キム・ダミ インタビュー「自由に生きるとは、自分らしさを発揮すること」 | Numero TOKYO
Interview / Post

キム・ダミ インタビュー「自由に生きるとは、自分らしさを発揮すること」

オーディションで見事主役の座を射止めた映画『The Witch/魔女』では新人ながら高い演技力で話題をさらったキム・ダミ。続く大ヒットドラマ「梨泰院クラス」ではパク・ソジュンと共演、ヒロインの天才少女役でブレイクし、第56回百想芸術大賞でTV部門女性新人演技賞を受賞。早くも若手実力派と呼び声高いキム・ダミの最新主演作『ソウルメイト』が2024年2月23日より公開される。

世界各国の映画賞・映画祭を席巻し多くの映画ファンを魅了したデレク・ツァン監督の『ソウルメイト/七⽉と安⽣』を韓国・済州島を舞台にリメイクし、新たな感動作が誕生。

キム・ダミ演じるミソは、自由奔放に明るく振る舞いながらも、複雑な家庭環境で育ち、心の奥には孤独と悲しみを抱えている繊細なキャラクター。一方、ハウン(チョン・ソニ)は、両親から愛されて育つも、自分の意思のままには生きられず、敷かれたレールを堅実に歩むタイプ。性格も価値観も境遇も真逆の二人だが、お互いを必要とする親友だった。しかし、ずっと続くと思っていた友情が、ジヌ(ピョン・ウソク)との出会いによって大きく揺れ動く。

突然の別れ、環境の変化、知らなかった側面を目の当たりにし戸惑い衝突し、次第にすれ違ってしまう二人。親友だからこそ、大切だからこそ見せられない弱さや言葉にできない心の内、嫉妬、憎しみ、憧れ、愛おしさ、恋しさ…様々な感情が入り混じる。そして、16年の歳月が流れたある日、ハウンが突然姿を消してしまった。ハウンの書き残したブログ、ミソの肖像画。シングルマザーとなったミソ。いったい二人の間に何があったのか、待ち受けていた運命とは。誰も知らない二人だけの約束と秘密が明らかになっていく。

自由に生きながらも安定を求めたミソと、堅実な生き方の裏では自由に憧れたハウン。等身大のヒロインを通じて思う、キム・ダミにとって自由に生きるとは何か尋ねた。

キム・ダミ インタビュー

©UAA
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──幼い頃から俳優になることを夢見ていたのでしょうか。

「そうですね、子どもの頃から俳優になるのが夢でした。これといったきっかけは特にないのですが、昔からよくテレビを観ていたからでしょうか。ドラマの登場人物の人生が面白く感じ、自然と演じることに興味を持ったと思います」

──ミソは表情豊かで大胆不敵な一方、どこか影のある繊細な感情も見え隠れする複雑なキャラクターでした。演じる上で意識したことや苦労したこと、共感した部分を教えてください。

「ミソは自由に生きながらも、心の奥底では誰よりも安定した生活を望んでいる人物だと思いました。幼い頃は、自分の痛みや苦しみを自由奔放に振る舞うことで紛らわしていましたが、いろいろな経験を経て大人になるにつれ、自身の本質的な望みに気づきます。演じる上で一番気をつけたのは、ミソの感情や痛みをどれだけ表現するかということでした。感情を表に出すべきか、それとも内に秘めるべきか、いろいろと悩みました。苦労したことは特にありません。感情を表現するシーンが多いながらも、撮影の時は、とても楽しく、いい思い出がたくさんあります」

──すれ違いの中で変化していくミソとハウンの関係性がとてもリアルでした。表現する上でご自身の実体験が生かされていたりするのでしょうか。

「ミソのような経験はありませんが、幼い頃と大人になってからの友情は少し違うと思うんです。幼い頃は友達が一番でも、大人になるにつれ、仕事や様々な経験によって生活環境が変わりますよね。みんな自然とそれを受け止めながら、過ごしていく。私もそんな感情を抱いたことがあったので、その点ではミソに共感できましたね」

──強がったり、弱音を吐いたり、誰にでも強さと弱さがあると思いますが、キム・ダミさんからみたミソの強さ、弱さとは?

