成田凌インタビュー「夢を諦めて手放したときは新しい何かが入ってくるはず」 | Numero TOKYO
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成田凌インタビュー「夢を諦めて手放したときは新しい何かが入ってくるはず」

人々の心を揺さぶってやまない作家・燃え殻が書き下ろした完全オリジナルストーリー『あなたに聴かせたい歌があるんだ』がHuluで映像化され、注目が集まっている。本作で役者を目指しもがく青年・荻野を演じた成田凌に、夢やそれを諦めること、また本作で重要な鍵となる音楽との思い出についても聞いた。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2022年7・8月合併号掲載)

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人との出会いに支えられて

──『あなたに聴かせたい歌があるんだ』のオファーを受けたときの感想は?

「燃え殻さんと初めてお会いしたときご自身の経験を話してくださって『そんなことが人生で起きるんだ?』と驚いた出来事がありました。荻原健太郎監督ともご一緒してみたかったし、キャスト一覧を見せてもらったときに『最高だな』と。この人たちと一緒に青春を描けるのであれば是非やりたいと出演を決めました」

──燃え殻さんの作品の魅力をどう感じていますか。

「燃え殻さん自身の人間性がにじみ出ているところ。何人分の人生を生きているんだろうっていうような濃い人生を歩んでいる。 燃え殻さんが生きている限り、物語は永遠に生まれ続けるんだと思います」

──ご自身が演じた荻野智史という人物をどう捉えましたか。

「子どもの頃、ファミレスでおばあちゃんが一人でイカ墨パスタを食べているのを見たときに心がキュッてなったんです。はたから見るとすごく寂しそうにも見えたりするけど、彼女には彼女の幸せがあって、もしかしたら家族が家で待っているかもしれない、けどどうしてもイカ墨パスタが食べたくて一人で来たのかもしれない。

本人の気持ちと外から想像する気持ちはきっと全然違うんですよね。荻野はその感じなんです。荻野には夢があって、そこに向かって真っすぐ生きていて、人並みに恋愛もしていて。それはそれで素晴らしいことなんだけど……、例えば冒頭のシーンでは上司をよいしょしたりもする。これはみんな当たり前にやっていることだけど、はたから見ると心がキュッとなる。

荻野の弱い部分がたくさん見えるんですが、本人の幸せな気持ちを想像して前向きに見てもらえたらいいなと思いながら演じました。作品全体を通していろいろな諦めが描かれていますが、恋人や夢を諦めて手放したときには、何かを育てる時間だったり、新しい何かが入ってくるものなんですよね」

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──5人の元17歳が夢に向かってもがく物語ですが、特に好きな登場人物はいますか。

「みんな何かを諦めてたり弱かったりするんだけど、(藤原)季節が演じた小説家志望の片桐の『いつか芥川賞取るので付き合ってくれませんか?』っていう台詞が『季節っぽいな』と思って好きだったし、自分自身にもこういうところはあります。

この仕事を始めるとき、両親に『2年で結果を残すから、そこで判断してほしい』って言ったんです。そういう根拠のない過信で18〜20歳は頑張れた。年を重ねると、どんどんいろんな景色を見て諦めというものを知っていくものだけど、それでも夢を見続けられる片桐の真っすぐさが好きです。

僕もまだまだ夢の途中です。彼らと一緒で、何者にもなれていない。ただ、その時間を楽しんではいます。あと、僕の場合は本当に人に恵まれていて。先日も落ち込んでいたところ、ちょうど季節に会っていて励ましてくれたんです。

いろんなお仕事をさせていただいていますが、『この人と出会えたからそれで十分だ』と思えることが多いです。さまざまな出会いがあって、『あなたに聴かせたい歌があるんだ』のように、良い作品にも良い仲間との出会いにも恵まれるという奇跡みたいなことがたまに起きるんです」

思い出深い楽曲への思い

──キリンジの「エイリアンズ」という楽曲が物語の一つのキーになっています。人生に深く関わるような思い出深い曲はありますか。

「僕が雑誌『メンズノンノ』の専属モデルのオーディションに受かったときに、高校の友達がサプライズで祝ってくれたんです。

今日の撮影のスタイリストさんが実は僕の高校の友人なんですが、彼と待ち合わせして連れて行かれた先のドアを開けたら20人ぐらい友達が集まってくれていた。そのあとみんなで地元のカラオケに行って、みんなの名前と電話番号が書いてあるアルバムをもらったんです。『何かあったらここに電話してこいよ』って。友達だから電話番号くらい知ってるんですけど(笑)。

