SUDO独占インタビュー

ひと目見たら忘れられない「BUTTON FLOWER(ボタンフラワー)」をアイコンに、ポルシェや「クリスチャン ルブタン(Christian Louboutin)」とコラボレーションするなど、注目を集める現代美術家SHUN SUDO。ニューヨークでのデビュー個展から10年を経て新境地を開拓、全点新作による大規模な展覧会がGinza Sony Parkで開幕を迎える。象徴的な“花×ボタン”モチーフの由来から、たゆまぬ創造の秘訣まで。Numero.jp独占取材によるインタビュー。

都内のアトリエにて、制作中の作品とともに。
都内のアトリエにて、制作中の作品とともに。

“人の心をつなぐ” 自由な作風を育んだもの

——表現のコンセプトと、作品を象徴するモチーフ「BUTTON FLOWER」に込めたメッセージについて教えてください。

「世界中を旅して印象に残った風景や出来事が、記憶やイメージとして自分の頭の中に蓄積されていき、それをどう表現しようかなと考えながら絵と向き合っています。『BUTTON FLOWER』については、2015年に初めてニューヨークで個展を開催した時に描いたモチーフが原点です。街の人々のエネルギーを花に見立てて、花とスマイルマークや洋服のボタンを組み合わせて描いてみたところ、モチーフとコンセプトがぴたりとはまる感じがして。それ以来、二つの生地をつなげるボタンのように、『人と人の心をつなげたい』という思いを込めるようになりました。もし世界地図で生地を作ったとしたら、端にある日本をボタンとして、西洋と東洋を1枚のジャケットとして留めることができる。そんなイメージも重ねています」

「ART IN THE PARK:SHUN SUDO “HANA-MI”」展示風景より。色とりどりの「BUTTON FLOWER」が会場を彩る。©︎ Keisuke Nishitani
「ART IN THE PARK:SHUN SUDO “HANA-MI”」展示風景より。色とりどりの「BUTTON FLOWER」が会場を彩る。©︎ Keisuke Nishitani

——独学でアートの道を志したそうですが、そのきっかけは何だったのでしょうか。

「絵に関しては、物心ついた頃からずっと描き続けてきました。その後、海外に遊びに行った時にリキッドアイライナーで友達の肌に絵を描いてあげたところ、とても喜ばれて。言葉の壁を超える力を感じましたね。そこから誕生日カードを描いてプレゼントしたりするうちに、自分が表現できるもののなかで一番これがしっくり来るな、と感じるようになりました。
あと大きいのはマンガからの影響です。子どもの頃はマンガばかり読んでいましたし、絵を描く時も『ドラゴンボール』をはじめ、モチーフをポップにデフォルメして描く鳥山明先生ならではの技法など、インパクトを受けた表現を自分なりに探求して、楽しみながら描いていました」

都内のアトリエにて。
都内のアトリエにて。

——マンガと異文化交流を通じて、日本らしさとポップの両方に通じる感覚を養っていったわけですね。

「日本らしさといえば、実は小学生の頃、歌舞伎の舞台に子役として出ていました。海や松の木など、歌舞伎の書き割りの絵は独特のデフォルメ表現で、舞台の上から見るとすごく巨大でインパクトがあった。あの時の影響から、体で圧を感じられるような絵を描きたいなと思うようになりました。歌舞伎については代々の家柄というわけでもなく、子役で辞めてしまったのですが、二代目 中村吉右衛門さんにはとても可愛がっていただきました。吉右衛門さんも絵を描いてらっしゃって、地方巡業中に僕が海を見て描いていたら「目に映るものすべてを描かなくていいんだよ」と教えてくださって。楽屋で化粧中の僕の姿を描いていただいた絵は、今でも大切な宝物です」

——まさに貴重な体験です。東洋と西洋、描くことと魅せること……多感な頃に感じてきたさまざまな要素が、現在の作風である、文脈を超えた表現にもつながっている気がします。

「イラストレーターとして活動した経験も大いに反映されていると思います。クライアントの要望に合わせていろいろなタッチで描いていくうちに、おのずと表現の幅が広がりました。ニューヨークでの初めての個展『Paint Over』でも、伝統的な水墨画を思わせる表現の上にストリートっぽいポップなタッチを重ね、固定観念を打ち壊そうと試みました。独学で始めたこともあり、その後も自分の中でジャンルを決めず、好きなものを自由に描く感覚を心がけています」

Ginza Sony Park外観。「ART IN THE PARK:SHUN SUDO “HANA-MI”」のビルボードが銀座・数寄屋橋交差点に華やぎを放つ。©︎ Keisuke Nishitani
Ginza Sony Park外観。「ART IN THE PARK:SHUN SUDO “HANA-MI”」のビルボードが銀座・数寄屋橋交差点に華やぎを放つ。©︎ Keisuke Nishitani

