山田孝之、南沙良インタビュー「恋愛映画を撮るなら、巨大化したヒロインと地球外生物で」 | Numero TOKYO
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山田孝之、南沙良インタビュー「恋愛映画を撮るなら、巨大化したヒロインと地球外生物で」

新しい未来のテレビ「ABEMA」と、短編映画制作プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS」が初めてタッグを組んだ「ABEMA・MIRRORLIAR FILMS オリジナル短編映画」から、南沙良主演の『恋と知った日』が配信された。南演じる渚とマッチングアプリで出会った啓太郎(板垣瑞生)との出会いから別れまでを描いた「Z世代が語りたくなるラブストーリー」。本作にちなんで、主演の南沙良と、プロデューサーであり本作に出演している山田孝之が、「恋愛映画」をテーマに対談。二人がたどり着いた意外な答えとは?

映画には時代のトレンドを残すという役割もある

──今回のプロジェクトは、井樫彩監督への「オリジナルで恋愛映画を」というオファーから始まったそうですが、「MIRRORLIAR FILMS」シリーズでは直球の恋愛ものは珍しいですよね。

山田「恋愛映画は数本あるけれど、直球の恋愛映画は少ないかもしれませんね。どの作品も監督の個性が爆発していますから。僕の作品も、試写でスタッフが無言になることがあるんです。『山田さん、これで何を伝えたいんですか』と聞かれたこともありました。今作は『ミラーライアーフィルムズ・フェスティバル』も控えていたので、そんな個性的な作品群にストレートな恋愛映画があったらいいんじゃないかと。井樫監督ご自身も若いですし、20代の方々が共感できるような作品になったのではないかと思います」

──南さんが演じる吉乃渚は大学生2年生という設定で、実年齢にも近いですよね。

「そうですね。いま人との出会い方もいろいろと変わってきている中で、私たち世代のリアルな恋愛が描かれているという気がしました」

──渚に共感するところはありましたか?

「啓太郎との関係が始まったときに二人の終わりが透けて見えてしまうようなところや、私もよく考え込んでしまうタイプなので、そこは渚に共感しました。でも、共感というか、私自身が恋愛に対して初心者なので、こういうことがあるんだなと勉強させてもらったという感覚です」

──二人の出会いはマッチングアプリというところが現代的ですよね。

山田「時代のトレンドを映像で残していくことは、映画にとって大切な役割です。今回は若い世代の物語ですが、年齢の高い世代も、今の若者はこういう感覚で出会い、こんな恋愛をしているんだと知ることができますよね。僕が20代の頃はマッチングアプリはなかったので、側から見ていて楽しそうだと思いますね。条件で出会う人を絞っていくのは、ある意味では合理的かもしれない。全部本当のことを書くかわからないですけどね。

それこそ僕らのプロジェクト『MIRRORLIAR FILMS』は、俳優と監督、スタッフがもっとつながれる場があればいいねということで始まったので、僕らもマッチングですよ。でも、考えてみれば、昔からあるお見合いだって、条件に見合った人と結婚を前提に会うわけだから、マッチングアプリと同じですよね。形式が変わっただけなのかもしれない」

恋愛映画におけるサウンドトラックの重要性

──今作にちなんで「恋愛映画」をテーマにお話を伺いたいと思うのですが、俳優、プロデューサーとして「恋愛映画」の面白さとは?

「まだ恋愛映画への出演は多くないので、今回もただ楽しかったです」

山田「そもそも、俳優はジャンルで仕事を選ぶことがないですよね。時代設定が原始時代でも未来であろうと、どんなストーリーもひとりの人としてそのキャラクターを理解して、役と自分が一体となって演じるという点では同じことです」

──作品のバランスを考えるのはマネジメント側の仕事なんですね。

山田「そういうケースもあるかもしれません。今あらためて考えてみると、恋愛映画は疲れますね。演じるということは、表面的ではなく内面から作られるものだから、別れの場面は自分もつらいし、ショックを受けるんです。僕が20代前半の頃は恋愛映画がブームだったので、恋愛ドラマや映画にもたくさん出演しましたが、振り返ってみると自分でも頑張っていたなと思います」

──ちなみに観客や読者側として、記憶に残っている恋愛映画、小説、マンガは?

