Chim↑Pomのエリイが見たアメリカ=メキシコ国境 | Numero TOKYO - Part 3
Interview / Post

Chim↑Pomのエリイが見たアメリカ=メキシコ国境

東京電力福島第一原発付近の帰宅困難地域で開催された国際展「Don’t Follow the Wind」を発案するなど、「立ち入れない場所」「ボーダー」をテーマにしてきたChim↑Pom。アメリカとメキシコの国境をテーマにしたプロジェクトによって彼らが示したものとは。

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入国できないから見える景色

──国境壁の下まで穴を掘って、アメリカの土に足跡をつける『The Grounds』はエリイさん個人のアクションを作品化したものでした。

「メンバー内でもアメリカに入国できないのは私だけ。みんなはいつも国境を行ったり来たりして、リサーチしていました。だから、どんなに私側に寄ってくれても、やっぱり入国できる人の意見なんです。私とは見える景色が全く違うし、この作品は私しか作ることができない。私にとって、アメリカは他人の家の敷地みたいなもので、入れない。今、日本のパスポートはビザなしで173カ国も入国できるのですが、世界の大多数はそうではない。メキシコの海辺に、日曜日に3時間だけ、国境の壁を挟んでアメリカの人に会うことができる場所があるんです。指と指が触れるくらいの隙間があって、おばあちゃんが孫の指を触りながら『会うのは16年ぶり』と泣いてる。その孫に『アメリカ人なら、メキシコに来ればいいんじゃない?』と聞くと『僕、アメリカから出られないんだ』と。メキシコ人は厳しく入国制限されているし、アメリカからも出国できない人もたくさんいるん」

──この作品では穴まで掘って、やっぱりアメリカに行きたいという思いはあったんでしょうか。

「穴は壁の真下のラインで掘るのを止めています。その先も掘ることはできるけど、ここで止めて足跡をつけるのは決定的にここに『ボーダー』があることの象徴です」

──2ヶ月メキシコに滞在してみて、どうでしたか?

「メキシコは楽しかった。小さな頃から憧れていたセノーテやチチェン・イッツァ遺跡に行く夢が叶いました。カンクンは東京ドーム規模の巨大なクラブがあって満員で驚きましたけど、2時間くらいはなれた場所のジャングルが素晴らしかった。あとは、カリブ海、オアハカのミトラ遺跡。モザイク柄の壁が特徴的で、飲み屋でメキシコ人に聞くと、生と死の間の空間だそうです。メキシコは振り切ってますよね。それから、是非トライして欲しいのが、リュウゼツランを蒸留したお酒、メスカル。テキーラは特定のリュウゼツランを使って法定産地で製造されたものなので、メスカルの一種です。アルコールの抜けも早いし、地球上で最高の飲み物。メスカル好きが高じて、オアハカの工場にも行きました。もしかしたら焼酎を越えるかもしれない。メスカル最高!」

「The other side」展の情報はこちら

Photos:Wataru Fukaya
Interview & Text:Miho Matsuda
Edit:Masumi Sasaki

Profile

エリイ(えりい) 現代美術作家。2005年に結成したアーティスト集団「Chim↑Pom」のメンバー。14年に結婚し「ウェディング・デモ」を敢行。同年その様子も収めた『エリイはいつも気持ち悪い』を発表。15年Chim↑Pomはアジアの若手作家を表彰する『プルデンシャル・アイ・アワード』で大賞を受賞。16年、イギリスの伝統あるアート雑誌『アポロ』が選ぶ「アジア太平洋地域で最も影響力ある40歳以下の40人」に選出。また取り壊された新宿・歌舞伎町商店街振興会のビルにて個展「また明日も観てくれるかな?」を開催し話題を呼んだ。chimpom.jp

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