
3月8日まで開催されているガラス作家、佐々木類さんの個展「不在の記憶」のオープニングに伺いました。東京での開催は4年ぶりとか。以前の作品展示や、新宿の東急歌舞伎町タワーのエントランスの作品などでファンになった人も多いと耳にします。
今回の個展の場所は2023年に西麻布にオープンした、エイベックス・クリエイター・エージェンシー運営の、アートを軸にし音楽などカルチャーがクロスする空間「ウォール オルタナティブ」。日本では珍しい夜6時からオープンするギャラリーで、バーも併設しています。
金沢の魅力をお伝えする仕事で、以前佐々木さんが制作を行う金沢の工房に取材で伺ったこともあり、新たな作品を楽しみにしていました。この日はちょうど夕方から夜へ移ろう時間帯だったので、自然光が入るギャラリーが徐々に暗くなり、そこに光を受けて浮かび上がる新作がなんともエモーショナル!
佐々木さんの代表作は、近隣に何気なく生えている雑草や野草など植物を採取し、ガラスのなかに焼きつけることで白い灰として浮かび上がってくる作品。そこには大小さまざまな気泡や多彩な色の土など植物が放つ生命力と、生きてきた土地の記憶が可視化されています。

普段は自然豊かな金沢で植物を採取し創作されていますが、今回は東京の都心である西麻布、六本木、青山。ギャラリースタッフを伴い、しかも年末年始の枯れた冬場に植物を採取。新作《植物の記憶/都市観察》では普段都会で生活してると、あまり意識しない道端の植物のたくましい生命力が作品の中に表現されています。
「今回の新作ではこの地域の土の色は意外に赤く、金沢の植物、また同じ都心でも以前歌舞伎町で収集した植物には見られなかった人工的かつ劇的な泡が特徴です」と佐々木さん。トークショーでも「人の動きが止まったコロナ禍に採取した植物は、それ以前に比べ、大きな気泡が生まれていました」と話されていたのが印象的でした。

ギャラリーには採集した場所のマップも展示。またギャラリーと佐々木さんをつないだ、アートキュレーターの故山峰潤也氏が寄稿予定だったスペースは空白に。無機的な標本のような記録の側面とは相反する、小さな片隅に視線を向ける姿勢に生を慈しむロマンスを感じます。
会場にはこの他、これまでの作品《忘れじの庭》《土地の記憶》や、とある家のコーナーをたどった《The Corner/ある家》も展示。併設のバーでは佐々木さんがセレクションした金沢や北陸のワインやドリンク、ペアリングのフードも提供。仕事帰りにふらりとアートを鑑賞しながらお酒を傾ける。そんな豊かな時間が過ごせます。

佐々木類「不在の記憶」
会期/2025年2月14日(金)〜3月8日(土)
会場/WALL_alternative(ウォール オルタナティブ)
住所/東京都西麻布4-2-4 1F
開館時間/18:00〜24:00
休館日/日
※入場無料、予約不要。ドリンク&フードはキャッシュレス決済。
URL/avex.jp/wall
Profile
Instagram: @hiroko_giovanna_koizumi