自身の幸せエネルギーを見つけることは、案外、社会のためになるのかも!
『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』編集長 田中杏子がおくる、2019年11月号に寄せる言葉。
今号では“幸せのエネルギー”と題して、幸せって何だろう? どこから来るのだろう?という超シンプルだけど大切な課題に取り組みました。皆さまにとっての幸せが何なのか、ぜひ一緒に考えてみてください。
“幸福”の概念は、社会背景や環境、経済などによって変化しますが、世間が唱える幸福論より、最も大切なのは自分自身が「幸せだ!」と感じることです。幸せそうだな、と見えても、本人が幸せを感じなければ、そこに幸せエネルギーは存在しないわけですから。主軸はあくまでも自分自身。幸せとは社会の尺度で測るのではなく自分自身のものである、ということが、ここのポイントだと思うのです。
そういった視点で私の幸せエネルギーについて考えてみました。新しい服を買ったとき、お気に入りの靴を褒められたとき、おいしい食事をいただいたとき、愛猫とじゃれ合うとき、小誌の売れ行きが好調なとき、映画を見ていて鳥肌が立ったとき、海辺で寝そべっているとき、お酒を飲んで会話が弾んだとき、二度寝ができると気づいたとき……。挙げればきりがないほど細かくあります。私の幸せエネルギーは、日々の小さな出来事から生まれるようです。
では、同じ状況でも幸せを感じない日があるのは何故なのか、脳内ホルモンについて調べたところ、生活リズムが関係していることが判明しました。正しい食事、日差しを浴びながら適度に体を動かす、良質な睡眠というシンプルな3条件が揃わないと、幸せ脳内ホルモンが十分に分泌されないのだとか。さらにホルモン分泌に効果的な食事を調べたところ、魚、肉、豆類、卵、アーモンド、チーズ、ヨーグルト、牛乳といった朝食の定番でもある食材がずらりと並びます。朝から納豆や魚、お味噌汁、豆腐、ヨーグルトを食べるのは理にかなっているのですね。
実は、高血圧に悩んでいた私は、薬なしで血圧を正常値に戻せないか探求を重ね、断糖食メソッドに出合い糖質オフの食事療法を始めました。口にしていいものは上記の食材だけで、早4カ月がたちます。朝は無糖ヨーグルト、お昼には木綿豆腐と肉か魚、夜には葉物野菜を使ったシラスサラダに納豆や卵料理。お腹がすいたらアーモンドやナッツ類。これを繰り返すうちに、徐々に数値に効果が表れ始めました。ただ、時々入る会食は、サーブされたお料理を存分に楽しもうと決めていて、パンやご飯、最後のデザートも頂くことにしています。久しぶりに口にする糖質は、一口で多幸感を味わえます。私にはストイックすぎないのがいいのかも!と勝手に解釈してムリなく続けていますが、血圧の数値が徐々に安定し始め、何をやっても落ちなかった体重が4kg減という副産物までついてきました。幸せ。
のっけから私的な話でしたが、幸せエネルギーは私的なことから生まれ、ある意味、人と共有できないものなのかもしれません。今号では幸せオーラに包まれている人たちに、私的な幸福時間について紹介してもらいました。ドライブ、古書店巡り、ネコ、廃墟、祈りなど人それぞれです。フードエッセイストの平野紗季子さんがおすすめする、幸せな一皿についてもご覧ください。まさに人の数だけ幸せスイッチがあるようですね。ただ、幸せを感じやすい体質作りは大切ですから、規則正しい生活を心がけたいです。多幸感を味わう人が増えれば、より良い社会づくりにつながります。幸せエネルギーを日々の生活から見いだしてください。自身のためにも、社会のためにも……。
Numéro TOKYO編集長 田中杏子