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“数字に惑わされずに、ただ自由に”。滝沢カレンが大切にしていること

“規格外”でありながらヒットを飛ばしている料理本がある。モデル・女優として活躍する滝沢カレンの『カレンの台所』だ。収録されているのはハンバーグや肉じゃが、鯖の味噌煮などおなじみの料理も多いが、“普通のレシピ本とちょっと違う”のがその構成。材料はキャスト、調味料はスタッフとして紹介していて、一つの料理ができるまでを物語のように綴っている。しかも、「大さじ1」「水100ml」など細かい分量は一切書かれていない。「豚肉たちが足湯できるくらい」「お酒一口飲むくらいの量」などこちらの想像力に委ねられており、その独特の世界に一気に引き込まれる。大の料理好きで知られる彼女は「自由に絵を描くように料理をしたらいい」と語るが、そう思えるようになったきっかけは何だろう。オンライン取材にて、彼女の料理との向き合い方や日々の暮らしで大切にしていることを聞いた。

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滝沢カレン/KAREN TAKIZAWA(@takizawakarenofficial)がシェアした投稿 – 2019年12月月21日午前4時29分PST

“自分じゃないもの”を作っていた時代もあった

──滝沢さんが料理するようになったきっかけは?

「“料理”と呼べるものとは違うかもしれないですけど、17歳のときにお腹が減って大変だったので、レトルトのミートソースとパスタの乾麺を買って、家で茹でて食べました。それが台所に一人で立った最初の思い出ですね。それがきっかけで色々と作るようになりました」

──ご実家ではお母さんが料理を作られていたんですか?

「うちは母ではなくて、おばあちゃんがご飯を作ってくれる家庭だったんです。おばあちゃんが料理する係で、私はその日にあったことを話す係というか。自分でご飯を作れるようになろうなんてまったく思ってなかったんですよね。今思えば習っておけばよかったなって後悔してるんですけど。だから、私の料理はおばあちゃんの味も誰の味も引き継いでない、自分の味です」

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──レシピ本には肉じゃがやハンバーグなど日本の家庭料理が多く掲載されていますが、それはおばあちゃんの影響でしょうか?

「実はそういったものを食べてこなかったんです。肉じゃがを出してもらえない家というか、いや、貧乏だとかそういうわけじゃないんですけど(笑)、魚や野菜がメインで、味付けも塩胡椒だけですごくシンプル。カレーやハンバーグも家で食べたことなかったんです。なので、自分が子どものときに食べたかったものをどんどん作るようになりました」

──それは意外でした!本の中では細かい分量は書かれていませんが、そういう作り方は最初からですか?それとも作っていくうちにどんどん自由になっていった感じでしょうか?

「そうですね、初めは自分のセンスをまったく信じることができなかったので、料理番組を見て作ったりしていました。分量通りに作っていたから、味見もしてなくて。でも、人の料理を作っている感じがして、だんだんつまらなくなっちゃったんですね。自分の感情が一個も入ってない料理を作るのって楽しくないし、食材にも食器にも申し訳ないなって。だから、分量を気にせず自由になれたのは、まず自分が料理を楽しみたいっていう気持ちがあったからですね。しかも料理をちゃんと作り始めた頃は仕事が全然なくて、台所に行くぐらいしか用事がなかったので、時間がたくさんあったんです。私は天才ではないので1度作って“自分の味はこれ”っていうのはわからなかったから、同じ料理を何回も作りましたし、それができたからこそ、自分の感覚を信じてもいいかなって思うようになった気がします」

『カレンの台所』より
『カレンの台所』より

──読者の方には料理初心者の方もいると思いますが、そういう話は励みになります。失敗してもめげずに何回でもトライして自分の味を見つけていけたらいいよねって。

「もはや失敗しないと成長しないんじゃないかって思います。料理は基本的に一人でするものだし、先生がいつも横にいるわけじゃないから、失敗が先生のような気持ちがあって、そこから教わることがたくさんありました。だから、料理で失敗して『もう台所に立ちたくない』と思ってる人がいたら寂しいですね。私もたくさん失敗しましたから。唐揚げを生で食べちゃったことありますし」

──生で(笑)。

「揚げ方を知らなかったんです。鍋を見つめすぎて焦がしてしまったり、味が濃すぎてしまったり、そういう失敗がたくさんあったからこそ今があると思います。でも、その失敗って誰にも怒られないラッキーなことですよね。言わなかったら失敗してるともわからないし(笑)。仕事は失敗できないじゃないですか。でも、料理だけは失敗したってまた向き合ってくれる。そう思うと料理ってすごくいいなぁと思います」

『カレンの台所』より
『カレンの台所』より

──料理を楽しむために器や調味料選びで意識していることはありますか?

