People / Interview

滝川クリステル「愛犬アリスと家族になるまで」

愛情によって結びついている家族。動物たちを家族の一員として迎え入れることで得たスペシャルなものとは? 写真家、篠山紀信が捉えたポートレートとインタビュー。(「ヌメロ・トウキョウ」7・8月合併号掲載)

──滝川さんと愛犬アリスちゃんのコンビは、CMで共演するほど有名です。迎えたきっかけは、2011年に起きた東日本大震災でしたね。

「はい。雑誌の撮影を通して保護団体の方と知り合った際に『いつか私も保護犬を引き取りたい』と話をしました。その後、震災が起き、動物たちが現場に残されている状況を知り、すぐに『行き先のない大型犬がいたら引き取ります』と伝えたんです」

──背景のわからない大型犬との暮らし。不安はありませんでしたか?

「震災の惨状を知った瞬間、引き取る覚悟を決めました。悩んでいる場合じゃないと思ったし、心配しても始まらない。あのときは、何かに背中を押された感じがありました。もちろん、不安はいっぱいありましたよ。でも、悩む前に動いていたの。(アリスに向かって)ね?」

──常にそのスタンスなんですね。

「確かにそうですね。2014年に動物保護のクリステル財団を設立したときもそうでした。とにかく一歩踏み出そう。不安ながらも前に進む。これが私の哲学です」

──ステキです。昨今、都会ではどんどん戸建てが減り、物理的に犬の外飼いができません。加えて、動物福祉の観点からも、多くの保護団体では、家族の一員としての室内飼育を推奨しています。だから、大型犬を引き取れる人が手を貸してくれるのは、ありがたいと思います。

「ただ、私のような仕事を持つ一人暮らしの女性が大型犬を引き取ることを、ベストと考えない団体が多いのも現実。犬のQOLを考えたら、常に家族が在宅する、留守番の少ない家庭に迎えてもらいたいと思う気持ちもわかります。実際、私も『滝川さんには難しい』と言われました。小型犬しか飼育経験がなく、力の強い大型犬の扱いはわからないだろう、と。でも、私には家族のサポートがあります。ドッグトレーナーやシッターを頼む余裕もある。そこを伝えて理解してもらいました」

──実際、大変でしたか?

「体だけでなく、何事もスケールが大きいので、最初の頃はいろいろショックを受けました。うんちの大きさも、小型犬とはまったく違う。初めて見たときはびっくりでした(笑)。ご飯の量も多いし、消費も早い。力も強いし、声も大きい。ただ、アリスはもしかすると、昼間だけ外にいて、夜は家の中で暮らしていたのかもしれません。トイレシートでおしっこができたんですよね。それだと、大雪や台風の日は無理して外に行かなくてもいい。大型犬だとトイレは絶対に外だと信じていたので、そこはとても助かりました。ただし、一回でWワイドのトイレシートを一枚使うほど、量は相当ですけど(笑)」

──力の強さも苦労したそうですね。

「指の靭帯を切ったこともあります。アリスとの撮影のとき、誰かの声に反応して彼女が走り出してしまったんですね。その時にリードを持っていた私の指が一気に引っ張られて、ピキッて…。彼女が全力でダッシュすると、雷が落ちたんじゃないの?と思うくらいの衝撃が、リードを握る私の全身に走る。他の犬に反応してしまうので、散歩中に油断していると、全身を持っていかれます(笑)」

──それにしても、今年で11歳とは思えないほど若々しいです。さっきチラッと見たら歯もキレイだし(笑)、しぐさも、動きも若い。スリッパを噛んだり、引っ張りっこが好きとは。

「やっぱり落ち着きないですよねぇ。今でも『パピーですか?』なんて聞かれてしまうほど、遊び方が子どもみたいなんです。3歳で引き取ったときに、トレーナーには『この子はしばらくやんちゃですよ。落ち着かないかもしれません』と言われましたが、本当にそのとおりに(笑)。もう少しおとなしくなるかなと思っていたんですけどねぇ。さっき、メイクルームでも、気づいたら私のTシャツ振り回して遊んでいました」

──夜寝るときは同じ部屋ですか?

