MIKIKOにインタビュー
「会場を巻き込めたと感じる瞬間は最高!」
演出振付家、MIKIKOにインタビュー。Perfumeや星野源など、多くの有名アーティストの振り付けを手掛ける彼女が、ダンスへの思いを語ってくれた。
話題をさらうダンスの裏には、必ずこの人がいる。演出振付家、MIKIKO。手がけるアーティストは、PerfumeにBABYMETAL、星野源。リオオリンピック閉会式では、フラッグハンドオーバーセレモニー(引き継ぎ式)の総合演出・演舞振付を担当したことも記憶に新しい。今こうして熱い注目を集める彼女に、ダンスに対する思いについて話を聞いた。
ダンスというライフワークとの出合いは10代の頃までさかのぼる。
「中学では、バトントワリング部に入っていたんです。踊るというよりももっと競技寄りの内容だったのですが、何か心惹かれるものを感じていました。それで高校生になってHIP HOPのダンススクールとバレエの教室に通い始めて。HIP HOPダンスとバレエの要素に同時に触れながら、踊ることに向き合うような時間でした」
程なくダンスインストラクターになり、「アクターズスクール広島」でもダンスを教えるようになった。Perfumeの3人とは、ここで出会った。
「ダンススクールに入って比較的早い段階から、レッスンに参加するのと並行して、生徒たちの指導にも携わっていたんです。新規開校した『アクターズスクール』でも講師をすることになったのですが、Perfumeの3人は当時小学5年生で、私は先生になって1年生といった感じ。ここから彼女たちとの関係がスタートして、振り付けを担当している現在に至ります」
本格的なキャリアのスタートを切って以降、その熱意は舞台で脚光を浴びるダンサーから、次第にステージを演出する裏方のポジションへと移っていった。そして、彼女のスタイルを決定づけることになるのが、単身で渡ったNYでの生活。
「広島から上京してすぐの頃に『NYで勉強してきなさい!』と前事務所の会長からアドバイスをいただいたんです。それでNYに引っ越して約1年半の間、ムービーレターという形でPerfumeの振り付けを担当しながら、スタジオでのダンスレッスンに励んだり、ブロードウェイをはじめ各地の劇場に通って、さまざまな公演を見て回ったんです。そんな日々の中で実感したのは、それまで親しんできたダンスのほとんどが異国のものだったということ。そして、日本人の感性や体つきに合うスタイルを見つけたいということでした」
ディテールに至るまで意識が通った繊細なムーブメントや、ステージ上のすべてが音楽とともにシンクロする一体感で魅せるパフォーマンスは、そんな思いが原動力となって生まれたMIKIKOオリジナル。
「ダンスは何しろ非言語の表現だから、自分の体が、動きの一つ一つが見る人々に何かを伝えるレベルに達するまでには、結構長い時間を要するんです。だからこそ、とことん咀嚼して踊り込んで、ものにしていく。思えば中学時代から、練習を何度も何度も重ねて一度の本番でパーフェクトな表現を披露するというプロセスに惹かれるところがありました。その感覚が今でも確かにあるんですよね。それに、踊り手全員の動きやメロディーとの連動性を細かいところまで揃えていく作業も面白いですし、それがどこか職人的な、日本人ならではの個性として生きていると思うんです」
研ぎ澄まされたダンスによって、踊っている人がその数分間のすべてを支配するような、圧倒的な迫力が生まれる。
「いつも理想だと思っているのは、何げなく目にしただけでテンションが上がってしまうようなステージ。それもダンスの世界を深く知らない人々の心を奪うような。だから会場を巻き込めたと感じる瞬間は最高! 常にそういう到達点を目指していたいですね」
独自の目線で磨かれたダンスは、アートの域へ。最新テクノロジーを駆使したメディアアートの騎手Rhizomatiksとのコラボレーションや海外でのプロジェクトなどはますます勢いを増し、2017年も精力的に世界を広げていく。では、MIKIKO自身が見据えている未来の風景とは?
「長い目で見てみると、私が叶えたいと思っているのは日本に常設のシアターのような場所を作ることなんです。ダンスシーンはすでにとても進化していて、例えばYoutubeのようなメディアがあるおかげで、そのカルチャーに触れることも、ダンサーがテクニックを磨くこともすごく身近になりました。才能を見いだされるチャンスも格段に増えましたしね。今後はそれをもっと生のステージで発表していける場所があったらいいなと思っています。一回一回の公演が次の未来へとつながっていくような。そんな夢を、いつか実現できたらいいですね」
Text:Chiharu Masukawa