そのときみんなで歌ったのがリップスライムとモンゴル800の『Remember』。先日そのサプライズの主催者の結婚式があって、締めの曲として久々にこの曲を歌いました。僕たちのテーマソングみたいな曲です。あと、18〜20歳のときにアルバイトをしていた古着屋で、夕方にはいつもフジファブリックのベストアルバム『SINGLES 2004-2009』が流れていて。その収録曲『赤黄色の金木犀』を聴くと当時の記憶が蘇ってキュンとなります」


──成田さんにとって音楽はどんな存在でしょう?

「音楽は好きで、音楽をやってる親しい友人もいっぱいいるので、身近な存在です。4月にリョフの『One Way feat. YONCE』がリリースされて、久々にヨンスの声が聴けてうれしかったな。リョフやヨンスのほかにも、『あなたに聴かせたい歌があるんだ』にも出演している(上杉)柊平やリョフがやってるキャンディタウンの曲もよく聴きます。

最近一番聴いてるのはビムの『One Love feat. kZm』。オドフットワークスの『GOKOH feat.オカモトレイジ』もめちゃめちゃ好きです。レイジ君に『ライブのスケジュールが合わないとき、俺が代わりにレイジ君パートを歌いたい』って伝えたことがあるくらい(笑)。フィーチャリング曲って好きですね。

僕も一緒に何かやりたいと思ったりもするんですけど、歌が下手すぎて無理なんです。以前も知り合いが『曲作ったから一緒にやろうよ』って言ってくれたんで、『いま歌うので判断してください』って思い切り歌ったら『無しだね』っ言われちゃいました(笑)。カラオケは好き。最近は全然行けていないので、嵐の『カイト』を歌いたくてしょうがない。風呂ではめっちゃ歌ってるんですけど、人前では恥ずかしくて、お酒を飲んで楽しいときにしか歌えないです」

──(笑)。ライブにもよく行かれていますよね。

「欅坂46(現在は櫻坂46)のライブは欠かしたことがないほど。ペトロールズのライブにも何度も行っています。そういえば、サチモスが『雨』をカバーしてるペトロールズのトリビュートアルバム『WHERE, WHO, WHAT IS PETROLZ?』もよかった。あと、最近ブルーノ・メジャーというアーティストが好きでおしゃれなので、ヌメロ読者にぜひ聴いてみてほしいです」

成田凌のプレイリスト

成田凌が最近よく聞く楽曲のなかから、ヌメロ読者におすすめを紹介してくれた。ぜひ聞いてみて!

Huluオリジナル『あなたに聴かせたい歌があるんだ』


高校2年のある日、27歳の教師の赤い下着姿のグラビア写真が荻野(成田凌)たちの教室に張り出された。教師は「皆さんもこれから10年経ったら、必ず27歳になります。その時に後悔することが、私なんかより一つでも少ないことを私は本気で願っています」と言い残し、キリンジの楽曲「エイリアンズ」を流した。あれから10 年。27歳になった彼らにかつての先生の言葉が突き刺さってくる。役者、アイドル、小説家、バンド、モノマネ歌手……それぞれの夢みた人生から降りた若者たちの群像劇。

監督:萩原健太郎
出演:成⽥凌、伊藤沙莉、藤原季節、上杉柊平、前⽥敦子 Huluにて全8話を一挙独占配信中

URL/www.hulu.jp/static/anatanikikasetai

Photo:Takao Iwasawa Styling:Kawase 136 Hair & Makeup:Ai Miyamoto Interview & Text:Kaori Komatsu Edit:Mariko Kimbara

Profile

成田凌Ryo Narita 1993年、埼玉県生まれ。2014年にドラマ『FLASHBACK』で俳優デビュー。19年に『カツベン!』で第74回毎日映画コンクール 男優主演賞を、21年に『窮鼠はチズの夢を見る』で第44回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。Huluオリジナル『あなたに聴かせたい歌があるんだ』で主演を務めるほか、初舞台で主演の『パンドラの鐘』が6月に、映画『コンビニエンス・ストーリー』が8月5日に公開予定。Instagram:@_ryonarita_

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