「小説では、西加奈子さんの『白いしるし』という作品がとても好きです。映画は『セレステ∞ジェシー』っていう映画で、別れを迎える二人の物語なんですけど、サントラもとてもいいんです。リリー・アレンの曲(『Littlest Things』)がとても素敵で」

──『恋と知った日』の主題歌、illiomoteの「ヤケド」もすごく良いですよね。恋愛映画ではサントラも重要かもしれませんね。

山田「それで言うと『アクロス・ザ・ユニバース』というミュージカル映画もおすすめです。実は僕、もともとミュージカル映画が苦手だったんですけど、それを知った友人に勧められて観たら、この作品でミュージカルの素晴らしさに気が付きました。その後、自分も出演するほどミュージカルにハマったきっかけの作品です。この作品で使用されている曲はビートルズの作品をアレンジしたもので、曲自体も素晴らしいし、みんな知ってるから入りやすいんですよ。キャラクターの役名も、ジュードやプルーデンスなど、ビートルズの曲から取ってるんですね。時代設定が1960年代なんですが、明らかにジミ・ヘンドリックスらしき人がいたり、ジャニス・ジョプリン風の人がいたり。Blu-rayもこれまでに5枚は買っています。配信されていないので、人に勧めるために見つけたら買っちゃうんです」

ゲーム配信の魅力と、2次元への恋

──恋愛映画はよくご覧になりますか。

山田「映画好きの友人に比べると、映画自体、見ている本数は少ないと思います。バラエティ番組のほうが好きで、今はYouTubeでゲーム配信ばかり観てます。最初は他人がゲームしてるのを観て何が楽しいんだと思ってたんですけど、やっぱりうまい人のプレイを見ると面白いんですよ」

──自分でゲームをプレイしなくても楽しいものなんですね。

山田「例えば、ロールプレイングでクリアせずに途中で離れてしまったものも、時間ができたらもう一度挑戦してみようと思うことはありますよね。でも、僕はゲーム中のミッションを全部攻略したいタイプなんで、すごく時間がかかるんですね。だから、攻略サイトを見ながらプレイすることが多いんですが、ゲーム配信を見ると、このゲームは実はこういうストーリーだったんだとわかることがあるんです。もう映画やドラマを見るのと同じ感覚です。僕は映画やドラマを観ると、芝居の細かいところやカメラ割りが気になって、あれこれ考えながら見るので疲れることがあるんです。だから、バラエティやゲーム配信、バンドのライブという違うフィールドでアーティストがアウトプットしたものを自分にインプットして、それを表現者として作品でアウトプットする。そういう循環の仕方が好きです」

──なるほど。しつこく「恋愛映画」に話を戻しますが、今の時代、恋愛の形も多様化しています。2次元やアイドルに恋をするというのもありますし。

山田「南さんは人間以外に恋したことはありますか?」

「ありますあります! 私はアニメが大好きで、『ヒプノシスマイク』のオオサカ・ディビジョンの白膠木簓が大好きなんです」

──「推し」ですか。それとも恋?

「推しでもあるし、とにかく大好きなんです」

山田「わかります。僕も唯一、コミックの『シガテラ』の南雲ゆみさんに関しては、恋をした感覚でした。相手は紙の上の人物なのに、こんなに気持ちが動くことがあるんだって自分でも驚きました」

──MIRRORLIAR FILMSでは、俳優が監督に挑戦した作品も多くありますが、もし南さんが今回の井樫監督のように「オリジナルで恋愛ものを」とオファーされたらどんな恋愛映画を撮ってみたいですか。

「自分で監督するというのは考えたことがなかったですけど、そうですね……」

山田「前提として、南さんは巨大化したいんですよね」

──それは、山田さんが監督として南さんを巨大化させたいんじゃなくて、南さんご本人が巨大化を希望しているということですか。

「そうです。昔から、私自身が巨大化したいと思っていました。映像の中でも、実生活でもそうなんですが」

──実生活……?

