SUMIREインタビュー「絵を描くことが、自分自身を一番楽しく表現できる方法」 | Numero TOKYO
Interview / Post

SUMIREインタビュー「絵を描くことが、自分自身を一番楽しく表現できる方法」

渋谷PARCOの50周年を祝して、モデルや俳優、最近ではアーティストとしても活動するSUMIREがdiscord Yohji Yamamoto、Ground Yとのコラボアイテムをリリース。コラボレーションを記念して、店頭で一夜限りのライブペインティングを行った(完成作は12月6日(水)まで展示中)。Numero.jpでは、描き終えたSUMIREにインタビューを敢行! その自然体でアーティスティックな感性のルーツに迫る。

「波に乗っているような気分で描いていました」

──今回のコラボレーションのきっかけは何でしたか。

「インスタグラムに絵の作品だけをのせているアカウント(@sueart__/)があり、それをdiscord Yohji Yamamotoさんが見てくださっていてお声がけいただきました。10年前に画家の方と一緒にライブペインティングに挑戦したことはあったのですが、このような大規模なものは初めてでした」

──元気をもらえるような、ヴィヴィッドな色使いが印象的です。今回描いたペインティングは、どんなテーマで製作されたのでしょうか。

「絵は感覚的に描いていて抽象的なものが多いのですが、使いたい色や混ぜたら明るい印象になりそうな色、面白くなりそうな色やモチーフを連鎖的に考えて描き進めていきます。描き続けていると、抽象的だったものが具体的に見えてくる。自分の作品もこの手法で描くこともありますし、キャンバスに下書きをして描く場合もあります」

──絵の具を直接、壁に出したり、大きく身体を動かして曲線を描いたり。オーディエンスから「描いていて気持ちよさそう」という声が上がっていました。ライブペインティング中はどんな気持ちでしたか。

「パネルの面積が大きかったので、筆だけではなくローラーを使い、たくさん絵の具を使って色を重ねていきました。自分が波に乗っているような気分で描いていました。集中していてあまり周囲の音が耳に届いていなかったのですが、気持ちよく描いていたので、お客様に共感してもらえたのは嬉しいです。ライブとしては正解だったというか」

──色をパレットで混ぜて作らずに、チューブから直接絵の具を出してパネル上で混ぜていましたね。

「色を先に混ぜちゃうと、その色しか出せないじゃないですか。色を混ぜる現場というか、お互いの色が邪魔せずにキャンバス上で混ざっていくのを見るのが好きで、その変化を見たいなあと」

──細かく描き足していった、生物のようなモチーフは?

「色がたくさん重なっている部分は、ハッピーなウェーブ。discord Yohji YamamotoさんやGround Yさん、見てくれたお客さんにいい運が来るといいなと願いながら描きました。上部の目があるモチーフは、普段から自分がよく描くモチーフ。キャラクター的なもので、頭にハートが載っていたり、銀色の円形で月みたいだったり、足が生えて空を舞っていたり。見ていて愛を感じてうれしくなるような大好きなモチーフです。名前がないのですが、丸みを帯びた柔らかい形の生き物を見てくれた人の心が安らいだり、優しい気持ちになったりしたらいいなと。この絵が守護神みたいな存在になったら本望です」

──途中、植物のようなモチーフも登場し、Ground Yのブランドロゴに落書きのような顔を描き込んでいったのにはユーモアを感じました。

「普段から花や植物を描くのも大好きで、花を描きたいなと思い、波から生やしてみました。顔は、いつも自分のサインに描いているんです。明るい気持ちにしてくれるニコちゃんモチーフが好きなので。つい自然に『かわいい』って言ってしまいますよね。その子たちにせっかくなのでおしゃれをさせてみたっていう(笑)」

──今回のコラボレーションで挑戦したことは?

「Tシャツ用に文字のフォントを描きました。あまりそういった機会がないので、もともと存在する文字をベースに自分の色をどう表現するのかが、一番のチャンレンジでした。文字の形からイメージを膨らませて、モチーフを考えていきました。例えばアルファベットのOを苺や火にしたり」

SUMIRE自身も好きだという動物や花、自然をモチーフに描かれた2種類の「Ground Y」ロゴをプリントしたTシャツ。50周年を迎える渋谷PARCOを祝し、渋谷PARCO店で限定展開。Tシャツ2型 各¥15,400/Groud Y

2種類の「Ground Y」から、「Y」の部分を抜き取り印象的にプリントしたTシャツ。 2型2色 各¥15,400/Groud Y

──心臓に見立てたり、黄色の世界を表現したりなど、discord Yohji Yamamotoのアイテムに絵付けをした感想は?

