Culture / Feature

七崎良輔×Kan対談「同性婚制度実現に向けてできること」

日本では自治体レベルでパートナーシップ制度が取り入れられつつあるが、同性婚成立は実現していない。“好きな人と結婚する”というシンプルな願いが国に受け入れられない──。性的マイノリティに対する婚姻の不平等は、扶養や相続といった問題以上に、いいようのない孤独や不安を多くの人に押し付ける。この現実を変えるために何ができるだろうか? 夫とパートナーシップ契約公正証書を結び、『僕が夫に出会うまで』(文藝春秋)で自身の半生を綴った七崎良輔さん、Netflixオリジナルシリーズ『クィア・アイin Japan』(以下、『クィア・アイ』)に出演したKanさんが対談。同性婚実現に向けての想いを語り合った。

【左】七崎良輔さん。Photo:山元茂樹(文藝春秋) 【右】Kanさん。Photo:Aleksandar Dragicevic
【左】七崎良輔さん。Photo:山元茂樹(文藝春秋) 【右】Kanさん。Photo:Aleksandar Dragicevic

困っているのはパートナーに“今、会えない”こと

──さっそくですが、Kanさん、七崎さん、それぞれの今のパートナーとの交際ステータスを教えてください。

Kanさん(以下、K)「僕はイギリス人のパートナーと付き合って5年です。3年前から東京とロンドンで遠距離恋愛をしています」

七崎さん(以下、N)「私は2013年頃から今の彼と付き合い始めて、2015年に二人でパートナー契約公正証書を作成し、夫夫(ふうふ)として一緒に暮らしています。今は私が仕事の関係で山梨にいて、東京の家には週2、3日帰る程度。彼とは関係が長いので、ずっとべったり一緒にいるというよりもこれぐらいがちょうどいいですね(笑)。Kanさん、遠距離恋愛は大変ですか?」

K「そうですね。コロナ前までは3ヶ月に1回お互いが行き来してたんですけど、コロナ禍になってから約1年半会えない状況が続いています。いつ会えるようになるのか希望が持てなくて不安が募りました。それで、二人で話し合って、7月に僕がイギリスに移住して、9月に結婚することにしたんです」

N「おめでとうございます!」

K「ありがとうございます!」

──日本で同性婚が認められていないことで、実生活において困ること、不安なことはどのようなことがありますか。

K「困っているのはやっぱり今、会えないことですね。彼との婚姻関係が認められればすぐにビザも下りるのにって。もちろんこの状況下では、正式な配偶者であっても海外からの入国は大変だとは思うのですが。未曾有の状況で、セクシュアルマイノリティはこういった形で苦しむことになるんだと実感しました。また、コロナ前であっても、同性婚が認められない日本ではパートナーと結婚して一緒に過ごす未来が描けないことがとても辛いし、悲しかった。ロンドンで彼と一緒に暮らせるのはうれしいけれど、僕には日本に大好きな家族もいるし、友達もいて、仕事もあるのにって」

──Kanさんがパートナーと一緒にいるためには日本を離れないといけない。同性婚が認められない限り、同じ選択を迫られる方がいるということですよね。七崎さんはいかがですか? 2015年にパートナーと公正証書を結ばれていますが、実生活において困ること、不安なことはどんなことがありますか。

N 「私がパートナーと結んだ公正証書は、将来を通して真摯な関係であることや貞操義務などを互いに誓いあったもので、あくまでも個人と個人の約束事なんです。その後、2019年に江戸川区で同性パートナーシップ証明制度が導入され、私達はその第一号として認定されて、公的に認められたパートナーである証明書が発行されました。ただ、法的な婚姻関係でないので、日常で困ることは多々あります。たとえば、何か契約をするとき、婚姻関係のある夫婦であれば、どちらかが代理で行っても済む話がそれが認められずに手続きが滞ったり。でも、パートナーシップ制度に問題があるのではなくて、いちばんの問題は、Kanさんがおっしゃるように、セクシュアルマイノリティの婚姻が法的に認められていないことだと思います」

