ノワールな食を堪能できるレストラン3選
食通のゲストセレクターを迎え、いま注目の“食の世界”をおすすめのレストランとともに紹介するフード連載。Vol.4は、食と農を専門にジャーナリストとして活躍する柿本礼子が、バラエティーに富んだ“ノワールな食”を味わえるおすすめのレストランをピックアップ。(「ヌメロ・トウキョウ」2018年12月号掲載)
秋の注目。さまざまな黒の食材、黒のひと皿。
ノワール。フランス語で「黒」を意味する言葉が今回のテーマだ。黒い食材といえば、黒胡麻、海苔、黒豆、黒トリュフ、黒酢など、実はあまたある。今回は温故知新な「ノワール」を紹介しよう。
まずはトウモロコシの黒。「Los Tacos Azules」ではメキシコ南部オアハカ州から在来種のトウモロコシを輸入し、店内で製粉してタコスを作る。これまで味わったことのない新しさと、どこか懐かしい味を兼ね備えた南米の食材や料理は、世界のガストロノミーで注目の存在だ。
次に中国料理、イカ墨の黒。「古月 新宿」は中国の食養生の考えを取り入れた料理を提供している。黒い食材は「腎」を補い、冷えた臓器を温めるとされ、これからの時季に食べたい一品。健康志向が高まるなか、美味と健康のバランスも研究が盛んだ。
そしてフランス伝統料理「ブーダンノワール」。通常は豚の血を使うが、東京のトップシェフたちが使うジビエを取り扱う「ELEZO」が営むレストランでは、新鮮なエゾジカの血を使う。クリアでありながら深い旨味を感じる一品に、あなたのブーダンノワールの概念がアップデートされることだろう。
Los Tacos Azules(ロス・タコス・アスーレス)
店主のマルコ・ガルシアさんはメキシコで3年間、同名のタコス店を営業したのち、2018年9月29日に東京に移転した。多様性をテーマに、藍、黒、褐色、黄色など彩り豊かな在来種のコーンを揃える。タコス用の製粉機があるのも日本ではここだけだろう。挽きたて、焼きたてのトルティーヤ(タコスの皮)は南米の大地の豊かな香りが広がり、まるで炊きたてのご飯のようだ。
タコスの奥深さ、南米の食材使い、食べたことのない味に舌が踊り出すよう。ほっこりと優しい味わいながら刺激的な食体験となるはずだ。
住所/東京都世田谷区上馬1-17-9
TEL/03-5787-6990
営業時間/お任せコース(予約のみ):水〜土 18:00〜23:00
朝タコス(予約不要):土 10:00〜14:00、日 10:00〜16:00
URL/www.lostacosazules.jp
ELEZO HOUSE(エレゾ ハウス)
秋冬に食べたくなるのは味わい深くヘルシーなジビエ。狩猟から調理まで食肉のAtoZを自ら手がける当店は、上質でピュアなジビエ料理を誇る紹介制レストラン。エゾジカの血と玉葱、生クリームを火にかけて作る「テリーヌ・ブーダン・ポム」は、滑らかな口どけと透明感のある甘さがまるでショコラデザートのよう。ワイン片手に秋の余韻をぜひ。
営業時間/ランチは12:00、ディナーは19:00に一斉スタート
定休日/日〜水のランチ・ディナーは不定休
URL/elezo.com
※住所とTELは非公開「Numéro TOKYOを読んだ」の一言を添えて公式HPからご予約を。
古月 新宿
高級栄養薬膳師の資格を持つ前田克紀シェフが腕を振るう薬膳がベースの中国料理を味わえる「古月 新宿」。古代中国の陰陽五行説によると、冬の色は黒で、臓器は「腎」。子宮の血流に良とされるイカが主役の「アオリイカのチリソース 黒造」。「実は中華のエビチリには有頭で殻付きを使うのが基本。応用して墨や内臓も使ったチリソースに仕立てました」
住所/東京都新宿区新宿1-5-5 御苑フラトー2F
TEL/03-3341-5204
営業時間/11:30〜14:00、17:30〜21:00(L.O.)
定休日/日のディナー、月、ほか月1、2日不定休
UrL/kogetu-shinjuku.jimdo.com
Photos: Yufuko Uehara(Los Tacos Azules, Akiko Mizuno Text:Reiko Kakimoto(Los Tacos Azules), Nao Kadokami Edit&Text:Yuuka Shiomi