森且行インタビュー。24年間の生き様と、仲間やSMAPへの思いを語る。『オートレーサー森且行 約束のオーバル 劇場版』
Interview / Post

森且行インタビュー。24年間の生き様と、仲間やSMAPへの思いを語る。『オートレーサー森且行 約束のオーバル 劇場版』公開に向けて

22歳でトップアイドルからオートレーサーへの転身を果たした、森且行。彼の生き方に迫るドキュメンタリー映画『オートレーサー森且行 約束のオーバル 劇場版』が全国公開される。

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森且行は、1996年に「SMAP」のメンバーとして人気絶頂のなか、幼少時からの夢であったオートレーサーに転身。2020年11月3日には24年目にしてついに悲願の日本選手権初優勝を果たすも、そのわずか82日後、レース中に大怪我を負ってしまう。手術とリハビリを経て、レース復帰するまでの壮絶な日々に穂坂友紀監督が密着。実兄や担当医、レーサー仲間らの証言と森自身の言葉を通じて、これまで見えてこなかった森且行の生き様を浮き上がらせる。

本作は23年3月のTBSドキュメンタリー映画祭で上映された作品に、大幅な追加撮影映像を加えて新たにつくったもの。その公開に先立って、森且行がNumero.jpの単独インタビューに応じた。

心の痛みより、体の痛みのほうが我慢できるんです

──ドキュメンタリー映像のために密着取材を受けた理由は何だったのでしょうか?

「正直に言うと、最初はお断りしていたのですが、何度断っても監督がへこたれない。そのメンタルの強靭さに折れました(笑)。これだけ諦めないということは、“いいものを撮れる”という監督の自信の表れでもあるな、と。そして、いつも応援してくださるファンの皆さんを一番に考えた時に、喜んでもらえるに違いない、とも思いました」

──レース中の事故で大怪我をしてから復帰するまで2年3カ月。森さんのメンタルこそ、強靭でまさに不屈の精神だと思いました。諦めそうになったことはありますか?

「それはもちろんありますよ。オートレーサーの養成所に入所早々、大腿骨を骨折して復帰が危ぶまれたときもですし、腰周りの感覚がなくなるほどヘルニアが悪化して緊急手術を受けたときもそう。でも、ヘルニアの手術後3、4日で、トレーニングさえしたらいけるって思えたんですよね。1カ月後には、実際にレースに出場していました。あまりの激痛に驚きましたが、その一方で“大丈夫”という確信も持てたんですよね」

──怪我、手術、リハビリ。痛く辛い日々だったと思いますが、それでもオートレースを続けようと思ったのは?

「オートレースが好きだからどんな努力もできる、というのはあります。そして、痛みよりも“出場しなくては”という気持ちが大きかったですね。僕は、心の痛みより、体の痛みのほうが我慢できる。脚に装具をつけて初めて一歩踏み出した瞬間も、たいへんな激痛でしたが、“歩けるようになる”という希望を感じたんです。その後も、先生にお願いして可能な限りリハビリを行い、先生が不在の時も他の方に迷惑にならない程度に廊下を行き来したり、階段を上り下りしていました」

──希望を見つけるのがお得意なんですね。

「そうかもしれないですね。でも、一歩ずつですよ。いきなりはできないので、今目の前にあること、できることを考えて、すぐに行動に移す。その一歩一歩が復帰につながっていくと思っていたので」

──映画の中で「恩返し」という言葉を何度もおっしゃっていたのが印象的でした。

「特に(事故で)一緒に転倒した恵匠(新井恵匠選手)には特別な思いがありましたね。彼が悪いわけでは決してないと何度も伝えましたが、それでも彼は辛い日々を過ごしていたはずです。彼のためにも復帰を、もし復帰戦で一着をとれば恵匠が喜んでくれる、しかも早いタイミングならもっと喜んでくれる、そんなふうに考えていましたね」

──実際、復帰戦はいかがでしたか?

