元マルニのコンスエロ愛娘の新ブランド「Plan C」がデビュー
「Marni」のスペシャルプロジェクトディレクターとして活躍した、カロリーナ・カスティリオーニによるブランド「Plan C」が今秋デビューした。彼女の名前からも想像がつくように、「Marni」の元クリエイティブディレクター、コンスエロの愛娘だ。ファッション業界のサラブレッドながら、自身で磨き上げた感性を存分に発揮したブランドの誕生秘話やファーストコレクション、また彼女のクリエイションを語る上で重要な家族という存在について聞いた。
本当に着たい服を求めて
──ブランド誕生の経緯は?
「私はファッションのキャリアをビジネスのパートからスタートしました。ファッションを生業とする家に生まれ育ってきたなかで、20歳になった私が興味を惹かれたのはファッションビジネスの側面だったのです。『マルニ(Marni)』のコマーシャル部門で13年の間に、リテール、アクセサリーのバイイング、それからウェブサイト、イーコマースの立ち上げに携わってきました。この経験があったからこそ、次のステップに進もうと思えたのです。すべては必要なプロセスだったと思います」
──これまでのビジネスの観点の仕事と、クリエイティブディレクターという立場の違いとは?
「大きな変化があるというわけではありません。クリエイションを行う一方で、もちろんビジネス面も見なくてはいけません。ただ、『Plan C』CEOである父(ジャンニ・カスティリオーニ)や、オペレーションディレクターを担う弟(ジョバンニ・カスティリオーニ)が常にサポートしてくれているので、クリエイションの活動に集中することができるのはありがたいですね」
──「Plan C」というブランド名の由来は?
「たくさん意味を持たせているのだけれど、カロリーナ(Carolina)の頭文字をとったCのプランでもあるし、もしくはプランAでもBでもなく、Cというプランという意味もあります。このブランドネームをとても気に入っているんです」
──その”プランC”とは具体的にどんなプランなのでしょう。ブランドのコンセプトや強みとなるデザインやアイテムとは?
「アイデアとしては私が今、何を本当に着たいのか、直感や本能で何がベストなのか、そうしたとてもパーソナルな感性を生かしたコレクションにしたいと思っています。強みとしては生地にはかなりこだわりがあって、普通の生地は選んでいないんです。コットンにしても、スペシャルなコットンを選んでいます。今シーズンはすごく張りのある、クリスピーコットンを選んでいて、この素材だからこその肌触りや質感が特徴です。
ジオメトリックなパターンとフラワープリントと組み合わせてみたり、コットンボタンダウンシャツにジャージ素材のトップスをオンしたり、それぞれ違うテイストのアイテムのレイヤードを楽しんでほしいと思っています。また、今回さまざまな素材やカラーのウエストバンドを揃えています。オーバーサイズのドレスをウエストマークするなど、よりフェミニンなルックに仕上げることができると思います。スタイリングのポイントとしてぜひ取り入れてほしいですね」
──ひとつひとつ個性のあるアイテムが印象的ですが、それをさらに自分らしくスタイリングすることで、自己表現ができるのですね。
「アーティスティックな女性は、トレンドを追うことよりも、非常にパーソナルなスタイルを貫くことに重きを置いていると思うの。だからプリント同士を組み合わせたり、異素材の組み合わせを楽しんだり、自分自身のパーソナルスタイルを見つけて欲しいと思います」
家族を愛し、ファッションを愛し
──ファッションやデザインという環境に囲まれて過ごした幼少期はどんなものでしたか。
「私にとってはごく自然なことだったのだけれど、常に興味をかき立てられる対象が周りにあったことはすごくラッキーだったと今では思います」
──ご自身も二児の母ですが、コンスエロさんは働く母としてどんな母親でしたか?幼少期に一緒に過ごすときはどんなことをしていましたか。
「みなさんご存知の通り、彼女はスーパーウーマンよ(笑)。特にショーや展示会の前は、ほかのどんな女性よりも忙しかったはず。マルニがスタートしたばかりの頃は年に2回のコレクションだけだったから、忙しい時以外は母との時間をしっかり過ごすことができたし、オフィスに行けば家族みんなの顔を見ることができました。もともとこのビジネスを立ち上げた祖父はもちろん、父や母がいるし、スタッフもみんな含めてビッグファミリーのような暖かい雰囲気のオフィスでしたから、多くの時間を家族と過ごすことができました」
──オフィスに通うなかで、その環境があなたの感性にどのような影響を与えたのでしょうか。
「たくさんの質の高いものに囲まれ、それらを目で見て、触れることで、商品のクオリティに対する知識は自然と養われたと思います。それからさまざまなカラーをミックスするセンス。それをエレガントに見せる技。それは母が最も大切にしていたことです」
──ファミリービジネスとしてブランドを経営する魅力とは?
