Fashion / Editor's Post
「Jil Sander」のキャンペーンヴィジュアルで知る、美しき日本
ゴールデンウィークを利用して、さまざまな場所へ旅した人も多いはず。未知なる土地はもちろん、何度も出かけた土地でも、必ず新たな発見をもたらしてくれるのが旅の醍醐味。今、海外の人々にとって、日本は人気のデスティネーションのようで、東京の街なかでもアジアのみならず各国の外国人に出会うようになりました。
世界から熱い視線を注がれる日本ということで、その影響を受けたジャポニスムなモードもちらほら見受けられますが、ヴィジュアル制作のスタッフの間で話題なのが、日本を舞台に撮影されたジル サンダー(Jil Sander)の2019SSキャンペーンヴィジュアルです。
フォトグラファーはマリオ・ソレンティ。クリエイティブ・ディレクターのルーシー&ルーク・メイヤーによる、誠実でありながら温かみのあるミニマムなデザインを、ごく普通の小さな駅のホームや、ひなびた漁村、水溜りのある通学路……日本のあちこちに未だ存在しそうな海沿いの街(実際は島根県松江市、鳥取県周辺)を舞台にエモーショナルに捉えています。
見慣れた土地ゆえか、はたまた海外への憧れが強すぎるからか、私たちはつい「日本は撮影する場所がない」と嘆くばかり。このストーリーを見て、嫉妬と反省が入り混じった気持ちになったのも事実です。マリオ・ソレンティが捉えたのは、ディテールではなく本質。このロードトリップストーリーで、日本の魅力を再発見してほしいと思います。
Profile
古泉洋子Hiroko Koizumi
コントリビューティング・シニア・ファッション・エディター。『Harper's BAZAAR』『ELLE Japon』などのモード誌から女性誌、富裕層向け雑誌まで幅広い媒体での編集経験を持つ。『NumeroTOKYO』には2017年秋よりファッション・エディトリアル・ディレクターとして参加した後、2020年4月からフリーランスとしての個人発信を強め、本誌ではファッションを読み解く連載「読むモード」を寄稿。広告のファッションヴィジュアルのディレクションも行う。著書に『この服でもう一度輝く』(講談社)など。イタリアと育った街、金沢をこよなく愛する。
Instagram: @hiroko_giovanna_koizumi
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