「JIL SANDER」を捉えた親密な写真に癒される | Numero TOKYO
Fashion / Editor's Post

「JIL SANDER」を捉えた親密な写真に癒される

ブランドが発信するヴィジュアルには、それぞれのデザイナーの本質が映し出されるもの。ルーシー&ルーク・メイヤーによる「JIL SANDER」2020AWキャンペーンイメージは思いがけない状況に置かれている今、心に響くつながりが感じられます。

元々個人的に好きなブランドなのですが、ルーシー&ルーク・メイヤーが「JIL SANDER」を手がけるようになって、以前は人を寄せ付けない、緊張感のある“ミニマム”として捉えられてきたジル サンダー像が変化したように感じました。作り手の完璧を提示するのではなく、着る人に寄り添っていることを大切にし、本質を際立たせたシンプルでエモーショナルな表現で、どこか温かみが生まれたからかもしれません。


ロックダウン中に撮影された2020AWのキャンペーンヴィジュアルは、そのことを端的に伝えています。親交の深いマリオ・ソレンティ、アンダース・エドストローム、オリヴィエ・ケルヴェルヌ、スティーブン・キッド、クリス・ローズ、リナ・シェイニウスという6名の写真家によって、モデルではなく家族や友人、ペットを被写体に撮影されました。

今なお私たちを悩ませるコロナによって、奇しくも気づかされた人間らしさ、優しさ、信頼、リスペクトの大切さ……そんな人として当たり前に持つべきものをジル サンダー を通して伝えてくれています。これはルーシー&ルーク・メイヤーが手掛ける初めてのコラボレーションプロジェクトの一環で、後に書籍として出版される予定だそう。先ほど出版され話題となったルーシー&ルーク・メイヤーのキュレーションによる「A Magazine」同様、要チェックです。

Profile

古泉洋子Hiroko Koizumi コントリビューティング・シニア・ファッション・エディター。『Harper's BAZAAR』『ELLE Japon』などのモード誌から女性誌、富裕層向け雑誌まで幅広い媒体での編集経験を持つ。『NumeroTOKYO』には2017年秋よりファッション・エディトリアル・ディレクターとして参加した後、2020年4月からフリーランスとしての個人発信を強め、本誌ではファッションを読み解く連載「読むモード」を寄稿。広告のファッションヴィジュアルのディレクションも行う。著書に『この服でもう一度輝く』(講談社)など。イタリアと育った街、金沢をこよなく愛する。
Instagram: @hiroko_giovanna_koizumi

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