「すべての決定を自分で下せること。これは大きな会社ではなかなか難しいことかもしれませんね。スタンダードやルールに従うだけでなく、自分だけの方法を発見したり、模索して突き進むことができること、そしていつでも父や弟とブランドについて話し合う機会が持てることは、私にとってとても重要なのです」
──コンスエロさんと比較されることも多々あるかと思いますが、そのことについてどう思いますか?
「とてもポジティブに捉えています。比較されるということは、母親もファッションデザインを手がけていたのだから当然のことだと思います。私たちは世代が違うけれども、好みやセンスがすごく似ています。違うタイミングで同じものを買ってしまうこともしょっちゅうあります(笑)。以前一緒に来日した時も、それぞれ違う日に買い物に行ったのに同じものを買ってしまったことがあるんです」
──あなたにとって常に変わらずに興味をひかれるものは?
「ファッション以外でいうと、アンティークの家具です。50〜60年代の家具が大好きなのだけれど、その魅力とはそこにクラフトマンシップを感じるからですね。素材も技術も素晴らしいものだし、色味だったり、現代にはない特別な魅力を感じることができます。私はモダンなアイテムと組み合わせることが多いですね。オフィスは、ヴィンテージ家具を基調としながらもモダンでフレッシュな空間にするために、ビニールでコーティングしたカーテンを組み合わせています」
──そういったものからインスピレーションを得ることはありますか?
「はい、そういう場合もあります。インスピレーションはどこにでもあふれていると思っています。身近にある花やカップ、本、建築などがインスピレーションになることもあるんです」
──今回のコレクションに登場するTシャツの一部は、娘さんが書いた絵をプリントTとして取り入れていますね。
「このイラストは山に遊びに行った時、娘のマルガリータがスケッチしたものです。ちょうど新しいブランドの構想を考えてきた時だったので、マルガリータの絵を取り入れてみては面白いかもと思ったんです。だって彼女は純粋に絵が大好きで、そのピュアな感性をそのまま生かしたいと持ったんです」
──忙しい日々のなかで、オフにはどのように過ごしてリフレッシュするのでしょうか?
「スキーが趣味だからシーズン中は毎週末スキーに出かけます。一番のリフレッシュ方法です。アクティブに動くタイプだと思うけれど、ミラノの自宅でのんびり過ごす時間も好きです。そんなときは子どもたちとたくさん絵を描いています。私にとってすごく大切な時間」
──最後に「Plan C」の展望についてお聞かせください。
「ミラノでの初めての展示会ではいい反応をもらったので、よい形で広げていければと思います。ショップのオープンも予定しているけれど、少しずつ成長させていきたいと思っています。私が本当に着たいものだけを作っていくのだから、軸となる部分はぶれないけれども、新しいものも大好き。アイコニックアイテムをキープしながら、次シーズンはさまざまな違うスタイルも取り入れていきたいと思います」
Photos:Ayako Masunaga(Portraits) Interview&Text:Etsuko Soeda Edit:Masumi Sasaki