「私のベッドの脇にアリスのベッドが置いてあって、そこで寝ています」

──アリスさんは早起きですか?

「はい。お腹がすいて目が覚めるみたい。私が目を開けると、ベッドの端にアリスが前脚をかけて、私の顔をジッと見ていることがよくあります」

──前脚で、ちょいちょいしたり?

「私のことは絶対に起こせないとわかっているので、起こさず、けなげに待っているんです。でも、来客があると必ず行って、実力行使。足先が布団から出ていたら、まず足をペロペロなめる(笑)。顔をペロンとすることもありますね。顔の近くでハァハァするので、ヨダレで起こすことも。仕方なく、皆さん起きてご飯をあげてくれます(笑)」

──悲しいときなど、気持ちを察して寄り添ってくれたりしますか?

「うーん。死んだふりをしてみたことはあるけど、全然わかってもらえませんでした(笑)。飼い主が死んだら犬は助けるか? みたいな企画をテレビでやっていたので試したんです。でも、ぜーんぜんダメでした。だからいざっていう時は頼りにならないんだろうなぁと思っています」

──滝川さんがご自宅で“死んだふり”をしていることが新鮮です(笑)。でも、11歳でこんなに毛並みもふわふわツヤツヤで。アリスちゃん、長生きしそうですね。

「せめて16、17歳くらいまでは生きて欲しいなと思っています。ご飯は一般的なドッグフードですけど、時々、お野菜とか豆腐。酵素玄米などもあげています。2年ほど前は、後ろ脚がもっと弱っていたんです。彼女にはまだまだ頑張ってもらいたいので、リハビリ用のプールに通い始めたところ、かなり筋肉がついて、踏ん張れるようになりました」

──かけがえのない家族ですもんね。

「彼女を引き取ったとき、毎日のように話しかけていたんです。『福島からよく来たね』って。その気持ちは常にあって。最近は、もう8年も一緒に歩んできたんだなぁと、顔を見ながら過ごした月日を感じています。引き取った最初の頃は、『アリス』って呼んだ時にこっちを振り返ってくれるとうれしくて。そんなことを積み重ねながら、ゆっくり『家族』になりました。日本では、犬も猫もまだまだ幼齢で迎えるのが当たり前。ですが、保護犬、保護猫という選択肢があることをもっと多くの人に知ってほしいなと思います。預かりボランティアさんが飼育している犬猫なら、性格もよく把握されているので、事前に聞いてから一緒に暮らせるかどうかを決めることができます。成犬になっていても、私とアリスのように、少しずつ信頼を重ねながら、ゆっくりと年を重ねることができれば、ステキだなぁと思います」

Panel for Life(命のパネル)プロジェクト

10年以上前から個人で動物の殺処分や野生動物の保護に取り組んでいる滝川さん。彼女が2014年に立ち上げた一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブルでは、新たなプロジェクト「Panel for Life」を展開中。QRコード付きの犬猫パネルをさまざまな場所に設置することで、より多くの人々に保護犬や保護猫の存在を知ってもらうという活動。動物や人間の命が互いに共生し、調和する社会の実現を目指している。インスタグラムもぜひチェックを!
Instagram/@christelvieensemblefoundation
URL/www.panel-for-life.org/

ドレス¥45,000 ピアス¥18,000/ともにHYKE(ボウルズ)

篠山紀信が撮りおろす家族の肖像〜動物編〜

Photos: Kishin Shinoyama Hair&Makeup : Tomoko Noda Styling : Mika Nagasawa Text: Atsuko Udo Edit : Yuko Aoki, Michie Mito

Profile

滝川クリステルChristel Takigawa 1977年生まれ、パリ出身。フリーアナウンサーとして活躍する傍ら2014年に一般財団法人「クリステル・ヴィ・アンサンブル」を設立し、動物福祉、生物多様性保全に尽力している。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会では顧問を務める。

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