「器は和食器が好きでたくさん持っています。丸とか四角、模様が入ったものとかいろんなお皿があると食卓が楽しくなります。ランチョンマットも重要なのでたくさん持っていますね。調味料選びは、自分の感覚を大事に選んでほしいと思います。私が使っているものとみなさんが使ってるものが違うかもしれませんし、たとえば減塩50%の醤油を使っている人が私と同じ分量で作っても味は変わってしまいます。だから、本の通りに作るよりも、こまめに味見をして自分の感覚を大事にしてほしい。煮込み料理や炒め料理は味見の大チャンスなので、特に、です」

──味見の大チャンス。

「揚げ物は味見を嫌うので最後までできないですけど、煮込み料理や炒め料理は何度でもできます、カレーなんてもう大チャンスですね。終点に着くまでに時間をくれますから。酸味とかコクとか何かが足りないと思ったら冷蔵庫にある調味料軍団のどれを使ったらいいんだろうって楽しみながら作れます。私は毎回同じ味じゃなくて『今日はこういうカレーがいいな』ってお題を決めて作っているんです。イメージした味にたどり着くまでに何度だってやり直しがきくから楽しいです」

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家の中だけでは“いつも通り”を味わいたい

──本を出版するきっかけは、滝沢さんのInstagramの料理写真が編集者の目に止まったからだと伺ったのですが、Instagramは滝沢さんにとってどういう場所ですか?

「自分の好きなものを自由に出せる場所です。私は書くことがすごく好きで、Instagramは何文字書いても受け入れてくれるのでありがたいですね。あ、1、2回だけ『もう入りません』って出たこともありましたけど(笑)。私はInstagramを『制限なき居間』と言わせてもらっているんですが、8畳とか10畳とか限られた空間ではないから、何人だって入れますし、そこで出会ったInstagramの住民たちとやりとりをして一緒に思い出も作れます」

──本に掲載されている料理は実際に滝沢さんが調理したものだそうで、しかも作った後にその場で原稿を書いたという話に驚きました。

「えー!そうですか。逆に私は数日前に料理したものについて書くことができないんです。映画もそうですが、『昨日観た映画の感想を明後日書いてください』って言われるのがすごく苦手。時間が経つと次の思い出がどんどん入ってきてしまって、その時の感情が消えてしまう。私にとって昨日の記憶を別の日の自分に書かせることは全然いいことではないので、食べたものや観た映画のことはその場ですぐに書いています」

──映画の感想や料理のレシピなど、滝沢さんの文章には独特のワードセンスが光りますが、ふだんから本を読んだり、文字に触れている時間は多いですか?

「『文字に触れてるぞ』って言う人に比べたら私は全然触れてない方で、本を1冊読むのだって何年もかかります(笑)。1ページ読んだら、自分の想像が広がってなかなか読み進められないんですね。たくさんの本を読むというよりは、1冊の本を繰り返し読むのが好き。たとえば、さくらももこさんの『もものかんづめ』はもう何度も読んでいます。量でいえば本より映画のほうが見てるかもしれないです」

──映画はどういう作品が好きですか?

「『ショーシャンクの空に』や『フォレストガンプ』、最近、Instagramの住民におすすめしてもらった『グリーンブック』も最高でした!私は実話に基づいた作品が好きで『ザ・ヘルプ』『ハドソン川の奇跡』もおすすめされて観てみたら本当によくて。Instagramの住民たちと映画の話をよく交換してるんですけど、みんながおすすめしてくれる作品ってどんなAIとも比べ物にならないくらい私にドンピシャで、すごく助かっています。本当に素晴らしい作品を観たときは、エンドロールが流れるうちに感想を書いてしまいます。エンドロールが終わると、その作品から私も退場してしまうことになるので、そこから言葉が書けなくなる。エンドロールが終わるまでに思いが書ききれなかったら、もう一度エンドロールを流して書いています」

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──滝沢さんも女優として活動されていますが、たくさんの映画を観ることが自分の演技や表現の糧になっていますか?