Ginza Sony Parkに満開の花が咲き誇る展覧会

——今回の展覧会が開催されるGinza Sony Parkとは、2025年のオープン前からコラボレーションや展示を重ねてきました。

「きっかけは、僕自身がGinza Sony Parkの考え方に触れたことです。具体的には、旧ソニービル(1966〜2017年)の建て替えにあたって、誰もが思い思いに過ごすことのできる “公園” を作るというプランでした。古いビルの解体後の2018〜21年には、銀座の一等地にもかかわらず、高い建物がなく植物がたくさん植えられたスペースが出現して、『本当にこんなことができるんだ』と驚きましたね。その時は地下のアートウォールを手がけたり、実験的スペースのSony Park Miniで作品を展示したり。その後も工事期間中の仮囲いに絵を描かせていただいて、現在の建物がオープンする直前の24年にも、内装工事前の空間で山口幸士さん、玉山拓郎さんと3人展『ART IN THE PARK(工事中)』を行うなど、普通ではできないような体験をさせていただいたと感じます。その経験をふまえて、次はぜひ一人で展覧会をやりたいと思い、今回の展覧会につながったという流れです」

「ART IN THE PARK:SHUN SUDO “HANA-MI”」展示風景より。©︎ Keisuke Nishitani
「ART IN THE PARK:SHUN SUDO “HANA-MI”」展示風景より。©︎ Keisuke Nishitani

——「ART IN THE PARK:SHUN SUDO “HANA-MI”」と題して、実に4フロアにもまたがる大規模な展覧会になりますが、どんなコンセプトで臨みますか。

「Ginza Sony Parkのコンセプトは、『アクティビティと余白で、人と街、人と人をつなぐ。』こと。銀座の中心にありながら大きな空間で街とつながり、誰もが自由に楽しめる公園のような余白を体現している点に、僕もつねづね共感してきました。そして、今回の展覧会が開催される3月の日本は、桜が咲くお花見の季節。僕がいろいろな景色の中で見た花を、余白がコンセプトの空間にたくさん咲かせることで、訪れる人の心を動かすことができたならと考えています」

——「BUTTON FLOWER」のモチーフに込められた意味と、誰もが楽しめるお花見というコンセプトに、昨今の世界情勢にも通じる強いメッセージ性を感じます。

「実は、表現に強いメッセージを込めるのはあえて避けるようにしています。作品を見た人から『元気が出るね』と言われることが多くて、今回もGinza Sony Parkのコンセプトのとおり、見る人に余白を持ってアートを明るく楽しんでもらいたいと考えていますね。実際、コロナ禍の2020年には作風をガラリと変えて、世界の出来事をテーマに描いていた時期もありました。アメリカ大統領選のニュースを見て、日米両国の最も有名なキャラクター同士がジャンケンをしている絵を描いたり、ブラック・ライヴズ・マター(BLM)の人種の問題を受けて、黄色いコーンに白いバニラと茶色いチョコレートのミックスソフトクリームの絵を描いたり。その後、こういうメッセージ性は自分の核としてありつつも、見る人にはなるべく明るく見てほしいなと思うようになったんです」

過去の作品より。(左)『Are You Ready?』、(右)『New Normal Temperature』(ともに2020年 ©︎SHUNSUDO)※参考作品

何者にもとらわれず変化していくアートの展望

——そうしてご自身のスタイルを確立されてきたわけですが、「BUTTON FLOWER」のモチーフを縁取る黒い線が近年では柔らかく、よりフリースタイルな印象に変わってきました。その理由は?

「10年間、アクリル絵の具で描いていたのですが、とりあえず自分の形がはっきりしてきたので、ここ数年は油絵の具で描くようになったのがまず一つ。油絵のほうが表現の幅が広いと感じますし、新しい絵をどんどん描いていく感覚で試してみています。僕自身、子どもの頃に『美術って難しいな』と感じてしまったこともあり、そういう敷居の高さを取り払いたいという思いがある。ヨーロッパの美術館に行くとピカソやモネの絵を誰もが気楽に楽しんでいますが、僕の絵もそうやって、自由に楽しんでもらえたらと思うんです」

「ART IN THE PARK:SHUN SUDO “HANA-MI”」展示風景より。さまざまなタッチの「BUTTON FLOWER」の表現も見どころの一つ。©︎ Keisuke Nishitani
「ART IN THE PARK:SHUN SUDO “HANA-MI”」展示風景より。さまざまなタッチの「BUTTON FLOWER」の表現も見どころの一つ。©︎ Keisuke Nishitani

