リナ・サワヤマにインタビュー「生きづらさを感じる女性に届けたいアルバム」 | Numero TOKYO
Interview / Post

リナ・サワヤマにインタビュー「生きづらさを感じる女性に届けたいアルバム」

新潟県出身、ロンドンを拠点に活動する日本人シンガーソングライター、リナ・サワヤマ。デビューアルバム『SAWAYAMA』が多くのメディアに絶賛されてから約2年半。セカンドアルバム『ホールド・ザ・ガール』はキャッチーなメロディとパワフルなメッセージが貫く、より多くの聴き手に変革を促すための飛躍作だ。先日行われたサマーソニックのステージ上では自身がバイセクシュアルであることを表明した上で共闘を呼び掛け、人々の心を動かしたことも記憶に新しい。国籍や性別といったあらゆるボーダーを超越するライジングスターに聞いた。


ドレス ¥441,100 スカート¥265,100 ブーツ¥319,000(参考価格) イヤーカフ¥47,300 リング¥62,700/すべてジバンシィ(ジバンシィ ジャパン0120-218-025) 右耳イヤリング ¥17,600、左耳イヤリング ¥9,900/すべてジュスティーヌ クランケ(THE WALL SHOWROOM 03-5774-4001)
ドレス ¥441,100 スカート¥265,100 ブーツ¥319,000(参考価格) イヤーカフ¥47,300 リング¥62,700/すべてジバンシィ(ジバンシィ ジャパン0120-218-025) 右耳イヤリング ¥17,600、左耳イヤリング ¥9,900/すべてジュスティーヌ クランケ(THE WALL SHOWROOM 03-5774-4001)

音楽は時代を映すもの

──先日のサマーソニックのステージは本当に素晴らしかったです。どういうステージにしようと考えていたんですか。

「日本での初ライブなので、楽しくやりたいとは思っていました。そして、私は海外に住んでいる日本人であるということを皆さんに認識してもらいたいなということと、LGBTQのことをポジティブに話す機会だということを考え、ああいったことをMCでお話したんです。海外のフェスはポリティカルなのが当たり前ですし、音楽は時代を映すものだと思うので、今起きていることをステージ上で話さないのは不自然だと思っています」

──大きな反響があったかと思いますが、それについてはどう感じていますか?

「私が言った『一緒に戦ってください』というメッセージはLGBTQの人に向けたものではなく、それ以外の人たちに向けたものです。みんなでやらないと状況を変えることは難しい。実際に多くの人たちからサポートの声が上がったことは嬉しいし、達成感がありますね」

──セカンドアルバム『ホールド・ザ・ガール』を作る上でまず最初に考えたことは?

「ファーストアルバムの『SAWAYAMA』はたくさんの人に聴いてもられてすごく感謝していますが、同じようなものを作るのはアーティストとしてはつまらないので、新しいチャレンジをしたいと思いました」

──アルバムタイトルは2曲目の「ホールド・ザ・ガール」から取られています。女性をいたわるようなワードを付けたのはどうしてだったんでしょう?

「女性として生きてるだけで大変なことっていっぱいありますよね。私も実際にたくさんそういう経験をしてきました。最近もアメリカでは中絶禁止を容認する動きがあったり。女性が何かしらの生きづらさを感じた場合、悪いのは自分ではなく社会、あるいは文化なんだということを伝えたかったんです。女性の存在や発言を価値のあるものとして認めてこなかったが故に、そういうことが起きてしまっている。女性の体が男性のものになってしまっているような風潮を感じたとしても、決して女性は悪くないという想いがこのタイトルには込められています。特に若い層に向けてそういうことを伝えたいと思っています」

──ご自身でMVのディレクションもされていますが、「ホールド・ザ・ガール」のMVはサワヤマさんがひとり家にこもっているところから外に出て躍動していく、とてもストーリー性のあるものになっています。どんな思いがあったんでしょう?

「『ホールド・ザ・ガール』という曲自体がアルバム全体の軸となる役割を担っています。ロックダウン中に書いた曲で、実際に家の中にとじ込められていて、日々同じことの繰り返しでした。そこで、過去に感じた辛いことやトラウマが重くのしかかってくる中で、それらとしっかり向き合い、前進しようと試みました。私が家を飛び出す描写はその経験を表しています。それで、家から出ると友人たちがいる。誰かに助けを求めることは全く悪いことじゃない。だから、みんなでダンスをしていて。自分が感じていた強い孤独感に対する治療薬のようなMVになっていると思います」

