楽園スイッチを見つけて、ストレスフリーな人生を!
2020年2月28日(金)発売の『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年4月号に寄せて。編集長・田中杏子からのエディターズ レター。
去る10月(2019年)に行われたパリコレクションで、「あぁ、楽園に行きたいな〜」と感じたのがそもそもの発端でした。キャットウォークに登場するルックは、ボタニカル柄や大きなフラワー柄、動物モチーフやサファリ気分を感じるものまで、母なる大地礼賛!と声をあげたくなるものばかり。きわめつけは地球環境保全やエシカル、サステナブルな服作りの第一人者であるステラ・マッカートニー(Stella McCartney)のショー会場でした。
会場はいつもと同じオペラ座のガルニエ。あの荘厳な装飾が施された壁にプロジェクション・マッピングよろしくカラフルに彩られた映像が音に合わせて揺れていて、近づいてよく見ると、動物たちが交尾をしている姿ではないですか。それは馬、カバ、象、キリン、クマ、鳥、カメ、アルマジロまで生きとし生けるすべてのものたちの自然の形、営みの姿でした。リズミカルに動くその姿は恥ずかしいというよりもむしろ純粋で美しく、利己的で自分勝手で、営みに趣味嗜好を加えてしまう私たち人間こそが恥ずかしいと感じるほどでした。
「太古から、地球の姿はこうであった。そして動物たちが生きやすい場所こそが健全な地球の姿なのです!」という動物を愛してやまないステラならではのメッセージが、ウィットに富んだ方法で投げかけられているようでした。どんな言葉よりも、あの動物たちの営みの姿が本当の“楽園”として私の脳裏に強く焼きつきました。
“楽園”は、苦悩はなくあふれんばかりの愛に包まれる場所です。自然の中に身をおくとストレスが軽減されるので、森や海に出向いてヒーリングしたくなるのですが、行かずとも味わえる脳内楽園が存在しているのを以前、体験したことがありました。
知人のサウンドクリエイターが生み出したサラウンドシステムで、都内にいながらアマゾン奥地の自然音に包まれる、というもの。しかも音のみならず、超音波も拾えるマイクをアマゾンの熱帯雨林の中に24時間設置して採取した音なので、現場の臨場感が半端ないわけです。動物たちの鳴き声や足音、水の音、さらにはそこに流れる波動に防音設備が完備された無音の真っ暗な部屋で15分ほど包まれるわけですから、かなりの脳内トリップなのです。
部屋から出た瞬間は、完全にストレスフリーな状態で、身体も心も軽くてフワッフワのユルッユル、ニッコニコ状態でした。ちなみにこの超音波立体音響体感を生み出したこのサウンドクリエイターさんを次号で取材しますので、楽しみにしていてくださいね(なのであえて名前はあかしません)。
人にはそれぞれ脳内トリップが起きる瞬間があります。乗馬、サーフィン、登山、サウナ、バンジー、筋トレ、料理などそれぞれです。日本ホリスティックセラピー協会の加藤雅俊先生いわく、脳内でセロトニンやドーパミンなどが分泌され、楽園スイッチが入るのだとか。やはり心身ともに健康でなければ、そのスイッチすら見つけにくいわけですよね。
今の社会は人もモノも情報も玉石混淆にあふれかえっています。疲弊するのは当たり前。自分だけのスイッチ=楽園を持たなくては、身が持ちません。そんな流れもあってなのか、今シーズンのファッションは、まとうだけで楽園を味わえそうなものが提案されていました。あなたの楽園スイッチはどこにありますか?
Numéro TOKYO編集長 田中杏子
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