たとえ1mmでも、前へ。 有村藍里が強くいられる理由
生き方や価値観は十人十色。そんな時代に私たちが手にしたいものは、しかるべき時に自分で決断できる潔さと変化をおそれずチャレンジする強さだと、有村藍里の姿から感じさせられる。自身初のフォトエッセイ『1mmでも可愛くなりたい。』発売後の今、彼女が思うこと。
弱さを振り切った今、やっと心の底から笑える
昨今の韓国における美容整形ブームもあり、2018年11月にタレントの有村藍里が手術に踏み切ったことが話題になった。著書のタイトルも『1mmでも可愛くなりたい。』。やはり彼女にとって“大きな決断”だったのだろうか。 「施術するまで2年間ほど悩みました。以前から自分の顔を見てもなんかしっくりこなくて、どうすれば良くなるのかをずっと考えてて。メディアに出る機会が増えた2年前から世間の方々にいろんな意見をいただき、美容整形という選択肢を考え始めた頃に担当の先生との出会いがあって、やってみようと」 すっきりした面立ちでそう話す。手術前後で心境に大きな変化があった。 「“心の底から笑うってこういうことなんだ”と知りました。もちろん、手術前も楽しいことがあれば笑ってましたが、いつも口元が気になり手で隠していたので。見た目の変化以上に、長年の悩みを解消しようと覚悟を決めて行動できたことが、自信に繋がったかも知れません」 一つひとつの言葉を確かめるように選ぶ姿から、心の揺れ動きに敏感な人なのだろう、と感じた。しかし、一度決断したら揺れない。そこが有村藍里の強さだろう。 「全然です(笑)。中学生の頃、人間関係に悩んで不登校になったり……嫌なことからは逃げてきました。でも『その弱さを振り切らないと一生やっていけない』と感じていたんです。昔から自分を趣味も取り柄もない“空っぽ人間”だと思ってて、だからこそ空洞を少しずつ埋めていこうと。今はいろんなことに挑戦させてもらえる環境で、ありがたいです」著書でも対人トラブルから不登校になった頃の葛藤が綴られている。それほど、この経験で価値観は揺らいだ。
「変顔したり、面白いことがあればゲラゲラ笑うタイプでした。でも友達とうまくコミュニケーションが取れなくなり、一時期家族とも話すのも嫌になり、学校を休んでいろんなアニメをぼーっと見てました。一番元気をもらったのは『クレヨンしんちゃん』。野原家のささやかな日常を見るたび、安心できるというか。学校に行けて、家には和気あいあいとした家族がいる。“私も何も考えず楽しく毎日生きたい”“普通が一番いいな”と思ったり」
自分自身がもどかしかった。そこで中学卒業と同時期に芸能界の扉を叩く。誰にも打ち明けず、面接にも一人で向かった。
「“芸能界に入れば今とは全然違う自分になれるかな”と思って。照れくさかったので、高校の友達や家族にも一切言わず、合格通知が出て初めて両親に契約書を差し出して『これ書いて』と(笑)。でも、この時に一歩踏み出せたのは自分にとって大きな転機でした」
それからグラビアアイドルとして芸名で活動し21歳で上京。着実に前へ進む中、2015年“有村架純の姉”と報道された一件を経て本名の“有村藍里”として再始動。
「今の私がいるのは家族のおかげ。言いたいことはきっと色々あるのに、家族はいつも『頑張って!』と応援してくれます。また、妹の仕事に関することで迷惑をかけることは絶対にしてはいけないと思っていたので、私が姉だという報道が出た時活動を続けるかすごく悩んだのですが、妹が『そんなの何も気にしないでいいよ!』と言ってもらえたことで救われました。普段妹と会ってもお仕事のことを話すことはないですが、彼女のプロとしてのひたむきさや努力を尊敬しています」
かつて葛藤していた頃の自分に一言掛けるなら、どんな言葉?
「“人はそんなに怖くないよ”“もっと気楽でいいよ”…ですかね。私の一言で誰かを傷つけたらどうしようと思うと人と目を合わせるのも怖かったので。これからはもっと外に出て、いろんな人と関わりたいです。いろんな知識も増やしたい。今もテレビやゲームが大好きで、休日は家に引きこもりがちなので(笑)」
現在29歳の有村藍里は今後さらに輝きを増すはず。彼女が憧れる女性像とは。
「漫画『フルーツバスケット』の本田透ちゃん。誰かのために一生懸命になれる優しい女の子です。私はいつも自分のことで精一杯、透ちゃんのようにあたたかい女性になれたらと思います」
『1㎜でも可愛くなりたい。』
著/有村藍里
価格/¥1,400
発行/扶桑社
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Photos:Takaki Iwata Interview & Text:Nao Kadokami Edit:Saki Shibata