山田「巨大化すると恋愛へのハードルが上がるから、面白い物語が描けるかもしれませんね。南さんが監督・主演でぜひ」

「そうですね。巨大化して地球外生物と恋愛をする映画を撮ってみたいと思います」

<山田孝之>ジャケット¥58,300 シャツ¥26,400 パンツ¥46,200/すべてVivienne Westwood(ヴィヴィアン・ウエストウッド インフォメーション contact@viviennewestwood-tokyo.net) シューズ¥40,700/grounds(グラウンズ https://grounds-fw.jp
<南沙良>ジャンプスーツ ¥96,800 ニット ¥46,200/ともにFETICO(ザ・ウォール ショールーム 03-5774-4001) ブーツ ¥60,500(参考価格)/GANNI(ガニー customerservice@ganni.com) リング¥14,080/KNOWHOW(ノウハウ ジュエリー 03-6892-0178)

ABEMA・MIRRORLIAR FILMSオリジナル短編映画
『恋と知った日』

大学2年生で恋人のいない吉乃渚は「たくさん人が住んでいる街で、このまま自分だけひとりぼっちなのではないか」と不安な気持ちを抱え、マッチングアプリで手当たり次第に相手を探すもなかなか出会えず、恋を諦めかけていた。そしてマッチングアプリはこれで最後にしようと決めた日に、同い年の大学生、長谷川啓太郎に出会う。一緒にいると心地良く、まるで運命の人のようで、気がつくと自分の生活に彼が溶け込み一緒に暮らすようになる。相性の良い啓太郎と過ごす毎日を宝物のように感じている渚。でも、始まりがあれば終わりがある――突然やってきた悲しい現実の先に、浮かび上がってくる“別れ”という選択。はたして、渚が出した答えとは?

監督・原案/井樫彩
出演/南沙良、板垣瑞生、毎熊克哉/山田孝之
主題歌/illiomote「ヤケド」
配信先/ABEMA 独占配信中
https://abema.tv/video/episode/635-1_s1_p1

Photos:Ayako Masunaga Styling:Kurumi at ROOSTER(Takayuki Yamada), Yoshie Dohken(Sara Minami) Hair & Makeup:Mitsuhiro Minamitsuji at complice(Takayuki Yamada), Shiho Sakamoto(Sara Minami) Interview & Text:Miho Matsuda Edit:Sayaka Ito

Profile

山田 孝之Takayuki Yamada 1983年、沖縄県生まれ、鹿児島県出身。1999年俳優デビュー。2004年TBSドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』で主演を務め、第42回ザテレビジョンドラマアカデミー賞で主演男優賞を受賞。2005年に映画『電車男』で主演を務める。また、映画『デイアンドナイト』ではプロデュース、ドラマ『聖おにいさん』では製作総指揮を務めるほか活動は多岐にわたる。主な出演作に『クローズZERO』シリーズ、『凶悪』『闇金ウシジマくん』シリーズ、『映画 山田孝之3D』『50回目のファーストキス』『ハード・コア』『ステップ』『新解釈・三國志』『はるヲうるひと』『全裸監督』シリーズなど多数。2020年、伊藤主税、阿部進之介らとともに、自由で新しい映画製作に挑戦してきた短編映画制作プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS」を発足。
南沙良Sara Minami 女優、モデル。2002年6月11日生まれ、東京都出身。映画『幼な子われらに生まれ』(2017年公開)で女優デビュー。初主演映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(2018年公開)で、報知映画賞、ブルーリボン賞他、数々の映画賞を受賞し、その演技力が高く評価される。その他、映画『居眠り磐音』『もみの家』、ドラマ『うつ病九段』、『六畳間のピアノマン』(NHK)、映画『太陽は動かない』、Netflix映画『彼女』、日曜劇場『ドラゴン桜』、朝ドラマ『サヨウナラのその前に』など、出演作多数。2022年は映画『女子高生に殺されたい』、山田孝之が監督を務め、南が主演を務める映画『沙良ちゃんの休日』、主演映画『この子は邪悪』、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)に出演。2023年1月クールのフジテレビ月9ドラマ『女神の教室~リーガル青春白書~』にレギュラー出演。また主演を務めるNetflixシリーズ『君に届け』がNetflixで全世界独占配信中。

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