篠山紀信を魅了した、結城モエ、松井りな、高尾美有「ヌードに挑んで見つけた新しい自分」
篠山紀信がキャンパスクイーン卒業生の結城モエ、松井りな、高尾美有の3人をカメラに収めた写真集『premiere ラ・リューシュの館』が発売された。彼女たちが自ら企画し、実現させた奇跡のような一冊。初めてのヌードにも挑戦し、自分の殻を破り捨てた本人たちに、その想いを聞いた。
「今の自分を表現をしたい──」。女優として歩き始めたばかりの3人が自ら提案し、篠山紀信が撮影した『première』シリーズ。2018年12月に発売された3冊の写真集に続いて、アートの聖地「清春芸術村」を舞台に撮り下ろしたスペシャル版がリリース。この一冊を企画したきっかけや、巨匠・篠山紀信との撮影、そしてヌードになるという体験について、3人に直撃した。 ──まず、どういった経緯でこの写真集を発案されたのでしょうか。 松井りな(以下、松井)「この年齢になって、一人の女性として将来に対する漠然とした不安や、モヤモヤした気持ちを感じていました。確固たる自信だったり、何か信じられるものを得たいとずっと思っていて。ありのままの今の自分を、役を通してではなく、自分自身で表現してみたら面白いんじゃないかなって。せっかくだったら、巨匠の篠山紀信先生に撮っていただけたら…なんてことをぽろっと言ったら、篠山先生の耳に入り、『面白い、会ってみようじゃないか』となり…。まさか実現するなんて思ってもみなかったです」 ──篠山先生といえば、数多くのヌード写真で知られていますが、ヌードに対する不安やためらいはありませんでしたか? 高尾美有(以下、高尾)「ヌードがあるかもしれないというのは、なんとなく思っていました。先生と初めてお会いした時に、テスト撮影でヌード撮影をしたんです。そのテスト撮影した自分の写真が手元に回ってくると、世の中に自分の裸を見せるのが、女優としてではなく女性として怖いなと思ってしまって。でも、あるとき母親に『あなたが女優という道を決めたときから、私は覚悟を決めていたよ』と言われたんです。母親がそうなのに、本人がこんな気持ちでどうするんだと。そこからは、私はこの世界で生きていく!という、今までとは違う覚悟が生まれました」
結城モエ(以下、結城)「テスト撮影をしているときは楽しかったんですけど、先生の事務所から一歩離れると急に怖くなって。篠山先生に『なぜヌードにこだわるんですか』と聞いたら、『それがその人の一番美しい姿だから』とおっしゃって。それが、私にはわからなかったんですよね。女性の裸が美しいという感性みたいなものは、自分が脱いでそれをやってみないとわからないし、その境地に至ってみたいというのがあって。結局、この写真集が出来上がって、気づいたらヌードになっていたという感覚ですね(笑)」
松井「先生にお会いしたときに、『君たちの一番良いところを引き出すために、ヌードになる可能性もあると思うけど、ちゃんとその覚悟はあるの?』と聞かれました。自分の力で、それを引き出す勇気や覚悟はあるのか、と。そう言われたときに、『あ、そういうことなんだ』と思って。『はい、その覚悟はできてます。だからここにきました』と答えました。そう言ったからには、もうブレないと。ためらいはなかったです。怖いというよりも、その先にあるものを見てみたい好奇心かな。先生の真っ直ぐな目を見て、『あ、絶対に素晴らしいものができる』という根拠のない自信が芽生えました」
──いざ撮影がスタートしてみて、どうでしたか。心境の変化はありましたか。
高尾「一流の方ばかりの現場で、この作品を良いものにするという一つの目標に向かって、一人一人が全力で立ち向かっているのを目の当たりにして、今までの自分の考え方が恥ずかしくなってしまって。自分が見たことのあるヌードのイメージに捉われて、怖いと感じていたんですね。そうじゃないんだと現場に入って改めて思いました。脱ぐときは、みんなスパッと脱いでいて。モエちゃんは、3人一緒に撮る最初のカットで、潔く脱いでいて格好良かったよね」
結城「悪い意味じゃなくて、思考が停止しているんですよね(笑)。もともと感情的な人間なのに、演技をしているときは頭で考えてしまって…。それが悩みだったんです。思考に自分の感覚を邪魔されない、というのを追い込まれて習得しました。頭で考えた上で、感情に戻ってくるのがベストだなって思えました」
松井「個人撮影のときは、先生が自由にさせてくれたので、不思議な感覚でした。カメラがあるんだけど、ないような。先生と一対一で勝負しているんだけど、一人でいるような…。私は自由だね、とか変わってるね、とよく言われるのですが、実は人目を気にするタイプでもあって。みんなと同じようにしなきゃと思っていたけど、そういうのが全然気にならなくなりました。私は、このまま今の私で生きていていいんだなって、肌感覚でわかるような体験でした」
──そんな風に、この撮影を通して、自分の成長や変化など感じた部分はありますか?
