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People Interview

ストリート視点から社会問題に取り組むデザイナー、ヘロン・プレストン

斬新なアプローチでファッション界を揺るがす、新世代のデザイナーたち。ストリート目線で、環境にも配慮した革新的プロジェクトを実現させてきたヘロン・プレストンにインタビュー。(「ヌメロ・トウキョウ」2018年10月号掲載)

いまやメンズパリコレクションでランウェイショーを発表するなど、自身の名を冠としたブランドの飛躍が目覚ましいヘロン・プレストン。これまでも、ナイキのデジタルプロデューサー、カニエ・ウエストのコンサルタント、DJなど、NYのストリートカルチャーを牽引する人物として名を馳せてきた。

「クリエイティブなことが好きで、いつも自己表現をする新しい手段にチャレンジしていました。2004年にブログを立ち上げたことで、ストリートウェアやカルチャーなど似た趣味の人ともつながり、ヴァージル・アブローとも親しくなりました。私が自主制作したTシャツを見た彼の勧めでブランドを立ち上げたんです。最初はそこまで乗り気ではなかったのですが(笑)」

Heron Preston 2018AWコレクション
Heron Preston 2018AWコレクション

ブランドは、ヒップホップカルチャー、ワークウェア、ヘロン=鷺(サギ)をコンセプトとし、感度の高いストリートウェアとして人気を集める。「生きるうえで音楽は必須ですし、音楽のないストリートウェアは存在しないと思っています。警察官の父の影響もあり、ワークウェアには昔から惹かれていました。私の名前のヘロンは、鷺(サギ)が由来となっていて、攻撃的なストリートウェアと平和を象徴する鳥の掛け合わせが面白いと考えています」

NY市衛生局とコラボによるプロジェクト「UNIFORM」。(イーストランド 03-6712-6777)
NY市衛生局とコラボによるプロジェクト「UNIFORM」。(イーストランド 03-6712-6777)

環境汚染に対するクリエイティブな取り組み

時流に乗ったストリートブランドと一線を画すのは、ヘロンの自由な発想とアイデアの実現力だ。環境問題に関心をよせる彼は、NY市衛生局(DSNY)とコラボレーションをもちかけ、「UNIFORM」プロジェクトを2016年に立ち上げた。DSNYの職員から着古した制服を収集し刺繍やロゴなどのデザインを加えたアップサイクルウェアを発表。同時開催したインスタレーションがファッション業界だけでなく話題を生んだ。

「石油業界の次にファッション業界が環境汚染に加担しているという事実を知り、何かクリエイティブなかたちでこの問題に働きかけられないかと考えて生まれたアイデアです。職員とコミュニケーションをとり、一般公開されていない大規模な機械類や施設を使用することもでき、あらためてファッションが環境へ与える負担を最小限にしたいと思うようになりました。これからもDSNYとの取り組みを続けて、もっとムーブメントを大きくしたいですね」

自身のコレクションでもリサイクル素材の使用など試行錯誤を続けているという。

「昨年、業界トップレベルのリサイクルシステムを持つアイリーン・フィッシャー社で研修する機会も得ることができました。まだまだ課題は多いですが、自身のコレクションでも反映できればと考えています」

2018AWコレクションより。NASAとコラボレーションし、ロゴウェアが話題となった。
2018AWコレクションより。NASAとコラボレーションし、ロゴウェアが話題となった。

固定概念を打ち破る想定外のコラボレーション

2018AWコレクションでは長年の夢と公言していたNASAとのコラボレーションを果たした。ロゴを使用したアイテムを発表するだけでなく、それをマネキンに着せて宇宙に飛ばすという大胆なアイデアも実行に移した。真剣な取り組みとウィットを含んだ彼の感性に支持が集まるのだろう。

「NASAとのコラボレーションは、まさに夢が叶った出来事でした。科学者の友人を通してアイデアを提案し、ヴィンテージのロゴ使用の許可を得たんです。DNSYとの取り組みにより、政府機関にいいスポットライトを当てることができた経験も大きかったと思います。一つのプロジェクトは次につながります。だからアイデアの実現化は重要なのです。ユニフォームに関連するアイデアや想定外のコラボレーションをこれからも打ち出していきたいと思っています。私は、洋服を通してストーリーを伝えるのが好きなんです。政府機関であろうとなかろうと、普段交わることのない異なる2つの世界をミックスさせることこそが、カルチャーを育てると思っています」

Heron Preston 2018AWコレクション
Heron Preston 2018AWコレクション

2019SSコレクションではナイキとのコラボレーションをした新スタイルのサングラス「Nike Tailwind HP」も登場している。話題に事欠かないヘロンの勢いはまだまだ止まらなさそうだ。

「デザイナーとして、自身が影響力を持つ存在であるということを重々自覚しています。ルールは覆せること、固定概念に縛られない大切さを、行動で示していきたいです。また、自分のやりたいことをやり、他人の目を気にしないことを子どもたちにも伝えたい。今は、アーティスト、アイ・ウェイウェイの“ヒューマニティ”に関する作品にも興味があり、彼とタッグを組んで難民問題に貢献できたらとも考えています」

Profile

Heron Preston(ヘロン・プレストン)1983年サンフランシスコ生まれ。パーソンズ・スクール・オブ・デザインを経て、ナイキのデジタルプロデューサーとして活躍。カニエ・ウエストのクリエイティブ・コンサルタントを務めた後、2017年から「HERON PRESTON」を始動。

Translation: Nina Utashiro Edit:Yukino Takakura

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