七崎良輔さんと夫・古川亮介さんの結婚式の様子。Photo:前田賢吾【L-CLIP】
七崎良輔さんと夫・古川亮介さんの結婚式の様子。Photo:前田賢吾【L-CLIP】

孤独に生きていくしかないと思った

N「私が自分をゲイだと自認したのは学生の頃でしたが、その時『自分は誰かと結婚することはできない。一生一人で生きていくしかない』と思ったんです。多感な時期にそういうことを突きつけられるってすごく辛いことで。当時の私はそんなこと誰にも言えなかったし、この孤独を一人で抱えて死んでいくんだって思っていました。そして、大人になってからようやく『私は結婚しちゃいけない人間』なのではなくて、婚姻制度が平等でないこと自体がおかしいんだって気づいて。そこにたどりつくまでにくじけそうになったし、実際にそういう人は今もたくさんいると思います。まず、不平等な制度が本当に多くの人を傷つける」

──2015年当時、同性同士の婚姻関係が認められていなかったけれども、七崎さんは役所に二人で婚姻届を提出しに行かれました。それはどうしてですか?

N「自分をゲイだと自認したとき、本当に多くのことを諦めたんです。でも、『その生き方でいいのかな』と思いはじめて。能力が至らずにできないことは諦められるけど、自分がゲイであるというただそれだけの理由で、これからは何一つ諦めたくないって。だから、異性婚しか認めない社会のルールに従いたくなかった。私は結婚したい人と婚姻届を出す権利があるし、出したいんだから出そうって。そして、私達は婚姻届を提出したけれど、婚姻制度から除外したのは行政ですよ、という証拠も残したかった。私たちは諦めたから出さなかったんじゃなくて、出したけれど断られたんですっていうことを。そして、今後日本で同性婚が認められたとき、『私は2015年に一度提出しました』と伝えたら、その時点で夫婦関係が認められることになるかもしれない。そういうことが起きたらいいなという期待もありました」

──2015年、役所で「今はまだ婚姻届を受理できない」と言い渡されましたが、“「今はまだ」という言葉の中に希望を見出した”と著書の中に書かれていました。その翌年、七崎さんはパートナーと共に築地本願寺で挙式されましたね。

N「私は挙げなくてもいいかなと思っていたんですが、正式な婚姻関係を結べないことによって、『2人はカップルなのか? 夫夫(ふうふ)なのか?』という区別がなかなかつきにくいというか。Kanさん、そういう感じわかりますか?」

K「そうですね。けじめとはちょっと違うかもしれないけれど、チェックポイントがあったほうが二人の想いや絆は深まる感じがします」

N「うん。あとは、周りの人ですよね。挙式前と後で決定的に変わったのは、私たちの親族や友人だと思います。式を挙げなければ、互いの親や友達が会うこともなかったし。ただの儀式なんだけど『一生をともに添い遂げます』と目の前で誓い合ったことで、親同士や親戚などの交流も始まりました。そこからカップルじゃなくて、夫夫っぽくなったのかなって。でも、これはジェンダー関係なく、女性と男性のカップルもそうですよね。やっぱり、この社会で2人だけで生きていくなんてできなくて、家族や親戚、友達、理解してくれる近所の人たちの助けが必要。二人の関係を周りの人たちの理解してもらうという意味では、私たちの場合結婚式が必要だったかなと思います」

築地本願寺本堂の仏前で指輪交換をする七崎亮介さん夫夫(ふうふ)。Photo:前田賢吾【L-CLIP】
築地本願寺本堂の仏前で指輪交換をする七崎亮介さん夫夫(ふうふ)。Photo:前田賢吾【L-CLIP】

嫌な思いをせず、結婚式を挙げられる世の中へ

──式を挙げるにあたって大変なことはありましたか?

