湘南の穴場で大人のずらし旅 【#私の土曜日16:00】 | Numero TOKYO
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湘南の穴場で大人のずらし旅 【#私の土曜日16:00】

ファッションエディターの仕事って、好きなことを仕事にしている関係上、オンオフの切り替えが難しい。その不自由さをポジティブに転換し、イタリアのリゾート⁈ と錯覚できる穴場のスポットで週末のひととき、過ごしてみました。

とある撮影のロケハン=ロケ場所の下見に、急遽出かけざるを得ない状況に。しかもコロナ禍、の上に週末。スタッフにしても、友達にしても、誘うには急すぎ、今はリスク問題も……。が、ここで行くか行かないかの判断いかんで、写真の仕上がりに影響が出ることは過去の経験で身に染みています。ということで、単独にて横須賀の佐島へ。赤い電車、京急線で逗子葉山駅、そこから路線バスを乗り継ぎ、新幹線なら名古屋に着いてるね、くらいの時間をかけて。 いかにも湘南にいそうな、俳優の渡辺裕之似の焼け肌のイケおじ担当者との打ち合わせを無事終え、素晴らしい晴天のなか、潮風とサンセットという大好物を堪能せずに帰るわけにはいきません。仕事を業務に終わらせない、1回の動きを3倍に、欲深き信条です。 ロケハン場所近くのSNSでチェックしていた洒落た店で、アペリティーボと決め込む算段です。アペリディーボとはイタリア人が夕方からおしゃべりして飲み始めるための口実、いえ文化です。

さて目的地、AzzurrA Mare SAJIMAに到着。こちらは海沿いのリゾート地らしい白を基調としたクリーンなイタリアンなのですが、海を眺めつつ一杯に最適な広いテラス席があるんです。湘南しらすのペペロンチーノ、クレーシャ添えに、冷えた白ワインを一杯。この連載タイトルを地でいく、まさに土曜日16:00。陽が傾きかけたひとときに、海を前に何も考えずまったりする小さな幸せ。美しい夕日に恵まれた裏日本側生まれゆえか、夕景研究家にもなれるんじゃ?というくらい、日本はもとよりリスボン、チンクアテッレ、スリランカなどなど、世界各地でエモーショナルなサンセットを求めて旅してきました。オミクロンなるもののせいで食事会のキャンセルも続き、海外も当分お預けと、少し気分が下がり気味だったので、開放感もあって自分内満足度高し!

前出のイケおじから、佐島は地タコとイワシが美味しいとの地元情報もしっかり入手し、帰り際にピッチピチの魚も購入。生しらすが解禁になる3月中旬も良さそうです。湘南というと七里ヶ浜、葉山あたりが鉄板で、シーズンともなれば混み混み。ちょっとメインストリームを外した佐島、穴場です。しかもソロ活の基本、ハンパ時間の行動での大人のずらし旅、推奨したいです。

きっかけは仕事、でも結果、大人のショートトリップ。卵が先か鶏が先か、なんてまあどっちでもいいです。エディターはこういう“ついで”を楽しむ心意気が、仕事の循環につながります。帰りの道中、この記事まで書き上げてコンプリート!

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Profile

古泉洋子Hiroko Koizumi コントリビューティング・シニア・ファッション・エディター。『Harper's BAZAAR』『ELLE Japon』などのモード誌から女性誌、富裕層向け雑誌まで幅広い媒体での編集経験を持つ。『NumeroTOKYO』には2017年秋よりファッション・エディトリアル・ディレクターとして参加した後、2020年4月からフリーランスとしての個人発信を強め、本誌ではファッションを読み解く連載「読むモード」を寄稿。広告のファッションヴィジュアルのディレクションも行う。著書に『この服でもう一度輝く』(講談社)など。イタリアと育った街、金沢をこよなく愛する。
Instagram: @hiroko_giovanna_koizumi

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