磯村勇斗インタビュー「僕の俳優人生はここからがスタートです」 | Numero TOKYO
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磯村勇斗インタビュー「僕の俳優人生はここからがスタートです」

今年3月に映画『ヤクザと家族 The Family』・劇場版『きのう何食べた?』の2作品で第45回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した俳優・磯村勇斗。7月8日公開の映画『ビリーバーズ』では映画初主演を務める。ニコニコ人生センターという宗教的な団体に所属する主人公のオペレーター役を通して感じた人間の本能と欲望、劇中のキーワードでもある夢の話について聞いた。

──今回初主演のオファーが来た率直なご感想は?

「自身の映画初主演が映画『ビリーバーズ』というのはとても面白いなと思いました。『ビリーバーズ』は一風変わった世界観の作品なので、僕らしいなと感じましたね。僕自身もちょっと自分が変だと思っているので(笑)。

原作である山本直樹さんの漫画を読んで、カルト的な集団の話ではあるのですが人間本来ってこういう姿でなのかもしれないと思いました。余白もあるので、自分で考える力って必要だよねと教えてくださっている気もしましたし、映像化するのにはどうするのかなとワクワクしましたね」

──では、オペレーター役を演じるのも初めはイメージしにくかった?

「そうですね。『ビリーバーズ』は、描き方によってコミカルにもシニカルにも芸術的なものにも、色々な方向性を持った作品になると思ったので、城定秀夫監督がどこを選んでいくのかというのは気になっていました」

──実際にはどんな役作りを? 無人島で生活する人間の極限状態を演じるのは過酷ですよね。

「今までも過酷な現場はあって、その時の心情は体に残っているのものなので、その感覚みたいなものを出していきました。またニコニコ人生センターという宗教的な団体に所属するオペレーター(磯村勇斗)、副議長(北村優衣)、議長(宇野祥平)の3人が僅かな食料で共同生活するお話なので、実際に体重は10キロくらい落としましたね」

──どれくらいの期間でどのように体を変えていったのですか?

「今回は健康的なやり方といいますか、1ヶ月くらいかけて長期的に落としたので体への負担はそんなに掛からなかったです。時間がないと絶食するしかないんですが、今回は毎朝バターコーヒーを飲んで食欲を抑えていく方法で行いました。バターコーヒーを飲むことで、集中力も上がるし、食欲も抑えられました」

──主に議長演じる宇野祥平さんと副議長演じる北村優衣さんとはどんな風に話し合われて作品を作っていきましたか。

「こうしましょうみたいな芝居の話はしなかったです。基本的に仲が良くて3人でずっと話していました。計画なども作らず、みんなその時に生まれてくるものを楽しみにして演じることができました。それができたのもの宇野さんと北村さんのおかげだと思っています。みなさんお芝居が大好きな人たちですから、そこはセッションで。お互いがどんなふうに来るのかを楽しみにしながら芝居を進める現場だったような気がします」

──お二人とも初共演?

「宇野さんとは以前ご一緒したことがありましたが、絡みがなかったので今回ガッツリお芝居をすることができました。宇野さんは本当に議長にしか見えなくて(笑)。それは宇野さんにしか出せないブランドだなと隣で見ていて楽しかったです。目の前にある芝居を全力で楽しむ姿勢を見習って、自分自身何年経ってもチャレンジしていきたいと思いました。
北村さんは当時21歳だったんですが、肝が据わっていてハングリー精神が旺盛で。副議長という役に対してとても戦っていたので、その姿は自分のスタイルと似ていると思いました。彼女も小劇場からスタートしたという経歴が僕と同じなので、昔の自分を見ているようですごく安心感もありましたし、21歳には見えないくらい大人で。素敵でした」

──瞑想や昨晩見た夢の報告、テレパシーの実験、食料探し、過激なシーンなど……。お伺いしたいシーンはたくさんありますが、中でも磯村さんが演じられて印象的だった場面はどこでしょう。

「宇野さんと僕で盛り上がったシーンがありまして、海辺の岩のところで僕が議長を後ろから抑えているところがあるんです。普通に抑えているだけなんですけど僕と宇野さんの中では、このバッグハグして抱きついている感じが、ここでもストーリーが始まりそうだよねと変な盛り上がり方をしていました(笑)」

──そんなストーリーが繰り広げられていたとは(笑)。あのシーンも含め本作を通して、人間の本質や本能を見たような気がします。

「僕もそう思います。人間って欲望には負けるし、むき出しなのが人間の本来の姿なのかなと。野生的というか。今は理性が働いてこうやってお仕事もしていますけど、それは本能を殺しながらやっているわけで、剥き出しでもいいんじゃないかなと思いましたね。それが本来の人間であるっていう解釈をするのであれば、彼らの突き詰めていくやり方も清々しいことだなと思いますし」

──演じてると信仰心が湧いてきそうですよね。

「でも誰しもみんな信仰するということは普段やっていると思うんですよね。宗教に入っている入っていないに関わらず。ものや人、仕事などそういうものに囚われて何かしら信じながらやっているというか、そこは彼らも僕らも同じなんだなと思っています」

