やはり、答えはクリエイターの中にありました。 | Numero TOKYO
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やはり、答えはクリエイターの中にありました。

2020年9月28日(月)発売の『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年11月号に寄せて。編集長・田中杏子からのエディターズ レター。

11月号のカバーは2種類あります!
11月号のカバーは2種類あります!
これから、新しい時代へと入っていきます。今までの当たり前がガラリと変わる予感がします。本格的に新しい時代がやってくるそうですが、パンデミック後をより良く生きるために、私たちがいま準備できることって何なのでしょうか。 「芸術家は痛みや過酷な出来事を芸術に変えることができる。それによって素晴らしい芸術が生まれることもある。そう思うことで、僕はここまで生きることができた」── 今号の特装版の表紙を飾ってくださったLAで活動を続けるYOSHIKIさんの言葉です。時代に敏感なクリエイター、アーティスト、ミュージシャンはパンデミック後をどう生きようとしているのか。ずっと気になっていることをLAとつながるホットラインでYOSHIKIさんに投げかけてみました。「当たり前って何なのだろう? それよりも一瞬一瞬が奇跡なのだと思っています」。この言葉を聞いて、パンデミック前の生活が当たり前の日々だと思い込んでいた私の考えこそが浅はかで、奢りなのだと気づかされました。「アーティストは足を止めてはいけない」と命を削りながら表現者であり続けるYOSHIKIさんの姿は、多くの人を救っているのだと胸が熱くなりました。また「“ありがとう”と言われた瞬間、自分は生きている価値があると思い始めた」──救うことで救われているという思いに、人としての大きさを感じずにはいられませんでした。本誌だけに語ったスペシャル・ロングインタビューをぜひご一読ください。

25歳にして一躍スターダムにのし上がったあいみょんの言葉からも、クリエイターが見ている景色を感じることができました。「人生は満たされ続けても面白くない。世の中は平和であってほしいけれど、自分を混乱させるような何かが欲しい。それによって私は新しいものを生み出すからって思っています」と等身大の言葉で語ってくださいました。表現の場を持つクリエイターにとって“パンデミック後だから”という違いはないようです。常に“ 当たり前”なんてなく、すべての出来事をモノづくりのエネルギーに変えようという姿勢だけがあるのだと感じました。

私たちにとっても当たり前の日常は「ない」ということです。一瞬一瞬が奇跡だと思うと、毎日がキラキラして見えてきます。実は毎朝、瞑想しながらお祈りする言葉があります。「今日一日、家族や友人、スタッフや知人、すべての人が事件事故天災に巻き込まれることなく、笑顔で過ごすことができますように」。ずっと何年も唱えているのですが、何事も起きない平穏な一日こそが奇跡であるということに気づかされます。

痛みを表現に変えられるクリエイターは強いです。でも痛みなんて誰も欲しいわけではありません。ただ、痛みを痛みと捉えず、モノを生み出すチャンスだと胸の奥で切り替える、ただそれだけです。クリエイターの中に、その答えはありました。

Numéro TOKYO編集長 田中杏子

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Profile

田中杏子Ako Tanaka 編集長。ミラノに渡りファッションを学んだ後、雑誌や広告に携わる。帰国後はフリーのスタイリストとして『ELLE japon』『流行通信』などで編集、スタイリングに従事し『VOGUE JAPAN』の創刊メンバーとしてプロジェクトの立ち上げに参加。紙面でのスタイリングのほか広告キャンペーンのファッション・ディレクター、TV番組への出演など活動の幅を広げる。2005年『Numéro TOKYO』編集長に就任。著書に『AKO’S FASHION BOOK』(KKベストセラーズ社)がある。
Twitter: @akotanaka Instagram: @akoakotanaka

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