ヴェネチア・ビエンナーレ日本館の代表作家に選ばれた岩崎貴宏とは | Numero TOKYO - Part 2
Interview / Post

ヴェネチア・ビエンナーレ日本館の代表作家に選ばれた岩崎貴宏とは

現在行われている第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展(2017年5月13日〜11月26日)の日本館代表に選ばれた現代美術作家・岩崎貴宏とは?「Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)」2015年10月号に掲載されたインタビューを振り返る。

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「蚊帳」を工事中のネットに見立てた作品にはクレーンが並ぶ。《アウト・オブ・ディスオーダー(蚊帳)》2010年。
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岩崎の名を広めるきっかけとなった、髪の毛より生み出されるごく繊細な作品の新作。無数の小さな鉄塔が規則的に並ぶ。《アウト・オブ・ディスオーダー(地勢レンダリング)》2015年 「美術作家として活動していくなかで、僕が解答を欲していたことの一つに輸送の問題がありました。超売れっ子以外、大きなものは運べないわけで、これを克服しなければ世界には出ていけないと思ったんです。アタッシェケース一つで行くにはと考えたのが『アウト・オブ・ディスオーダー』シリーズ。タオルを畳んで圧縮し、鉄塔だけ別に持っていく。どうコンパクトな作品にするかを、コストや移動手段や人間の暮らしなどの現実的、社会的な問題として考えながら克服していったら密接に社会とリンクできて、そこから新しい表現が生まれた。表現からではなく、作家として続けていく方法を考えていった結果でした。だから現実とのリンクは大切。歯ブラシ作品もそうです」
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世界10カ国で集めた歯ブラシが使われ、ブラシの毛で鉄塔が組み立てられている。これはイギリスのもので、旅先で見た鉄塔がもとに。《アウト・オブ・ディスオーダー(世界の藪々)》2015年 ──確かに輸送しやすい作品です。 「行く先々の国で日用品を見るのが好きで、歯ブラシを集めて作っています。歯ブラシのブラシは藪で、草むらの中に鉄塔が立っている。ブラシの色やサイズ、タイポグラフィなど、いつでも手に入ると思っている日用品が社会を反映しながら日々変化し、時間と空間の情報が複雑に折り重なっている。同じ形に見える電波塔にも違いがあり、歴史がある。それが当時の日用品から立ち上がってくるんです」

文庫本の栞をほどいて……

Photos:Seiji Nomura
Interview & Text:Hiroyuki Yamaguchi
Edit:Sayaka Ito

Profile

岩崎貴宏(Takahiro Iwasaki) 1975年、広島県生まれ。広島を拠点に制作活動を行う。2003年に広島市立大学芸術学研究科博士後期課程修了後、エジンバラ・カレッジ・オブ・アート大学院で学ぶ。リヨン・ビエンナーレやヨコハマトリエンナーレなどの国際美術展や美術館での展示に多数参加。15、16年にはN Yで個展を開催。日産アートアワード2015のファイナリストにも選出された。(協力:URANO)

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