N「それはもうハードルだらけで。私たちが式を挙げた築地本願寺は一般的なお寺とは違って、西本願寺の直轄寺院なので、同性カップルの挙式の是非を判断するために識者の方が仏教の経典や憲法を一から調べることになって、すごく時間がかかりました。『大丈夫かもしれない』となった後も、『同性婚の式をしたら檀家が減るかもしれない』と断られかけて。『仏の前に人は皆平等だと言われているけれど、そうではないんですね』と残念に思ってしまいました。そういった話し合いを何度も重ねて、なんとか挙げることができました。こういう話をすると築地本願寺のことを悪く思う人もいるかもしれないけれど、結果的に式を挙げられてすごく感謝しているし、今はLGBTQの研修会をされるなどすごくひらかれたお寺なんです」

──ちなみに、どうして築地本願寺で挙げようと思われたのですか。

N 「私は祖父母にカミングアウトしないまま、彼らが他界してしまったので、ご先祖様へのカミングアウトも兼ねて愛を誓いたかったんです。あとは築地本願寺のビジュアルが素敵なことも決め手になりました」

──七崎さんは今、LGBTQの結婚式のプロデュースをされていますが、どういうことを大事にしていますか?

N「どんな人でも『結婚式をしたい』と思ったら、できるのが当たり前だと思う。ただ、私たちの場合はその当たり前が享受されずに、式を挙げるまでにたくさんの障壁があり、何度もくじけそうになった。だから、他のセクシュアルマイノリティの方にそういう辛い思いをさせたくなかったんです。どんな人も嫌な思いをせず、スムーズに結婚式を挙げられるようにしたいって。公正証書を作るのも大変なことが多く、私たちの場合は『同性同士は公序良俗に反する恐れがある』みたいなこと言われて傷つけられたので、こういう思いをする人が今後出ることがないようにお手伝いをしています」

2017年、KanさんとパートナーのTomさん。
2017年、KanさんとパートナーのTomさん。

ただ一緒にいたいだけ。特別なことを望んでいるわけじゃない

──Kanさんはイギリスで式を挙げる予定はありますか。

K「はい。9月に挙式予定です。ただ、イギリスって日本と違って婚姻を提出したその日に結婚式をしないといけなくて。日本だったら婚姻届を出して、別の日に式を挙げるのがほとんどじゃないですか。だから、『なんで婚姻届の提出と挙式を分けられないの?』ってパートナーと何度もディスカッションしたんですけど、そういう決まりみたいで」

──まったく知りませんでした。

K「僕は7月にフィアンセビザでイギリスに入国して、入国後6ヶ月以内に結婚して、配偶者ビザに切り替えないといけないんですね。だから、そのタイミングで式も挙げないといけない。本当は日本の友達や家族も来てほしいので、コロナが落ち着いてから式を挙げたかったんですが……」

N「私たちは二人とも結婚式で着物を着たんですが、Kanさんは何を着られる予定ですか?」

K「実は何も決めていなくて。格式ばったものにせず、自分たちが好きなものを着て、参列者の方たちも好きなものを着てくれたらいいなって思っています。僕も七崎さんと同じように式に対してこだわりが強くなくて、結婚する理由もパートナーと一緒にいたいから。つまり、ビザが欲しいからで、式に関してはプラスアルファぐらいに捉えていて。もちろん、家族や大切な人たちと一緒に祝福できる場があることは嬉しいんですけど『絶対こうじゃなきゃ嫌』っていうのはないですね。みんなで幸せな時間過ごせたらいいなと思っています」

N「素敵ですね!」

──二人でどんな家庭を築いていこうと話をされていますか。

K「遠距離恋愛ではありましたが、彼とはすごく幸せな恋愛関係を続けることができているので、一緒に暮らしてもこの関係が毎日続いたらいいなと思います。2人で毎日寝起きして、一緒にご飯を作ったり、仕事が終わったらドラマを見たり、散歩に行ったり。そういうことできたらそれだけで幸せだなって。きっと、結婚という選択肢が与えられていない性的マイノリティのカップルも何か特別なことを望んでるわけではなくて、ただ一緒に過ごしたいだけ。で、それに対して法的な権利を認めてもらいたいだけだと思うんですよね。だから、改めて『どうして結婚できないの?』と疑問に思うし、できないのは悔しいし、悲しい」

──七崎さんは結婚した当初と今、2人の関係性は変わりましたか?

