“デニム大好き”というテーマですが、そもそもデニムが嫌いな人っているのかな。
2022年2月26日(土)発売の『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2022年4月号に寄せて。編集長・田中杏子からのエディターズレター。
Numéro TOKYOのYouTube企画にてデニムのスタイリングを披露した際、私のデニム遍歴が多岐にわたっていることに気づかされました。一緒に企画を盛り上げてくれたコントリビューティング・ファッションエディターの岸本佳子が色やシェードが異なる同じデザインのデニムパンツを何本も並べていたのに比べ、私はといえばロンスカ、タイトスカート、キュロットパンツ、テイパードデニム、ボーイフレンド、スキニー、バギーなど多様なフォルムとサイズ感のものをずらりと並べ、そのどれもをいまだに愛用中。デニム好きな私のマイ・デニム変遷をさかのぼってみたいと思います。
最初にオシャレアイテムとしてデニムを手にしたのは高校1年生の頃。ちょうど大阪には古着ブームがやって来ていて、オシャレな人はLEVI’S®の501XXを選ぶという傾向がありました。まだまだデニム知識はひよっこながら、しっかりと一本一本作られているレッドタブのLEVI’S®501や505がメインであると教えられました(509などの似て非なるオレンジタブは大量生産が叶うように2本針ミシンで製作されていました)。またタブに記載されているLEVI’S®の文字が全て大文字(ビッグE)だったのは1971年までで、それ以降はLevi’s®と小文字に変わるので大文字の貴重さが際立ちました。さらには、裾部分を裏返すと現れるアウトシームが赤耳のデニム製造が86年に終了したこともあり、501®を選ぶならひっくり返してアウトシームを確認すべきとも教えられ、あまりよくわかっていないながらも裏返したりタブを確認したりしてデニム通を装っていました。そうやって古着を纒い、大阪ミナミの周防町界隈をウロウロしていた若かりし頃の私が懐かしいです。
Numéro TOKYOのYouTube企画杏子ときっしーの「今日、何着んの?」Vol.2 デニム編でのひとコマ。デニムを洗うか洗わないかにも話題が及びました。私はやっぱり洗う派です!
80年代後半には3Gブーム(Giorgio Armani、Gianfranco Ferre、Gianni Versaceの三大デザイナーの頭文字を取ったイタリアブームの総称)へと舵が切られ、世の中はイタリアンファッションの潮流が押し寄せ、アメリカンなデニムは影を潜め、私のデニム好きはいったん陰りを見せるわけです(実際にイタリア時代の写真を見てもあまりデニムスタイルの写真がないのです)。LEVI’S®はある意味泥くさい印象で、イタリアで当時デニムといえばFiorucciやカルバン・クラインなどのデザイナーズ・デニムに完全軍配が揚がっていました。まさにブランドのオシャレデニムです。さらに90年代のミニマリズムの頃にはA.P.C.の深い色のローデニムを愛用し(現在も愛用中のロンスカはまさに当時のA.P.C.のものです)、そのあとはDolce&GabbanaやDiesel、日本ではHysteric Glamourなどのデニムを愛用しながら、最近ではCelineのキュロットやSTUDIO R330のスキニー、minedenimのボーイフレンドなどと幅広く楽しみながら現在に至っています。ところでデニムを一本生み出すのに水がどのぐらい必要か、汚染水がどのぐらい発生するかといった環境問題にも必ず触れなくてはいけません。企業努力を怠らないデニムブランドも多く存在し、水を汚さない、再生させるなど最新技術も生まれています(本誌p.60〜)。選択の際には必ず背景にも目を通してくださいね。
デニムの良いところはその時代の空気を即取り入れることができるという点。きれいめが流行ればきれいめな、ダメージが流行ればダメージが、フレンチカジュアル、アメリカンヴィンテージ、ボーイフレンドなどすべてのスタイルを表現できるデニムは、オシャレを楽しむ上で欠かせないアイテムとなっています。現在はウエストが高めで全体にボテっとした重た目のデニムに目がない私ですので、昨年の秋冬に購入したLoeweとLivingtonのデニムをヘビーユーズしています(本誌p.82の私物ページでも紹介しています)。毎日欠かさず楽しめるデニムです。数多ある素敵なデニムの中から、あなただけの1点を見つけてマイ・スタイルを完成させてみませんか。さあ、デニムの世界へようこそ!
Numéro TOKYO編集長 田中杏子
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