「めちゃくちゃ楽しかったです。ファッションは大好きで、ずっとやりたかったことの一つだったので、自分の絵とコラボレーションさせられたのはうれしかったですね。一方で、革などキャンバスではない素材に描く難しさも知りました。中でも黒いバッグに白い絵の具で描いた作品が一番気に入っています。普段ノートを持ち歩いていて、落書きや絵の仕事の下書きをしたりしています。その落書き帳に描く感覚で、心の赴くまま描いていきました」

SUMIREがペインティングを施したピエス・ユニック(一点物)のバッグはすべて渋谷PARCO限定コレクション (左から)バッグ¥132,000 ¥275,000/ともにdiscord Yohji Yamamoto SUMIRE PIECE UNIQUE

(左から) バッグ¥297,000 バッグ¥308,000/ともにdiscord Yohji Yamamoto SUMIRE PIECE UNIQUE

(左から) キーチャーム カードケース¥88,000 カードケース¥77,000/ともにdiscord Yohji Yamamoto SUMIRE PIECE UNIQUE

──自身を投影した、スミレの花と顔のウォレットも素敵でした。

「スミレの花のイメージと、いろんな目を描きました。まるで着せ替えのようにいろんな自分がいるということを表現しました」

(左から) ポーチ¥121,000 ウォレット¥57,200/ともにdiscord Yohji Yamamoto SUMIRE Collection

自分自身を表現する“色”

──制作活動のインスピレーション源は何でしょうか。

「好きな絵の展示や写真展に行くこと。最近はモネの展覧会に行きました。いうまでもなく色使いや筆の運びが素晴らしくて。と同時に販売しているグッズも見ちゃうんですよね。アイデアや驚きがあって刺激になるので。あとはスマートフォンで画像検索したり、写真集を購入したり。作品を見たり調べていくことで深めていくのは楽しいです。好きなアーティストは特にいないのですが、ダミアン・ハーストは好きです。新国立美術館で桜の絵を見たとき、細かいタッチが良くて。自分もこういう絵を描いてみたいと思いました」

──絵はいつから描き始めましたか。絵を好きになった原体験があれば聞かせてください。

「小さいころから絵を描いているのですが、20歳くらいから展示に参加するようになりました。絵が好きな家族なので、よくお題を決めて絵しりとりをしたり、アンパンマンをそれぞれが描いて見せあったり。そこから派生していったのかもしれません。塗り絵も好きでした。自分自身を表現するのに、一番楽しくいられる方法だったんだと思います」

──モデル業や俳優業における表現と、絵の制作活動における表現や自身の向き合い方の違い、または共通点はどんなところでしょう。

「落ち込んでいるときは絵で使う色が暗くなるんです。無理に明るい色を使おうとしても、無理している感じが出てしまう。絵に使う色で自分自身の気持ちを理解することがよくあるんです。役者業ではキャラクターを想像するのに、色を思い浮かべることがあります。色で人物や感情のイメージを捉えているので、少し絵を描くことと共通しているかもしれませんね。違う職業同士だけど、それぞれが補いあっている感じはあると思います」

──SUMIREさんの表現において、色がとても大事なのですね。

「色に感情が左右されるから。明るい黄色いニットを着て1日を過ごすと、ずっと明るい気持ちでいれたりする。色の効果ってすごい。偉大だなあと常日頃から思っています。自分だけではなく、少しでも色の魅力を広めていけたら。作品を通してみなさんに伝えたいと考えています」

──いま、好きな色は?

「今日も一番最初に手に取ったヴィヴィッドなピンク。ついつい多く使いがちなんですが(笑)。色の名前からして好きですね。ヴィヴィッドカラーは大好きです。最近、家の中もカラフルになりがちで」

──今後、描いてみたいものや挑戦したいことを聞かせてください。

「普段描いているのは動植物やかわいいモチーフなので、それとは真逆な世界、ダークさもありつつの絵を描いてみたいです。人物はあまり描いていないので、人の模写もしてみたいですね。あと、やはりファッションが大好きなので、みなさんに着てもらえるようなアイテムに描きたいという気持ちはずっとあるんです」

(SUMIRE着用アイテム)Styling by SUMIRE Ground YxSUMIRE T-shirts ¥15,400、ハイネックセーター ¥29,700、サスペンダーサルエルパンツ ¥60,500、ブーツ/Y’s x Dr. Martens 14EYE ¥66,000

Ground Y × SUMIRE COLLECTION
発売日/2023年11月17日(金)
取り扱い店舗/Ground Y SHIBUYA PARCO
住所/東京都渋谷区宇田川町15-1 2F
Tel/03-6427-8984
yohjiyamamoto.co.jp/groundy/

discord Yohji Yamamoto SUMIRE COLLECTION
発売日/2023年11月17日(金)
discord Yohji Yamamoto 渋谷PARCO店限定展開
yohjiyamamoto.co.jp/discord/

Photos:Takao Iwasawa Interview & Text:Aika Kawada Edit:Chiho Inoue

Profile

SUMIREすみれ 1995年東京生まれ。俳優、ファッションモデル、アーティスト。2014年から23年の間『装苑』専属モデルを務める。18年に映画「サラバ静寂」で俳優デビュー。「ボクたちはみんな大人になれなかった」(2021)のキーパーソン・スー役、主演を務めたドラマ「階段下のゴッホ」(2022)などに出演。23年9月、初個展「たまごがゆめをみていた」(Roll)を開催し⻑年描く絵画作品や、映像作品を発表。

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