「珍しく精神的にきつい状態でした。復帰まで暗黙のリミットがある中で、練習を何度しても納得いくような走りができず、しかも3周目あたりからは神経障害が出てうまく踏ん張れない。そんなとき、ファンの方から『無事にゴールしてくれるだけでいいから』とエールをいただいて、草彅(剛)君には『復帰しただけで、勝ちだから』という言葉をもらい、かなり吹っ切れました。とはいえ、復帰戦当日のメンタルはギリギリ。レース後の会見は決定事項だったので、結果がどうであれ行わないといけなかったんです。一位か転倒かしかない。そんな思いで挑みましたね」

ヤジを受けても、ファンの応援に助けられていました

──SMAPをやめてオートレーサーへ転身。当時、とてもセンセーショナルだったことを記憶しています。迷いはなかったのでしょうか?

「一切なかったですね。オートレーサーの試験を受けるにあたり、中途半端ではダメだと思っていたので、たとえ合格しなくても、SMAPをやめる覚悟で挑みました。合格してからは、日本一になるまで妥協せず頑張るしかない、と。ただ、オートレースファンの方々にヤジられたときは、さすがにズシンときました(笑)」

──映画のシーンにもありましたね。

「僕が落車すると、オートレースファンの方から罵声が飛んでくる。それに対して“そんなこと言わないでください”とファンの方が応戦して、ケンカになっていることも幾度となくありましたね。でもファンの方のそんな姿や、“次、頑張ってくださいね”という声はちゃんと届いていて、本当に支えられたし今も支えられています」

SMAPとして過ごした時間は、僕の宝物

──SMAPは国民的スターとなり、今なおそれぞれに幅広く活躍しています。彼らの姿に影響を受けることは?

「戦い続ける姿に刺激を受けるし、みんなが第一線で活躍しているからこそ、僕もトップクラスにいたいと思う。負けたくないという気持ちがありますね」

──SMAPは、やはり特別な存在ですか?

「もちろん。中学生で右も左も分からない時に、6人で一緒に過ごし、たくさん怒られもしたし、楽しいこともいっぱいしてきました。あの時にしか経験できないことであり、あの8年間がなかったら僕のメンタルはこんなに強くなっていないと思う。だから、SMAPとして過ごした時間は、僕の宝物。5人がいなかったら、僕の今はない。迷惑をかけてしまったのもあるし、感謝しかありません」

──オートレーサーとして、そして森且行として、これからの目標を教えてください。

「日本一になってすぐに怪我をしたため、まだ、いい景色を十分に見られていない。だから、いい景色をじっくり見るために、再び日本一になりたいですね。今、厳しい状況ですが、諦めず、まずは優勝戦の舞台に立つ。そうしたら、また違う景色が見えてくるんじゃないかな、と。森且行としては……やっぱりオートレーサーとして僕にしかできないことをしていきたい。公営競技を盛り上げることが使命だと思っているので、楽しさをもっと伝えていきたいですね」

インタビュー後記

インタビューに先立ち本編を鑑賞し、「こんなにも森且行を魅了し続けるオートレースを見てみたい」と思い、週末の川口オートレース場へ。オッズをチェックして車券を買い、スタートを待つ。レーサーたちが走り出した瞬間には、周りの喧騒が聞こえなくなるほど集中して、気持ちが昂っていました。地面スレスレの体勢で猛スピードで走り、危険を冒しながらの駆け引きに圧倒され、気づけば歓声をあげていたほど。初心者の私には居づらい場所ではないかという予想に反し、心から楽しめました。非日常を味わえるオートレース、この映画をみて感じるものがあったら、ぜひ女性も、ファミリーでも、気軽に行ってみてほしいです。

『オートレーサー森且行 約束のオーバル 劇場版』

出演/森且行
ナレーション/萩原聖人
監督・編集/穂坂友紀
製作/TBS
企画・制作/TBSテレビ報道局 報道コンテンツ戦略室
制作プロダクション/TBSスパークル
配給/KADOKAWA
公開日/11月29日(金)新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町ほか全国公開
URL/https://autoracer-mori.com
X/https://x.com/autoracer_mori
©TBS

Photos : Minoru Kaburagi Styling : Masaru Kato Hair & Makeup : enatsu Text : Hiromi Narasaki Edit : Naho Sasaki

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