N「変化はしていますね。どちらがいいってわけでもないんですけど。結婚した当初は毎日『かわいい、大好き』って言われていましたけど、最近は全然ないです(笑)。今は自由にお互いやりたいことをやっていますが、夫夫でいることで、“帰る場所がある”という感じですね」

『クィア・アイ 』のメンバーとKanさんの記念写真。
『クィア・アイ 』のメンバーとKanさんの記念写真。

「しょうがない」を放置しない

N「私、Kanさんが出演されていたクィア・アイを観ていたんです。その時『日本にずっと住もうとは全く思わない』っておっしゃってて、残念だけど『そうだよね』って納得しました。だからこそ、セクシュアルマイノリティが『日本に住みたくない』と思わないような社会にしたいなって。楽しく生きられるようにしたいんですよね」

K「そうですね。僕は『クィア・アイ』に出演してから、自分をケアする方法を知ったんです。本当に自分が好きな服を着たり、好きなものを身の回りに置くとか、そうすることで内面が明るくなって、毎日楽しく幸せに過ごしていました。ただ、パートナーとの将来を考えたとき、どうしても日本では難しいから、僕がイギリスに行くことが今の状況だとベストだよね、と。日本が嫌だからというよりは、本当に検討の余地がないってところが大きいんです。実際、パートナーもすごく日本に住みたがっていて。婚姻の平等が実現できたら移住もスムーズになると思うので、そういう未来が早く来たらいいなと思います」

──婚姻の平等は当事者の方たちだけの話ではないですよね。権利を獲得するために、当事者でない人たちができることはどんなことがありますか。

N「先日、札幌地裁が『同性婚を認めないのは違憲である』という判決を下して、世の中少しずつ動いてきてはいるのかなと感じていたのですが、自民党ではLGBT法案の了承を見送りました。やはり1人1人が考えて選挙に行って、思いを反映させることが大事ですよね。『このままじゃ駄目だよね』ということを放置せず、『しょうがない』で終わらせない。一人一人がちゃんと声を上げたら、世の中は変わる。

世界の歴史を振り返れば、これまでだって、みんなの声で変わってきたんです。マイノリティって文字通りマイノリティなので、全員が力を合わせたって少数なんだけど、おかしいと思ってる人たちが、ちゃんと声を上げ、その数が増えていくと、社会は動かざるをえない。当事者の中には、当事者だと言えない人もいるし、無理に言わなくてもいい。ただ、自分の場合は声を出せるので、声を上げていきたい。

そして、今の日本では、誰かが何かを発言すると叩く風潮があるけれど、それって対話になってないですよね。思ったことを言い、相手の話を聞く。そういう環境ができたらと思います。そういえば、先日、自民党本部前で同性婚の早期法整備と差別発言の撤回と謝罪を求める抗議者が24時間シットイン(座り込み)をしていて、自分も数時間行っただけですが、そういう時に応援してくれると心強いですね。何かできることがあるかな?って目を向けると、できることはたくさんあると思います」

──支援者は黙って傍観しているのではなくて、言葉や行動で「応援してるよ」という意思を表明すること。

N「それは本当にエネルギーになります。私が結婚式を挙げた時もブログに反対意見が書き込まれたり、『役所に婚姻届を出すなんて迷惑だ』みたいに批判されたけれど、その一方で応援してくれる人たちもいたんです。いろんな意見があるのはいいんですけどね」

日本とイギリスで離れて暮らしながらも、コロナ以前は3カ月に1回行き来していたKanさんとTomさん。
日本とイギリスで離れて暮らしながらも、コロナ以前は3カ月に1回行き来していたKanさんとTomさん。