メッセージ性と曲の良さを両立できたセカンド・アルバム

──一方、ファーストシングルの「ディス・ヘル」では、周囲のノイズに惑わされずに自分らしく生きていくということが歌われていて、サワヤマさんの表現の核を感じました。

「そうですね。私はいつもこういう気持ちで音楽活動をやっています。私の言動に対して何かしら意見がある人はいると思いますが、それをシャットアウトしないと新しいものは生み出せないと思うんです。長く聴いてもらえて価値のある楽曲を生み出すためには外の声を聞いていたらダメだと思う。例えば私には保守的なクリスチャンの家庭に育ったことによって、クィアである自分を拒絶されたことがトラウマになった友達がいます。その友達のことを歌詞にしていますが、そうやってシリアスなエピソードをストーリー性を持って描くということをやってきました。『ディス・ヘル』もそうですよね」

──まさに、「ディス・ヘル」で描かれているメッセージはシリアスですが、それをキャッチーなサウンドに乗せることで、多くの人に伝わるポップミュージックになっています。

「やっぱり音楽は曲が良くなければいけないし、メロディが優れてなければいけないと思うんです。今回のアルバムではそれができたので、大きな手応えを感じています。ファーストアルバムはかなり実験的なことをやったので、核となるメッセージがどこかサウンドに埋もれてしまったところがあったかもしれない。でも今回は、メッセージはきちんと打ち出しつつも、曲としての良さを大事にできたと思います」

──来年は長編映画デビュー作となる『ジョン・ウィック:チャプター4』が公開されます。俳優としての活動は、音楽活動にどんなフィードバックをもたらしていますか?

「そもそもは、私がディレクションしたMVでの演技を見たチャド・スタエルスキ監督からオファーをもらって出演が決まったんです。そこから撮影に向けて、自律心を育んだり、アクション映画ということでスタントのトレーニングをすることはかなりハードでした。でも、自分が思っていた以上に私はフィジカル面でタフなんだなと感じましたね。そして、私が役者の活動をやるのは、別にスクリーンに映ってる自分を見て満足したいわけではなく、映像作品を作るプロセスのほうに興味があるからなんだということを改めて感じました」

──ありがとうございます。来年1月には単独来日公演もあるということで楽しみにしています!

「ありがとうございます。ぜひ来てください!」


『ホールド・ザ・ガール』
価格/¥2,750
発売日/2022年9月16日
※日本盤ボーナス・トラック1曲収録。歌詞、対訳、解説付き。
※配信はこちらから。

『ホールド・ザ・ガール』ツアー来日公演概要
2023年1月17日(火)名古屋:ダイアモンドホール
2023年1月18日(水)大阪:Zepp Osaka Bayside
2023年1月20日(金)東京:東京ガーデンシアター
企画・制作・招聘/Live Nation Japan・Creativeman Productions
協力/Universal Music Japan
※チケットの購入はこちらから。

(撮影協力)
東京エディション虎ノ門
住所/〒105-0001 東京都港区虎ノ門4-1-1
URL/www.marriott.co.jp/tyoet

Photos:Takao Iwasawa Hair:Tomi Roppongi Makeup:Haruka Tazaki Stylist:Jordan Kelsey Stylist Assistant:Mao Miyakoshi Interview & Text:Kaori Komatsu Edit:Mariko Kimbara

Profile

リナ・サワヤマRina Sawayama 1990年8月16日、新潟県生まれ。ロンドンを拠点に活動する日本人シンガー・ソングライター。5歳のときに父親の仕事の関係で新潟県からロンドンに移住し、日本人学校に通う。やがてケンブリッジ大学に進学すると政治学、心理学、社会学を学んだ。音楽活動を本格的に始めると、2017年に「Cyber Stockholm Syndrome」や「Alterlife」といったシングルのリリースで音楽シーンで注目を浴び、インディ・アーティストとしてデビューEP『RINA』を発表。20年に年、イギリスを拠点に世界的にインディ・ミュージックシーンを席巻する音楽レーベル、ダーティ・ヒットと契約し、満を持してデビュー・アルバム『SAWAYAMA』をリリース。あらゆる音楽メディアから絶賛された。22年にはサマーソニック2022に出演し、高い音楽性のみならず、音楽の範疇を超えてアイデンティティや平等さを大切にする彼女の姿勢は大きな話題を呼ぶ。 23年には大人気映画シリーズ『ジョン・ウィック』第4作目への出演も決定しており、多方面におけるその飛躍的な活躍ぶりに世界が注目している。

Magazine

JANUARY / FEBRUARY 2025 N°183

2024.11.28 発売

Future Vision

25年未来予報

オンライン書店で購入する