高尾「自分で自分の枠を決めたくないなって思いました。怖さを乗り越えた先に見える世界がありますし、この現場に自分がいなかったら、今の自分は絶対にいないというか…前よりは強くなれてないと思います。また、今まで着たことのないようなお洋服をたくさん着せていただいて、自分のイメージの可能性を広げてくれました」
結城「今回一番学んだのは、正直じゃないと良いものづくりはできないということ。私、ヌードに対してそんなに自信がなかったんです。服を全部脱いだとき、自信を持ってカメラの前に立てない。恥ずかしい表情になるけど、それが嘘じゃないなら、いいんだって。自分を偽ったり、隠そうとしていたけど、現場の空気感からそれを教わって、このままじゃここにいられないと思ったので。心の中は、今ではすっかり別人です(笑)」
──篠山先生に言われた言葉で、印象に残っていることは?
松井「先生に最初に言われたのは、『君は確信犯だね』と。一緒に時間を過ごすなかで信頼関係が築けたし、それが心地良くて。先生に言われたこの言葉にハッとさせられた、というより、気を遣うこともなく自然に先生との関係を築けたからこそ、委ねられました」
高尾「『あなたの笑いの中には、悲しみとか怒りがあるから面白い』と言ってくださいました。そんなこと今まで言われたことなかったし、全部見透かされたみたいで。今までの人生を生きてきたことが、認められたようで嬉しかったです」
結城「撮影が全部終わった後に、『驚かされたよ』、あと『魔性』と(笑)。『これで終わりにしたくない。一歳年をとると、表情も中身も変わっていくから。そしたら、僕自身も新たな発見があると思うから』とおっしゃってくださいました。自分が人にインスピレーションを与えられるなんて思ってもいなかったし、それがすごい褒め言葉だなって」
──お気に入りの写真を一枚挙げるとしたら?
結城「白馬と一緒に撮った、このシリーズですね。撮影終盤で、みんなの心も一つになり始めたときで。午前中は曇っていて、雨が降りそうだったのに晴れてきて。このときは先生も楽しんでいたし、この瞬間すべてが揃ったからこれができたんだな、と感慨深いです」
高尾「私は、台風のなかで撮影したこの写真です。先生が『よし行ってこい!』とおっしゃって、『はい!』って飛び出したはいいけど、この格好だし、寒いし、クレイジーになっちゃって。りなは本当に怖がっていて、この後、別の白樺の木が倒れちゃったんだよね。先生は声も届かないところから撮影されていたので、ジェスチャーで会話したりして…。あぁ、生きて帰って来れた、みたいな(笑)」
松井「画家の梅原龍三郎さんのアトリエでの撮影は、場所のパワーがすごくて、泣きそうになるくらいでした。陰に引っ張られる人は陰に、陽に引っ張られる人は陽に引っ張られるんだと思います。そういうパワーが集まる場所で撮影した写真は、なぜかモエちゃんは手前にいて、私と美有は奥にいることが多いんだよね。その3人のバランスがいいのかなって」
──これから、どんなことに挑戦していきたいですか? どんな女優になりたいですか?
高尾「可能性を狭めたくないですね。こうでなきゃダメだとは一切考えずに、いろんなことに挑戦していきたいなと思います。これから表現者として生きていくなかで、人間味のある女優さんになりたいなと思っています」
松井「今回、もちろん被写体としても、表現者としてもすごく勉強になったんですけど、本の構成にも携わることも一緒にやらせてもらえて、作り手の目線としても関わることができました。主観だけじゃなく、俯瞰してみるというのも面白くて。繊細で、絶妙な目線を持った作り手でもありたいという野望はありますね」
結城「“丁寧な女優”になりたいです。皆さん、現場に突入するまでの間すごく考えているなと思って。現場では、そこで起こり得ることを何よりもを第一優先。でも、ベースは考えているからそれをちゃんと活かせるんですよね。とにかくまずは丁寧な仕事のできる女優さんになることで、その先に何か違うものが見えてくるのかなって思っています」
「première la maison de la ruche moe yuki miyu takao rina matsui」(プルミエール ラ・リューシュの館 結城モエ 松井りな 高尾美有)
定価/¥3,800(税抜)
発行/小学館
発売中
発売記念イベント開催決定!
会期/2019年2月24日(日)
場所/SHIBUYA TSUTAYA 7F WIRED TOKYO 1999
住所/東京都渋谷区宇田川町21−6
時間/18:30開場 19:00開演予定
登壇/篠山紀信、結城モエ、高尾美有、松井りな
内容/トークイベント(19:00~20:00頃)
サイン会/トーク終了次第開始~列が途切れ次第終了
URL/https://ameblo.jp/shibuya-tsutaya/entry-12434114691.html
篠山紀信にインタビュー。女性を撮り続ける理由とは?
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Edit: Maki Saito Interview & Text: Yukiko Shinto