ファッション界に見る共感力 | Numero TOKYO
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ファッション界に見る共感力

ファッショニスタの手に必ず握り締められているスマートフォン。最新コレクションの模様をアップし、数千、数万のフォルワーから「いいね♥」を浴びる。共感を得ることが、社会を動かす大きな要因となっている現代。ファッションシーンにおいて共感力を高めるポイントとは何か?ファッションジャーナリスト、マスイユウが分析する。(「ヌメロ・トウキョウ」2018年7・8月合併号掲載)

アイリーン・キム
アイリーン・キム

アジア系インフルエンサーに学ぶ共感力

欧米人が中心だったファッション界において、風穴を開けた存在といえばブロガーからファッションジャーナリストへと転身したスージーバブルこと、スージー・ロウ。急速に多様化が進んだ現代、アジア人やインフルエンサーはファッションシーンで飛躍的に増えている。100万人以上のフォロワーを集めるアイリーン・キムを始め、リアルな日常を見せ、人間味を感じさせる彼女たちはブランドからの支持も厚い。

Irene Kim

ファッショナブルなのに自然体なアイリーン・キム

韓国系アメリカ人の“IT”ガールはカラフルなヘアとトレンドコンシャスなスタイルが人気で、ラグジュアリーブランドのショーやイベントに引っ張りだこ。数年前に韓国に移り住んだ彼女は、モデルもこなしマルチに活躍中だ。美容整形大国におりながらも反対姿勢を示し、簡単ナチュラルメイクアップのコツをあげるなどリアルな感じが共感を受けている。最近では次世代のファッションプレーヤーとして秋元梢や森星とともに中国『グラッツィア』誌の9周年号の表紙を飾った。@ireneisgood

Tina Leung

飾らず、人間味あふれる姿が話題のティナ・レオン

香港生まれ、アメリカの育ちのスタイリスト/ブロガーは、ラグジュアリーブランドのお気に入りの一人。フロントローやファッションパーティなどグラマラスなポストの一方で、インスタグラムには親戚の子どもが登場し、夜食のジャンクフードを頬張る姿を見せるなど実に人間的。昨年にはそんなリアルさに目をつけたロンドンベースのサングラスブランド「プリズム」からコラボを発表。@tinaleung

Tiffany Hsu

ミックス&マッチでリアルに着こなすティファニー・スー

ストリートスタイルが生んだバイヤー系インフルエンサー。台湾の出身でセントラルセントマーティンズ美術学校でデザインを学び、「レイン・クロフォード」や「セルフリッジズ」を経て、現在はオンラインの「MyTher esa. com」のバイヤーを務める。ゴスやロック、フェティッシュを感じさせるスイート&ハードなファッションが今の気分にぴったり。フォトグラファーから絶大な支持を受けている。@handinfire

ニューフェイスが発信

多様化が進んだことで、新しいスターが次々に生まれる現代。大物スターを両親に持つなど強烈なバックグラウンドを持つ2世セレブが、どんな新しいことを発信してくれるのか、世間は楽しみで仕方がない。またさまざまな人種、性別、体型、さらに人ではないインフルエンサーまでも登場。独自の観点から発せられるコンテンツにこそ、共感を呼ぶポイントが秘められているようだ。

Selah Marley

音楽界のサラブレッド、セラ・マーレーがファッション界に!

これまでも2世セレブ達がファッション業界を騒がせてきたが、18年秋冬のパリコレ会場を魅了したのは、R&Bシンガーのローリン・ヒルの娘セラだった。その姿はかつて日本で大ブームになった映画『天使にラブソングを2』で、美声を披露した母に瓜二つ。今流行りの90年代ムードを表現するのにふさわしい彼女は、フロントローだけでなく、有名誌にモデルとしても登場している。@selah

Miquela

新しい流れを作る!? ヴァーチャルアイコン、ミケーラ

今最注目のインフルエンサーはもはや人間ではない。そばかすがかわいいミックスレースの女の子Lil MiguelaことMiguela Sousaはヴァーチャル。実際の場所や人物と最新技術を使って組み合わせておりリアルかと見紛うほど。スタイルだけでなく多人種や多文化社会への理解とサポートを示している姿勢も、多くの共感を経ている。ブランドとのコラボの他アーティストとして音楽も発表。@lilmiquela

時代が求める共感力とは

Text:Yu Masui  Edit:Etsuko Soeda

Profile

マスイユウ(Yu Masui) 1979年、静岡県浜松市出身。2000年に英国へ渡りLondon College of Fashionへ留学。在学中にセレクトショップThe Pineal Eye Boutique Londonでバイイングやビジュアルマーチャンダイジングに携わる。一方でフリーランスのバイヤーとしても国内外で活躍。その後は、ファッションジャーナリストに転身し、現在は「繊研新聞」ほか女性誌などにレギュラーで執筆。バイヤー時代の経験を生かしたリポートやトレンドを見いだす審美眼はファッション界からも強い支持を集めている。

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