──Kanさんはいかがですか。当事者でない人はどのようなことができるでしょうか。

K「七崎さんの意見と重なりますが、自分の考えを政治に反映させるために、婚姻の平等の実現に向けて取り組んでいる政治、政党に投票することが大事だと思います。あとは、おかしいと思ったことや疑問に感じたことを調べること。『どうして同性婚ができないんだろう?』と思ったら、インスタグラムやTwitterで婚姻の平等について情報を発信しているアカウントがあるので、そこから学ぶことができます。アカデミックな情報をインプットしたいのであれば、ジェンダー、セクシュアリティ、クィアスタディーズといった講義をオンラインで受けられるところがあるので、申し込んでみるのもいいと思います。

あとは性的マイノリティのについて描かれたドラマや映画を観たり、七崎さんの本を読むこと! 僕、七崎さんの本ですごく素敵だと思ったのが、ご自身のお話だけじゃなくて、今まで出会った方たちのそれぞれの辛さや想いもたくさん書かれていたことなんです。カミングアウトができない苦しみを抱えている人、世の中の偏見や差別を内在化して自分のことを大嫌いになってしまっている人、そういう人たちのストーリーがたくさん詰まっているので、当事者の話を聞く一つの方法として、この本はすごくいいなと思います」

N「Kanさん天才〜! 私、どうやって自分の本の話をしようかと思ってたんです(笑)。ありがとうございます」

「大丈夫だよ」って伝えるために

──七崎さんはどうしてご自身の半生を綴ろうと思ったのですか。

N「私が過去に付き合ってきた人たちってユニークな人が多かったし、自分が抱えてきた悩みは当事者の中に当てはまるところもたくさんあると思ってて。当事者が歩んだ道を一つでも二つでも示した方がいいと思ったんです。私がゲイを自認した時、将来はもうテレビで見る“オネエタレント”のように生きる道しかないと思い込んでたんですね。おこがましい話だと思うんだけど、それぐらい視野が狭かった。

ただ、もし誰かが同じように悩んだ時に『こういう生き方もあるんだ、こういう人もいるんだ』と思える道を示せたらいいなって。もしかしたら『こういう人間にならないようにしよう』と思うかもしれないけれど。ゲイとして、一人の人間として頑張って生きてるんだって思える道を一つでも作っていたかったっていうのが一番大きいですね」

K「僕も学生の頃から性的マイノリティの権利活動をしていて、大学でLGBTQのサークルを立ち上げたり、学校に出張授業をしたり、自分の経験を話していました。性的マイノリティーとして、自分のライフストーリーを話すことによって、誰かが希望が持てたりとか、一つの生き方の例として提示できたらいいなという想いで活動をしてきたんですね。

そう思ったきっかけはやっぱり僕も七崎さんと同じで、子供の頃、性的マイノリティー=いわゆるオネエ系の人たちしかいないと思っていたんです。それがいいとか悪いではなくて、とにかく幅がなかった。いわゆるオネエ系になりたいわけではないのに、将来が描けなくて、ずっと暗いトンネルにいたような気持ちで、ものすごく辛かった。だから、僕も自分の生活を少しでも見せることによって、こういう生き方もあるんだと知ってもらえたらと。そういう思いで『クィア・アイ』にも出演したし、今も発信を続けています」

七崎良輔さんと夫の古川亮介さん。Photo:佐川大輔
七崎良輔さんと夫の古川亮介さん。Photo:佐川大輔

──二人の活動が力になっているという人は本当にたくさんいると思います。Kanさんは番組に出演して変化があったということでしたが、七崎さんは本を出されてから変化はありましたか。

N「そうですね。本当にたくさんメッセージをいただくようになりました。特に印象に残っているのは、あるお母さんからのお手紙で。その方のお子さんは小学校で『オカマ』って言われていじめられていたらしいんですが、お母さんの携帯でたまたま私の連載を読んで、『自分も今同じようにいじめられてる』って、お母さんに相談をしてくれたと書いてあって。私が学校で『オカマ』って言われたのって、もう20年近く前の話だけど、令和になってもそうやって苦しんでる子がいるんだって知って、すごく悔しかった。だから、一刻も早くそういう差別をなくしてかなくちゃいけないって。読者の方のお手紙で改めて勇気をもらい、活動に結びついています」

