ボードスポーツが、カルチャー発信する理由 | Numero TOKYO
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ボードスポーツが、カルチャー発信する理由

2021年10月28日(木)発売の『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2021年12月号に寄せて。編集長・田中杏子からのエディターズレター。

(左)特別版 ¥730(中)西村碧莉が表紙の通常版 ¥730(右)TOMORROW X TOGETHERが表紙&別冊付録付きの特装版 ¥980
(左)特別版 ¥730(中)西村碧莉が表紙の通常版 ¥730(右)TOMORROW X TOGETHERが表紙&別冊付録付きの特装版 ¥980

賛否両論あるなかで開催された東京2020オリンピック・パラリンピックでしたが、実際のところ、開催中は多くの競技に魅了されました。最も印象的だったのはオリンピックの新種目となったスケートボードとサーフィンです。10代の頃にテストライダーを務めたサーフィンには格別な思いを持って注視していましたが、スケートボードは新しい可能性を感じた種目でした。あの和気藹々(わきあいあい)とした大会風景、ライバル同士が肩を抱き合い励まし合うなんて、オリンピック競技のどの種目でも見かけたことがありません。また、キャリアを重ねるほどに技が磨かれていく半面、体が出来上がっていない若い世代こそ四肢の柔軟性が生かされ、けがを恐れることなく難易度の高い技に挑めるようで、結果的に若い選手たちがメダリストに輝きました。そんななか、世界ランクはトップクラスで優勝候補ともいわれた西村碧莉さんに目が釘付けとなりました。白いシャツに白いスラックスパンツ、スニーカーもキャップも白で固め、サラサラとした金髪をなびかせながら高度な技に挑む姿に、凛とした美しさと強さを感じずにはいられませんでした。惜しくもメダル獲得にこそ至りませんでしたが、8位入賞の西村碧莉さんはスケボー界では「カリスマ」的存在として、日本の女子ボーダーを引っ張る存在だそうで、目を引く圧倒感には理由があるのだとうなずけました。彼女に近づきたい!という思いと、サーフィンやスケートボードが発するボードカルチャーの魅力はいったい何なのかを知りたくて今号の特集に至りました。

最近購入したKAWSのデッキ(右)と、かなり前に入手したChapman Brothers for Supremeのデッキ。どちらも滑るというより見て楽しんでいます!
最近購入したKAWSのデッキ(右)と、かなり前に入手したChapman Brothers for Supremeのデッキ。どちらも滑るというより見て楽しんでいます!

大会後の練習中に右膝をけがするという難に見舞われた西村碧莉さんですが、小誌の撮影に快く協力してくださいました。初めてのファッション撮影にご本人もとても楽しんでくださったようで素晴らしい笑顔とファッションを着こなす姿が印象的です。等身大の言葉で今の心境やこれからについてもお話が聞けましたので、ぜひご一読くださいませ(本誌p.84〜)。スポーツや物、事がそれだけにとどまらず、音楽やアート、ファッションへと広がりを見せ、それらを楽しむ人が増えてカルチャーとして発展していきます。要するにスケボーはしないけどスケボーカルチャーは好きとか、サーフィンはしないけどサーフ音楽は聴いてるよ〜といった具合です。このボードカルチャーの引力にハマり、それがなぜなのかを探りたく、進めていく過程で理由が見えてきました。スケボーカルチャーの魅力については、実際にがっつり魅了されたという野村訓市さんにお話を伺いました(本誌p.102〜)。

スケボーカルチャーと相性がいいのは、ストリート発信で世の中に広がるグラフィティアートや現代アートの世界です。「スケートボードとアートの関係」(本誌p.94〜)でインタビューをしたHaroshiさんの言葉にとてもわかりやすい一言がありました。「中学・高校と部活に入っていて、ルールや上下関係に嫌気が差す一方、スケボーの自由さに心惹かれました。夜中の公園で『一緒にやろうよ』と声をかけて、競い合うでもなく純粋に楽しむ」スケボーについてのくだりですが、これがこのスポーツの原点なのだと思います。ストリート発信で自由に楽しめるスポーツ。行けば、ほかのボーダーと仲良くなれるスポーツ。まさにバイブスが合うよね〜という感覚で、滑らなくてもカルチャーとして楽しめるスポーツ。スケートボードやサーフィンは、今っぽさが詰まったスポーツでありカルチャーなのです。

10代の頃にサーフィンに明け暮れた私ですら、けがが怖くてライディングはしませんが、ボードカルチャーには心惹かれています。これからも注目したいスポーツです。いや、体幹を鍛えて本気で滑ってみようかな〜!

Numéro TOKYO編集長 田中杏子

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