「ミソは家族の愛情をあまり感じたことがないと思うんです。だから心の奥底では安定した愛情を求めていた。そしてそういう部分がミソの心を弱くしてしまったのかもしれません。でもミソは、たとえ時間がかかろうとも困難を乗り越えられると思うし、自立して生きていけるタイプだと思います。もちろん、ハウンがそばにいてくれたらベストですけど」

──ミソとハウン、自分の性格はどちらに近いと思いますか。それは具体的にはどんなところでしょうか。

「私はミソとハウンが本当は一人の人間なのかもしれない、なんて思ってしまいました。だから私もどちらか一方に似ているというよりは、二人とも私自身なのかもしれないと感じたんです。一方は自由を求めつつも安定を望み、もう一方は安定を求めつつも自由を望む、といった二人の姿ですね」

──ミソとハウンは好きな絵を描きながら世界を旅する、自由に生きることを求めていました。キム・ダミさんにとっての自由とは、自由な生き方とは?

「自由に生きるということは、文字通り何かに縛られることなく、思いのままに生きることだと思うのですが、一方では自分らしさを発揮することも一つの自由だと感じます。毎日いろいろなことがある中で、自分の思いどおりにならない場面もありますよね。でも、そんな時に自分がどういう選択をし、どんな自分でいたいかを選べることも自由だと考えています。自由というのは身近な言葉ではありつつも、実は一番難しいことかもしれませんね」

──では、幸せや喜びを感じる瞬間は?

「私は好きな人と美味しいものを食べているときに喜びを感じます。些細なことではありますが、私にとってはそれが何よりの幸せですね」

──ご自身を客観的に分析すると、本当の自分や自分らしさはどんなところだと思いますか?

「自分らしさって、まだよくわかりません。私はただ、常にその時の自分を受け入れながら生きてきたような気がします。好きなこと、やりたいことをその時々で選択してきた結果が、今の自分を作ったのではないでしょうか。昨日の自分と今日の自分が違うように、これからも私は変わっていくと思います。定義づけるのは難しいですね」

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──あのときの選択があるから今があるというような、ターニングポイントがあったら教えてください。

「私は大学4年生になるまで演技に対する自信がなく、オーディションにも尻込みしていましたが、ある時、ふと「とりあえず受けるだけ受けてみよう」という考えになったのです。じっとしていても始まらないと思い、その日を境にオーディションを受け始め、『The Witch/魔女』という作品に出会いました。それが私のターニングポイントだったと思います」

──話は変わりますが、映画鑑賞が趣味とのことですが、これまで見た映画で心に沁みた、自分に影響を与えた作品はありますか?

「『ハリー・ポッター』シリーズが好きです。子どもの頃、その映画を観ながら、空想を膨らませたり、夢見ていたことを思い出します。成人してから改めて見返してみたら、当時の感情がよみがえりました。だからやっぱり好きですね」

『ソウルメイト』

ミソとハウンは小学生からの大親友。絵を描くのが好きな2人は、性格も価値観も育ってきた環境も違うが、大切な存在だった。しかし、ジヌとの出会いが2人の運命を大きく変えていく。想い合いながらもすれ違い、疎遠になっていた16年目のある日、ハウンはミソに“ある秘密”を残して忽然と姿を消してしまう…。

監督/ミン・ヨングン
出演/キム・ダミ、チョン・ソニ、ピョン・ウソク
© 2023 CLIMAX STUDIO, INC & STUDIO&NEW. ALL RIGHTS RESERVED.
2024年2月23日(金・祝)より全国公開
https://klockworx-asia.com/soulmatejp/

Interview & Text:Masumi Sasaki Edit:Chiho Inoue

Profile

キム・ダミKim Da-Mi 1995年4月9日生まれ。2017年に『マリオネット 私が殺された日』で映画デビュー。翌年、『The Witch/魔女』(18)で主演。殺人兵器へと覚醒する女子高生という難しい役どころを堂々と演じきり、第55回大鐘賞映画祭や第39回青龍映画賞をはじめとした国内外の映画祭で新人賞を席巻、“怪物新人”とも称された。2020年には、Netflixドラマシリーズ「梨泰院クラス」でヒロインを演じ、第56回百想芸術大賞 TV部門女性新人演技賞を受賞。さらに、チェ・ウシクと再び共演したラブロマンス「その年、私たちは」(21)、出世作の続編『The Witch/魔女 -増殖-』(22)にも姿を消した魔女として出演。 Photo:UAA

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