K「本当にそうですよね。七崎さんも本の中で書かれてましけど、“もしできるなら、苦しかった頃の自分のところに行って『大丈夫だよ』って言ってあげたい”って。僕も本当に同じ気持ち。昔の自分に会って『大丈夫だよ』って言うことができないから、せめて今苦しんでる人たちに『大丈夫だよ』って伝えるために発信をしています」

N「うん。『大丈夫』って伝えるには、やっぱりちゃんと同性婚のシステムを確立して伝えたいですよね。大丈夫な世の中にするからって」

七崎良輔『僕が夫に出会うまで』文藝春秋
七崎良輔『僕が夫に出会うまで』文藝春秋

『僕が夫に出会うまで』

著者:七崎良輔
定価:1,430円(税込)
発行:文藝春秋

七崎良輔さんが幼少期のいじめ、学生時代の初恋、失恋、抑えきれない嫉妬、そして友人、親へのカミングアウト、そして結婚まで、自身の半生を綴ったエッセイ。誰もが共感しうる「青春の蹉跌」「人生の喜怒哀楽」に満ちた物語は、文春オンラインで連載するやいなや大反響を呼び、書籍化された。

漫画 つきづきよし・原作 七崎良輔『僕が夫に出会うまで』文藝春秋
漫画 つきづきよし・原作 七崎良輔『僕が夫に出会うまで』文藝春秋

漫画『僕が夫に出会うまで』

著者:つきづきよし
原作:七崎良輔
定価:1,045円(税込)
発行:文藝春秋

『あの世でお前に好きだと言える』(英和出版社)『愛せよバケモノ』(大洋図書)などBLマンガを多数手がける漫画家・つきづきよしさんが『僕が夫に出会うまで』を忠実にコミカライズ。2021年4月に書籍化され、大好評発売中。

Netflixオリジナルシリーズ『クィア・アイ in Japan!』独占配信中
Netflixオリジナルシリーズ『クィア・アイ in Japan!』独占配信中

『クィア・アイ in Japan!』

シーズン1~5が独占配信中のNetflixオリジナルシリーズ『クィア・アイ』の日本が舞台のスペシャルシーズン。第2話「クレイジー・イン・ラブ」ではKanさんが日本での生きづらさを感じているなか、クィア・アイのメンバーにより自分らしく輝いていく様が収められている。水原希子と渡辺直美も登場。
出演/ボビー・バーク、 カラモ・ブラウン、 アントニ・ポロウスキ、ジョナサン・ヴァン・ネス、タン・フランス
Netflixで独占配信中。

Interview & Text:Mariko Uramoto Edit:Mariko Kimbara

Profile

七崎良輔Ryosuke Nanasaki 1987年、北海道生まれ。2015年、パートナーシップ契約公正証書を結んだ夫と共に「LGBTコミュニティ江戸川」を立ち上げる。同年9月、夫と共に区役所に婚姻届を提出(不受理)。16年4月にLGBTのためのウェディングプランニング会社「合同会社 Juerias LGBT Wedding」を設立。16年10月、築地本願寺で挙式。19年4月に東京・江戸川区に「同性パートナーシップ証明制度」が導入され、その第1号となる。著書に『僕が夫に出会うまで』(文藝春秋)。Photo:山元茂樹(文藝春秋)
Kanカン 大学在学中にカナダへ留学。大学卒業後はイギリスへ渡り、大学院でジェンダー・セクシュアリティについて学ぶ。帰国後は化粧品会社に入社し、マーケティング業務を担当。2019年にNetflixの番組『クィア・アイ in Japan!』エピソード2に主人公として出演。性的マイノリティ当事者として、自分らしさやセクシュアリティをテーマにSNSでの発信や企業・学校での講演を行う。2020年には「REING」のジェンダーニュートラルアンダーウエアのモデル、ジュエリーブランド「Hirotaka」のモデルに抜擢されるなど、活動内容は多岐にわたる。Photo:Aleksandar Dragicevic

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