「いや、もう凄すぎちゃって真似なんてできないくらいなので、自分の演技には何のためにもなってないです(笑)。でも、いろんな作品を観ることは大事だなって本当にそう思います。演技に直結するとかではなくて、人と話すときに『あの映画のことを言ってるんだな』とか『あの人はこういう作品が好きかな』と思うになりました。映画を観ないよりは映画を観て終わる人生の方が私は好きです」

──今、外出自粛生活が続いていますが、家の中で映画を観る以外に何か楽しんでいることはありますか?

「やっぱり料理ですね。長い時間家にいると副菜をいっぱい作れるので嬉しいです。夜、一気にたくさんの料理を作ると大変なので、昼から副菜を少しずつ作っています。温かいものではなくて、冷たいままでもおいしい副菜であれば、保存も効きますし、味を染み込ませられます。今は台所で料理して映画観て、また料理して映画観て、で、たまにジャンプしてって感じの生活ですね」

──ジャンプ?

「ミニトランポリンを買ったのでそれでジャンプしています。あとはお尻の筋トレ。運動しないとお腹空かないじゃないですか。だからなるべく動くようにしています」

──台所に立つ時間は単に料理を作るだけではなくて、気分転換にもなりそうですね。

「はい、だから毎日楽しいです。料理を作ることは自分の栄養を自分で管理できることなので安心の一言でしかない。今の状況を不安に感じている方も多くいらっしゃると思いますし、私も不安な事がゼロかといわれればそうではないんですけど、台所に立つ時間は自分にとっては幸せなことなんです。ニュースを見て『どうしよう』って不安になる時間はもったいないから、家の中だけでは“いつも通り”を味わいたいです」

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──4月7日に『カレンの台所』を発売し、20日ほどであっという間に10万部超え。日々、読者からたくさんのメッセージが届いていると思いますがどうですか?

「毎日、たくさんの感想が届きすぎて『本当に私宛でいいんですか?』と信じられないぐらいです。本を出したときは、たとえ誰も買ってくれなくても、これだけ気に入った本ができたから、孫に自慢すればいいやと思ってたんです。でも、想像以上にたくさんの人が手に取ってくれて、それだけでも嬉しいのに『わかりやすかったので作ってみました』とか『台所に立つのが楽しくなりました』とかそういう前向きな声をいただけるのがすごく嬉しい。Instagramで料理の写真をアップしたとき、これを見て誰かが真似してくれるとは全然思ってなかったんです。器や食材たちがかわいく写ったから載せただけだったんですけど、そこから『作ってみたよ』って声が届くようになって。料理の投稿も増えていきました」

──それが今回の本の出版につながった。

「そうですね。今、たくさんの人にお揃いの本が届いて、みんなが台所に立って、それぞれ自分の体に栄養を届けているんだと思ったら、なんだかすごく安心できます。みんなの健康が守られてるぞって。『作ったよ』って写真付きで送ってくれるメッセージも全部大事に読んでいて、毎日楽しませてもらってます。本を作ってよかったなとすごく思います」

──まだ本をご覧になってない方にはどんなことを伝えたいですか?

「後悔させない本だよっていうのはお伝えしたいです。本当に後悔しないかどうかはわかりませんけど(笑)、私は後悔させませんよっていう気持ちがあるので、この1冊を読み終えたら、ぜひご自分の料理の道を探して冒険を始めてくださいっていう気持ちです」

『カレンの台所』

著者/滝沢カレン
定価/¥1,400(税抜)
仕様/A5 168ページ
発行/サンクチュアリ出版

Interview & Text: Mariko Uramoto Edit: Yukiko Shinto

Profile

滝沢カレンKaren Takizawa 1992年5月13日生まれ、東京都出身。2008年、モデルデビュー。現在は、モデル以外にもMC、女優と幅広く活躍。主なレギュラー出演番組に『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ)、『沸騰ワード10』(日本テレビ)、『伯山カレンの反省だ!!』(テレビ朝日)、ソクラテスのため息~滝沢カレンのわかるまで教えてください~』(テレビ東京)など。

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