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ジュリアン・ドッセーナに訊く、「Paco Rabanne」におけるクリエティビティ

ブランドの再生は難しい。歴史あるブランドであれば、なおのことクリエイティブディレクターの力量が問われるもの。そんな中、Paco Rabanne(パコ ラバンヌ)のジュリアン・ドッセーナの快進撃には驚かされるばかりだ。見事にパコ ラバンヌをファッションブランドとして現代に甦らせ、深いサブカルチャーへの理解を示すことで、多くのファンに支持を得ている。また、コロナ禍にもコレクションを発表する手を止めない。ジュリアン・ドッセーナとはどのような人物で、クリエイションについてどのような考えを持っているのだろう。

ジュリアン・ドッセーナ「ファッションは希望になりうると思っています」

──ファッションデザイナーを志したきっかけは?

「10代のころはずっと絵を描いている少年で、絵を仕事にできたらいいなと考え職を探していました。クリエイティブディレクターの職は、服作りから、イメージディレクション、建築など分野まで多岐にわたります。この仕事は複数の異なる分野にまたがる側面があり、とても気に入っています。決して退屈することはありませんね」

──どのような子ども時代を過ごしたのですか。

「山あり谷ありの日々でした。ヨーロッパ大陸を横断するように様々な場所に住み、学校ではいつも新入りだったことを覚えています。ティーンエイジャーのときは、読書とサーフィン、友だちと海辺で過ごすことが好きでしたね」

──2021年春夏“The Avant-Garde-Robe”と名付けられたコレクション を発表しました。ベーシックなアイテムが多用されていましたが、その理由は?

「私は常に、アーキタイプとなるようなベーシックな洋服をデザインすることに面白さを感じています。なぜなら、人々に広く認識されたアイテムであり、実用的で純粋な存在だからです」

──パリジェンヌのジーンズスタイルから、花柄やメタル素材を多用したエキゾチックなスタイルまで。ここで表現された女性像は、パリに住む多様な女性たちでしょうか。

「そうです。パリに住む女性たちは、べーシックな装いを好みながら、自由な発想で異なるタイプの服をミックスしたり、マッチさせたりするのが得意なんです」

──ランジェリーのようなアイテムも多数見られました。どのようなメッセージが込められているのでしょう。

「このシーズンは、コロナ禍に準備をしたコレクションです。私は親しみや優しさを感じさせるものを表現したいと思いました。それには、ランジェリーのように素肌に寄り添い、肩の力が抜けたリラックス感のある“half dressed(=半分だけ着飾った)”状態がぴったりでした」

──今回のプリント柄は何をモチーフに制作されましたか。

「偽物の宝石のモチーフを皮肉と遊び心をたっぷり込めて使いました。それは、まるでブルジョワジーに仕掛けるいたずらのようなものかもしれません」

──コロナ禍による自粛生活を経て、ファッション感覚やクリエーションに対する思いに変化はありましたか。また、世界的なパンデミックの中、ファッションが担う役割とはなんだと思いますか。

「いいえ。大きな変化はなく、私はこれまでと同じようにデザインに取り組みました。ファッションは希望になりうると思っています。私たちは皆、ファッションを通して、なりたいと思う自分になることができます」

──前衛的なクリエーションをするために、あなたが大切にしていることは?

「私は、常に探求し、発見し、好奇心を持つようにしています。また、新しいことを表現することに真摯に向き合うようにしています」

──クリエイティブディレクターに就任して7年。見事にブランドを蘇らえさせた感想を聞かせてください。

「光栄ですね。このブランドは、いまの時代に存在するに値するブランドだと思っています。日常的にファッションの話題にのぼり、語り継いでいく必要があるブランドです」

──カプセルコレクション“Lose Yourself”では、パーカーやTシャツにこの言葉をよく使用していました。このフレーズは、エミネムの楽曲で有名ですが、どのようなメッセージが込められていますか。

「デザインするときに、エミネムのことはあまり考えていませんでしたが、彼の音楽は大好きです。Lose Yourselfは「我を忘れる」という意味で、それには自己の解放と静けさ、楽しさ、この上ない幸せであることを伝えたいと思い、メッセージに込めました」

──パコ ラバンヌといえば、円形や様々な形に型どったレザーやPVCのモチーフを金具でいくつも連なせた“les Pacotilles”というアイコニックな表現方法があります。洋服やバッグによく使用されていますが、les Pacotillesをクリエーションに用いる面白さを教えてください。

「アバンギャルドでありながら、気楽なムードも表現できるところ。また、パコ・ラバンヌというデザイナーが愛してやまなかった素材のコンビネーションであり、時代を超えて今なおモダンであり続けるところに魅力があると思っています」

──デザイナーのパコ・ラバンヌが1966年に発表した、「12 Dresses in Unwearable Materials(着ることができないコンテンポラリーな素材で作った12着のドレス)」は、ファッションをどのように変えましたか?

「彼は、金属やプラスチック、ゴムや紙など、当時のファッションでは決して使われることがなかった素材を駆使したコレクションを発表しました。ファッションに、これほどまでに現代アートとモダニティが近づいたのは、初めてのことでした」

──60年のレトロフューチャーの文化で、美しいと思うものは?
「彼らが求めていた楽観主義と過激さ、変化」

──スポーツウェアやジェンダーレスなアイテムをいち早く展開していました。その理由は?

「それが必要だからです。人々は、すでに街や通りで、日常的にそのようなファッションをしています」

──クリエーションをしている中で、最も幸せを感じる瞬間は?

「チームのメンバーとリサーチを行っているときです。この作業をしている間は、何の制約もなく、クリエーションの可能性を最大限に味わうことができます。それから、実際に服をフィッティングするときも」

──アーカイブのアイテムを現代によみがえらせる時に気をつけていることは?

「いまの時代にも関連性があるかどうか、です。アーカイブピースを生き返らせるとき、まず現代のライフスタイルにマッチするかどうかを疑い、検証するようにしています」

──パコ・ラバンヌ氏以外で、尊敬するデザイナーは?

「川久保玲、マルタン・マルジェラ、ヘルムート・ラング、イヴ・サンローラン……」

──Balenciagaのニコラ・ゲスキエールの元で右腕として働いていたことでも知られています。彼から学んだことは何でしたか。

「たくさんのことを学びました。基本的にはクリエイティブディレクターとしての仕事の全てです」

──いま、最もインスパイアされる人は?

「アメリカの新大統領!」

──日本や東京の好きなものは何ですか。

「何もかも、日本が恋しいです。日本に住んでいる友だちも。パンデミックが終わったら、最初に戻る場所になるだろうと思っています」

Paco Rabanne
パコ ラバンヌ

https://www.pacorabanne.com/

Interview & Text: Aika Kawada Edit: Chiho Inoue

Profile

ジュリアン・ドッセーナJulien Dossena 1982年、フランス・ブルターニュ生まれ。パリのデュプレ応用美術学校を卒業後、ブリュッセルのラ・カンブル国立美術学校でファッションを学ぶ。2008年より Balenciaga(バレンシアガ)のシニア・デザイナーをつとめ、Nicolas Ghesquière(ニコラ・ジェスキエール)が退任する2012年まで在籍。同年、自身のブランド Atto(アットー)を設立した。2013年よりPaco Rabanne(パコ ラバンヌ) のクリエイティブ・ディレクターに就任。

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