「日本の小学校の授業でも、上手とか下手とか、苦手意識を植え付けられてしまう場合がありますよね。図工の授業の時、秋に落ち葉を拾ってきて絵を描いたんですが、先生がイチョウの葉を描いている女の子に『赤い葉っぱのほうがきれいだろう』と言ったことに違和感を覚えた記憶が残っていて。とはいえ、その先生のことは今でも尊敬しています。教室に音楽を流して、音に合わせて好きなように描かせてくれた楽しさは忘れられない。だからこそ、好きなものを自由に描きたい。今も油絵初心者なりに表現を広げて、いろいろなタッチを試みているところです」

「ART IN THE PARK:SHUN SUDO “HANA-MI”」展示風景より。圧巻の大型作品も初公開される。©︎ Keisuke Nishitani
「ART IN THE PARK:SHUN SUDO “HANA-MI”」展示風景より。圧巻の大型作品も初公開される。©︎ Keisuke Nishitani

——クリスチャン ルブタンとのコラボレーションのためにパリに滞在したことも、いろいろな気づきにつながったそうですね。

「ルブタンさんとお会いしたところ、絵をすごくいいねとほめてくださって。1年ほどパリに通って打ち合わせや制作を重ねるなか、当初の予定から拡大して、ロンドンやミラノなど、各国で僕の絵を使ったキャンペーンを展開してくださいました。その頃につながったパリのグラン・パレRmn芸術工房と、今回の展覧会で発表するスカルプチャーの制作プロジェクトがスタートしたり、街の景色などに触れるなかで『ここで生活して絵を描いてみたい』と思い、アパルトマンを3カ月借りて美術館に通ったりしたことが、大きな影響につながったと感じます。そうやって見てきたものを自分なりにどう表現できるかな、と考えて日々描いていますね」

「ART IN THE PARK:SHUN SUDO “HANA-MI”」展示風景より。グラン・パレRmn芸術工房で制作したスカルプチャー作品。©︎ Keisuke Nishitani
「ART IN THE PARK:SHUN SUDO “HANA-MI”」展示風景より。グラン・パレRmn芸術工房で制作したスカルプチャー作品。©︎ Keisuke Nishitani

——将来の目標と、アーティストを目指す若者に向けたアドバイスをお願いします。

「今、こうやって描いていること自体が幸せなので、ずっと絵を描いていきたい。その結果、自分の絵がどう変化していくかも楽しみだったりします。一方で、もっと世界中、いろいろな場所に行ってみたいという思いもある。その土地の景色や印象が自分に影響を及ぼして、それが絵の中にも表れてくるんです。若い人たちへのアドバイスとしては、とにかく量を描くことだと思います。僕自身、頭の中に描きたいイメージはあるけれども、どんどん描いていかなければ、いい線は生まれてこない。イラストレーターの経験を経て、自分の中に表現のバージョンが数多く蓄積していることがすごく役立っていると思います。僕も今まさに描きながら、新しい自分のスタイルを探しているところです」

「ART IN THE PARK:SHUN SUDO “HANA-MI”」展示風景より。会場限定のオリジナルグッズにも注目だ。©︎ Keisuke Nishitani
「ART IN THE PARK:SHUN SUDO “HANA-MI”」展示風景より。会場限定のオリジナルグッズにも注目だ。©︎ Keisuke Nishitani

「ART IN THE PARK:SHUN SUDO “HANA-MI”」
2025年に作家活動10周年を迎えたSHUN SUDO。花を描いた油彩の新作でGinza Sony Parkの4フロアに満開の花を咲かせる展覧会。新作のシルクスクリーンやスカルプチャー作品のほか、新作BE@BRICKの先行発売、トートバッグなど会場限定のオリジナルグッズも販売される。

※掲載情報は3月6日時点のものです。
最新情報は公式サイトをご確認ください。

会場/Ginza Sony Park B3F、B2F、3F、4F
会期/2026年3月7日(土)〜3月29日(日)
住所 東京都中央区銀座5-3-1
時間/11:00〜19:00 ※最終日は〜17:00
休場/無休
料金/無料
URL/www.sonypark.com/activity/019/

Portrait : Wataru Hoshi  Interview : Ako Tanaka, Keita Fukasawa  Edit & Text : Keita Fukasawa

Profile

SHUN SUDO しゅん・すどう 現代美術家。1977年、東京都生まれ。20代で世界を旅し、アートの技法を独学で身に付ける。2015年、ニューヨークで初めての個展を開催。その表現はスケートボード、グラフィティ、マンガ、アニメなど、成長の過程で影響を受けた日米のポップカルチャーや、日本画、墨絵などからのインスピレーションに至るまで、多岐にわたる要素から構成される。作風を象徴するアイコン「BUTTON FLOWER」は、クリスチャン ルブタン、ポルシェ、ソニーとのコラボレーションや、日本テレビ『24時間テレビ』チャリティTシャツにも登場するなど、多くの人に愛されている。https://www.shunsudo.com/ja/
 

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