二階堂ふみ、村上虹郎が初共演で恋人同士
「うたかたの恋」舞台裏インタビュー
若手演技派女優として個性的な魅力の女優・二階堂ふみと、新人ながら独特の雰囲気で存在感を放つ俳優・村上虹郎。「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」最新号誌上にて初共演し、恋人同士を演じてくれた二人。撮影現場の舞台裏スナップとともに送るWeb限定インタビュー。誌面では紹介しきれなかった撮影エピソードや二人の恋愛観とは…。舞台裏スナップもチェック!
(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2016年5月号掲載)
──恋というテーマはどこから?
F「いつか昔の雑誌で、男女がカップルの設定になっているフォトストーリーを目にしたことがあったんです。セルジュ・ゲンスブールとジェーン・バーキンの2ショットなどもそうですが、写真の中の二人がすごく素敵で、見ている方が思わず憧れてしまうことってありますよね。この企画もそんなふうに感じてもらえるページにできたらいいなと考えていました。いつまでもスクラップして取っておきたいと思ってもらえるようなページに」
村上虹郎(以下N)「僕はこのお話をいただいた時に、ふみさんのテンポに任せてとにかく楽しもうと思っていました。何しろ、年齢はもちろんですが、キャリアの面でも大先輩ですからね。実際に撮影は最後までスムーズ。個人的には二人が抱き合っているラストのカットが気に入っています。この企画に続いて、いつかは映画で共演ができたらいいですね」
F「そう、私たちって共演していそうで意外に機会がないんですよね。今日のように二人だと、単独の撮影とは違って、相手がいるからこその表現ができたようにも感じました。それに、ファッションも素敵でフェミニンな服が多かったから、100%女の子の気分を満喫できてうれしかったです」
映画の中の恋、リアルな恋
──役者として恋や愛を表現する機会もあると思いますが、実際の恋愛観は?
F「私にとって作品の中の恋愛は、カメラがまわっている時だけのものです。相手役を演じている役者さんとも、作品を共に作り上げる同士のような関係を築いているといった感じです。劇中ではものすごく情熱的な気持ちを持っていたとしても、カットの声がかかった瞬間に、何ていうか、まるでスイッチを押したように気持ちが切り替わります」
N「僕は10代なので、芝居で接するのはいわゆる等身大の若者の恋。だから素に近い演技で体当たりしてやってきました。そこに変化が生まれるとしたら、これからだと思う。映画、テレビ、舞台と、さまざまなフィールドに触れてみて、それぞれの場での見せ方があるんだと気がつき始めたところなんです。恋愛を恋愛らしく演じることも、この先あるかもしれないし」
──では、素の自分の恋愛はどんなふうに見ている?
N「うーん、どうだろう。あ、実はシャイです。数年前までは女の人とまともに話ができなかったくらい。そういうところがあるからか、近い距離にいる身内のような存在の人の前だと、身構えてしまうことがありますね。親友とか、彼女とかの前だと。相手が自分のことをよく知っているのが分かるから、本心を見透かされてしまいそうで。そんな部分もあるのだけれど、反対に人との距離がすごく近かったりする。時々、無意識のうちに近づいてしまっていて、『動物みたい』と言われたりもするし…。やけにオープンなところもあると自覚しています。意外だと言われるけれど、人の話を聞いてあげるほうが多いですしね」
──例えば彼女に対してだとしても?
N「そうですね。会話をベースにして、お互いを高め合える関係がいい。あとは許し合える関係。ロマンティックな恋人同士の気分もありつつ、そういうことが成立する関係がいいですね」
恋愛観を変えた映画作品とカップル
──憧れの恋愛映画はありますか?
N「映画なら、『パンチドランクラブ』かな? とは言っても実際のところ僕は、映画や理想の女性像を夢見るのではなく、リアルに出会った女性にときめきを抱いて、恋が始まるタイプだと思う。いいなと感じるのは、その人の笑顔が素敵だった時。あとは声、太もも……などでしょうか(笑)。自分との関係で重視するのは、決断や妥協をする時の落としどころが同じということ。この相性は、僕の恋愛にとってかなり重要なんです」
F「私は『クライ・ベイビー』が好きで、マイ・ベスト・ロマンスムービーと言ってもいいほど! 映画ではないけれど、先にも挙げたゲンスブール&バーキンも憧れの的。あんなふうに、二人の関係性が素敵な恋人たちに憧れてしまいます。荒木経惟さんと奥様の陽子さんも、写真からにじみ出ている二人の空気感に見入ってしまう。以前と違うのは、男性としてや異性としてよりも、ひとりの人間としての魅力に引き込まれて相手を好きになっているという感覚を大事にしたいです。あとは、恋愛のあり方を意識しなくなったし、相手に要求することもなくなってきていますね」
──何も求めない?
F「そうですね。恋愛ってどうしても『私がこれだけやったんだから、あなたも同じだけ返してよ』みたいな気持ちが生まれてしまうじゃないですか。それってつまりは、どちらかが実は妥協したり譲ったりしているということですよね。やっぱり、すべてを分かち合うのは無理だから。でも、その譲り合うっていう余裕が自分のなかにあったら? そこがスタートラインになったなら、いろんなことがラクになるし、関係もきっと楽しくなるはず。そう思えたんです。例えば、いろんなことを相手のペースに合わせたいと言うと、一見妥協しているように聞こえるかもしれないですが、自分自身は妥協とも感じていない。私は男の人を立てたいと思っていて。二人でいて、お互いが頑張っていない時が、すごく楽しいと感じるんです。つまり、ギブ&テイクすることへの欲求がなくなった時が、理想的な関係の始まりなのかもしれない。幸せな恋愛って、お互いに何も要求しなくなった瞬間に生まれていくんだろうなって、考えています」
Text:Subaru Kawachi
Edit:Masumi Sasaki