ビーバドゥービーにインタビュー。The 1975のマシュー・ヒーリーによる恋愛アドバイスとは
旬な俳優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.88はビーバドゥービー(beabadoobee)にインタビュー。
90年代オルタナティブロックの香り色濃いファーストアルバム『フェイク・イット・フラワーズ』で一躍Z世代を代表するシンガーソングライターとなったビーバドゥービー。多彩で繊細なサウンドに進化をし、過去も含めて自分自身を肯定的にとらえた『ビートピア』を携えて世界中を周るなか、サマーソニック出演のために初来日。自由で風通しの良いオルタナサウンドとキュートな笑顔でたくさんのオーディエンスを魅了したビーバドゥービーに、ライフスタイル、日本でのオフの過ごし方、今のモード、レーベルメイトでもあるThe 1975のマシュー・ヒーリーからのアドバイスの話まで、さまざまなことを聞いた。
体に合うものを着るのが一番大事
──昨日は渋谷に遊びに行かれたそうですが、どんな風に過ごしたんですか?
「ブラブラ歩いたり、おいしいラーメンを食べたりした。東京の人はみんなスタイリッシュでクール。世界で一番お洒落だと思った。それに比べて『私ってダサいな』って思っちゃった(笑)」
──(笑)。いやいや、全くそんなことないと思いますが。
「(日本語で)ありがとう!(笑)」
──3カ月前にリモートで行わせてもらったインタビューでは「いろんな日本の文化を経験したい。買い物にも行きたいし、カラオケにも行きたい」とおっしゃっていました。それらは体験できそうですか?
「今回は時間があまりなくて。でも今日の夜はカラオケとショッピングに行く予定。古着を買いに行きたくて、友達のチャーリーにお勧めしてもらったお店に行こうと思ってる」
──以前はアースカラーがブームだとおっしゃっていましたが、今はいかがですか?
「(黒のバッグを見せながら)今は見ての通り、黒にはまってる。黒って絶対失敗しないしね(笑)。体に合うものを着ることが一番大事だと思う。例えば、ランウェイのモデルを見るとみんな細くて、彼女たちとが着ると綺麗に見える服でも自分が着ると全然似合わなかったりするよね。それぞれ体型は違うわけだから、自分が心地よさを感じられて、自信が持てるものを着るようにしてる。もちろんそういう風に思えるようになるまでには、いろんな試行錯誤があった。『フェイク・イット・フラワーズ』の時はロックな女の子って感じのスタイルだったし。それを経て、今のシンプルで快適なスタイルにたどり着いたの」
──セカンドアルバム『ビートピア』の楽曲をライブで演奏する中で、アルバムへの想いには何か変化はありますか?
「そんなに変わってないかな。これからも多分変わらないと思う。これまでの作品は時間が経つと少し距離を感じて外から見てる感じがしてたんだけど、『ビートピア』はこれからもずっと自分に近い作品だと思うんだよね」
──それは『ビートピア』が過去を良い経験として受け止めた上で、今の自分と向き合えたアルバムだから?
「そうだと思う。『ビートピア』は自分自身を発見できたアルバム。そこで発見できた自分は今の自分とほぼ変わらない。『フェイク・イット・フラワーズ』は誰かに向けて演奏するための曲が集まってたけど、『ビートピア』は自分自身のために歌える曲が詰まってると思ってる」
The 1975のマシューは“仲のいいお兄ちゃん”
──『ビートピア』にはThe 1975のマシュー・ヒーリーとの共作曲も3曲収録されていますが、彼はどんな存在ですか?
「すごく仲のいいお兄ちゃんって感じ。その都度、的確なアドバイスをくれるところが好き。私がアメリカツアーからロンドンに帰った時に色々と考えちゃってたことがあったんだけど、『大丈夫?』と気遣ってアドバイスをくれたこともあった。あと、アーティストとしてすごく才能があって、いい曲を書く力を持っている人。一緒に作業をしていてすごく心地が良いし、自然にいいものができあがるんだよね」
──一番印象に残っているアドバイスは?
「『誰かに恋をしたり愛するっていうことはガーデニングのようなものなんだよ』って言われたことかな。関係を維持するためには水をやったり肥料を与えたり、色々なことをやらなきゃいけない。『若い時はいろんなことで忙しくて時間がないし、既に綺麗に見えてるものがただ欲しくなってしまうけど、愛や恋は育てるものなんだよ』ってマシューに言われたことで、恋愛に対する考え方が変わったの」
“気にしちゃってるだけ”とマインドを切り替える
──ご自身の気持ちを楽曲にすることはセラピーのようなものだとおっしゃっていますが、その楽曲がたくさんのオーディエンスに共有される体験はどういうものなんでしょう?
「曲を通して私とつながってくれてるって思うと、『みんな同じような経験をしてるんだな』って思って孤独感が薄れる。それはリスナーのみんなにとっても同じだと思うんだよね。私は22歳の普通の女の子なので、その自分が経験していることをみんなでシェアして、『一人じゃない』って思えるのはすごくいい経験だと思う」
──7歳の頃からセラピーに通われているそうですが、自分なりのメンタルケアについてどんなことを考えていますか?
「メンタルには浮き沈みはあるんだけど、最近は忙しくてセラピーに行く時間が取れなくて。でも、自分の気持ちを人に話すことってすごく大切だと思うんだよね。ひとりで抱え込まずに気持ちをオープンにすることで学ぶことがあるし、『自分は普通なんだ』ってことも知れて、それによって成長できる。過去のことを話すことで、今の自分とリンクする部分を感じられて、過去と今の繋がりを理解することもできる。それによって乗り越えられることはたくさんあるから、またセラピーには通おうと思ってるかな」
──これがないと生きていけないと思うものは?
(バッグから“ALOE VERA 99% SOOTHING GEL Lipstick”と書かれたリップバームを取り出して)「このリップバーム。一見グリーンに見えるけど、肌に塗るとピンクに発色するんだよね(実際手に塗って見せてくれる)。これを付けると、口がプルプルにしっとりするから手放せないの。唇には口紅は使わずにこれだけ。あと、二週間おきにまつエクをやっているから、起きたら目がパッチリ(笑)。気分によってはアイシャドウを塗ったりもするけど、ほぼリップとまつエクだけ。このリップはたまに鼻の頭につけたりもするの(実際にやってくれる)。秘密なんだけどね(笑)」
──(笑)。今一番ハマっているものは?
「黒いものを身に付けること。あと、エイミー・ワインハウスにまたハマってる」
──では最後に、一番大切にしている言葉は?
(ペンを持って紙に文字を書き始める)「“It’s not the worst I’ve looked. It’s just the most you’ve ever cared”。これは ラリ・プナ(Lali Puna)の“It´s Not The Worst I´ve Looked”という曲の歌詞なの(※)。自分自身がダメなんじゃなくて、そう思っちゃう瞬間がダメなんだよっていう意味なんだけど、自分に対して自信が持てないときにこの言葉を思い出すと自信を取り戻せるんだよね。自分がイケてないわけじゃなくて、気にしちゃってるだけなんだってマインドを切り替えることができるんです」
※ラリ・プナはドイツのエレクトロポップバンド。“It´s Not The Worst I´ve Looked”はイギリスのエレクトロデュオ、トゥ・ローン・スウォーズメン(Two Lone Swordsmen)の楽曲”It’s Not The Worst I’ve Looked… Just The Most I’ve Ever Cared”をラリ・プナがリミックスしたもの。
Photos: kisimari at W Interview & Text: Kaori Komatsu Edit: Mariko Kimbara