もっとも輝いている人たちを知ることで、 “喜び”の本質が見えてきました。 | Numero TOKYO
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もっとも輝いている人たちを知ることで、 “喜び”の本質が見えてきました。

2020年10月28日(月)発売の『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年12月号に寄せて。編集長・田中杏子からのエディターズ レター。

“喜び”こそ心の糧。喜びを日々味わいながら生きていければ、こんなに幸せなことってないですよね。そんな“喜び”について考えてみたいと思います。輝いている人たちが昨今の暗雲立ち込めるこの社会でどのような精神回路で過ごし、喜びを生み出し、また享受しているのか。嫌なことだってたくさんあるはずです。人間ですから。起きてしまった出来事にどう向き合っているのか、その秘訣も知りたい思いでした。 ラブコールを送り続け、ここにきて、ソロデビュー10周年という大切なタームを迎える星野源さんを取材させていただくことが決まりました。星野さんは多くの人に喜びを与え続ける人です。この10年の間、老若男女がじわじわ、じわじわと星野カラーに染まり、ファンが倍々に増えています。彼の魅力は一体どこにあるのでしょう。ニュートラルな感覚で日々を過ごしているように見え(ご本人がどうかはさておき、そう見えるのもまた才能です)、多くの人の心をかっさらう理由が知りたくて、そして少しでも彼に近づきたくて、9月半ば、待ちに待った取材日を迎えました。 星野さんは想像していたよりもずっと落ち着いた雰囲気で、ラジオで聴く声でもなく、音楽家としてや俳優としてテレビに映る星野源でもない、新しい星野源が目の前に現れました。もちろんオーラは想像以上。撮影中、こちらのリクエストや要望にただ応えるだけではなく、ディテールを理解し、想像以上の答えを瞬時に返す敏腕の人です。カッコいい仕草、クールな表情、お茶目でいたずらっぽい瞳、クルクルと表情が変わる彼の魅力、スイッチが入った瞬間に奥底から湧き出る身体表現に目が奪われっ放しでした。2013年から放映されているNHK『LIFE!~人生に捧げるコント~』に出演する星野さんが大好きで、いつも抱腹絶倒をもたらしてくれる役について「お笑いの引き出しもお持ちですよね」と投げかけたら、「あれは役者としてやっていて、僕はお笑いをやってるんじゃないんです」と想像もしていなかった言葉に驚くと同時に、星野源がなぜこんなに多才で、私たちに“喜び”を与え続けられる存在なのか少しだけつかめたような気がしました。インタビューでも「自分自身の思い(=エゴ)をなくすことが一番幸せで、環境の中に自分が溶け込んでいくことが気持ちよく、そうなることで皆に届けられる」と話しているのですが、目の前のものに没頭し全身全霊で表現する。それを繰り返した10年間、「自意識をなくし、ただ楽しい、ただ悲しい、ただ気持ちいいでいいんじゃないかな」という域に達し、多くの人に喜びを与えられる国民的スターになったのだと気づかされました。その日の深夜、就寝準備も整えお酒を飲みながらラジオをつけてみると、ラジオの向こうにはいつもの星野源が、明け方までそのテンションを切らすことなくトークを繰り広げていました。多才で多彩。今回の取材では星野さんの素顔の数%しかつかめなかったかもしれないけれど、まだまだ知らない星野源が潜んでいるようで、さらにやみつきになる感覚を覚えました。いや~、天才的な人ってすごいです。

しなやかに与えられたものを昇華して生きている田中みな実さんも喜びを満喫し、喜びを人に与えて生きている人です。仕事の場を局アナからフリーへ、そしてモデルや女優という新しい分野でとにかく絶好調に跳ね続けています。「求められる場所で輝けばいい」という、そのリラックスしたしなやかな思いが、今の田中みな実をつくり、多くの人に勇気を与えているのです。人を楽しませる人はエゴをなくすことで喜びを生み出せるのですね。

まったく違うお二人です。でも輝いている人は、言葉は違っても、自分の感覚に素直に柔軟に向き合う術を見つけているようです。喜びの本質とは、自分本位に発信したり受信したりすることではなく、自然体のまま自分のエゴをなくしていくことから生まれるのだということを感じた取材でした。

最後に、女性として喜びを全身で感じて、心身ともに気持ちよく過ごすためのフェムテックについても取材しています。今号をぜひお楽しみください。

Numéro TOKYO編集長 田中杏子

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Profile

田中杏子Ako Tanaka 編集長。ミラノに渡りファッションを学んだ後、雑誌や広告に携わる。帰国後はフリーのスタイリストとして『ELLE japon』『流行通信』などで編集、スタイリングに従事し『VOGUE JAPAN』の創刊メンバーとしてプロジェクトの立ち上げに参加。紙面でのスタイリングのほか広告キャンペーンのファッション・ディレクター、TV番組への出演など活動の幅を広げる。2005年『Numéro TOKYO』編集長に就任。著書に『AKO’S FASHION BOOK』(KKベストセラーズ社)がある。
Twitter: @akotanaka Instagram: @akoakotanaka

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