──欲望以外にも終盤の争いのシーンが印象的で、今の世の中とリンクしてしまいました。人間は変わらないのかなともこの映画を見て感じました。

「おっしゃる通りだと思います。今の情勢もそうですが、人間はずっと争い事を繰り返してきているわけで、それってどこを切り取っても変わらないというか、同じだなと。原作は20年前に描かれた作品ですが今も変わらない現状で、人間は争い事を起こして、命を失っていく。滑稽だなとも思いますし、この時代に『ビリーバーズ』が合っていて良いタイミングでの公開になっているのかなと思いましたね」

磯村勇斗が見た、世にも不思議な夢の話

──劇中で、昨晩見た夢を報告するシーンがありますが、磯村さん自身が最近見た夢はありますか?

「え〜なんだろう。起きた時は覚えているんですけどね。忘れちゃいますよね。なんか見たんだよな……。でも僕は現場の夢を見ることが多いんですよ。現場にいるときに正夢だったと思うことが多いですね」

──え! どういうことですか?

「予知夢みたいなのを見ることがあるんです。夢は明確に解明されていなので、正夢だと思うことは自分が作り出している虚像や脳が作り出していることなのか、本当に見ていてそれを思い出したのかは分からないんですが。夢に監督がいて自分とあと一人の3人で話していて、その数年後にこれ前に夢で見たなっていうのが、僕何回もあるんですよ。不思議でそこだけふわっと出てくるんです。夢で見たわ、みたいな。ちゃんと覚えていればこの先、どんな人と共演するかがわかるんですよ、ちゃんと頭に(笑)。今放送中のドラマにもこの間、監督がいて共演者の人がいて僕が監督にこのシーンの相談をしに行ったっていうのを正夢で見てたんですよ。この状況があって、ここ最近何かが見えてしまってるんじゃないかと思うんですよね(笑)。宇野さんと共演してるのも何年か前に見てるんですよ」

──どれくらい前ですか?

「僕がまだ『ビリーバーズ』を知らなくて、役が決まるずっと前です。この短パン姿でテーブルの前に座っている宇野さんを僕は見てるんですよ(笑)」

──ほんとですか?(笑)

「これ嘘だと思うじゃないですか! 本当なんですよ!(笑)こいつ作り話してるって思ってるかもしれないですけど、本当になんですよ。全部じゃないですが、いくつかの現場でこれ正夢で見てたってことが結構あるんです」

──夢って面白いですよね。

「夢はまだ解明されていないですからね。面白いですよね。僕の中では『ビリーバーズ』も“夢と現実”がテーマだと思っていて、お客さんたちがどう捉えていくのかが気になります。単純に感想を聞きたいです」

──最後に本作の見所をお願いします。

「この映画はどこを見所にするかは難しいですけど、登場する3人は僕らと全く変わらないと思いますし、照らし合わせることもできる。それは誰しも何かを信じる力を持っていると思っていて、それがプラスに働くのかマイナスに働くのかはその人次第であるということ。そして信じる力と同じくらい欲望というのも持っている。この2つは人間のエネルギーの中でもすごい力だと感じてもらえると思います。それにぶつかっていく3人の人間本来の戦いをぜひ楽しんでほしいです」


ジャケット ¥418,000 シャツ ¥396,000 パンツ ¥181,500 ソックス ¥924,000 シューズ ¥148,500(すべて参考価格)/すべてクリスチャン ディオール

『ビリーバーズ』

とある孤島で生活をする二人の男と一人の女。ニコニコ人生センターという宗教的な団体に所属している3人は、オペレーター、副議長、議長と互いに呼び合い、無人島での共同生活を送っていた。瞑想、昨晩見た夢の報告、テレパシーの実験、といったメールで送られてくる不可解な指令“孤島のプログラム”を実行し、時折届けられる僅かな食料でギリギリの生活を保つ日々。これらは俗世の汚れを浄化し“安住の地”へ出発するための修行なのだ。だが、そんな日々の僅かなほころびから、3人は徐々に互いの本能と欲望を暴き出してゆき……。

監督/城定秀夫
出演/磯村勇斗、北村優衣、宇野祥平、毎熊克哉
2022年7月8日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開
https://believers-movie2022.com/
配給/クロックスワークス
© 山本直樹・小学館/「ビリーバーズ」製作委員会 

Photos:Houmi Sakata Styling:Ryosuke Saito Hair & Make-up:Tomokatsu Sato Text & Edit:Saki Shibata

Profile

磯村 勇斗Hayato Isomura 1992年生まれ、静岡県出身。 2015年のドラマ『仮面ライダーゴースト』の仮面ライダーネクロム、アラン役で注目を浴びる。その後、 ドラマ『ひよっこ』『今日から俺は!!』『サ道』『恋する母たち』、映画『ヤクザと家族 The Family』劇場版『きのう何食べた?』に出演し、2作品で第45回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞 。待機作に映画『PLAN 75』 『異動辞令は音楽隊!』など。 サウナ以外の最近の趣味は釣り。

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