千原徹也のポップ解剖「大衆文化に学ぶ“ポップ”」
鮮やかなカラーパレットにキャッチーなモチーフで魅了する、アート作品や空間、スタイル 、さらには人物まで、日常にあふれているさまざまな“ポップ ”。ポップなクリエイター、千原徹也にとっての“ポップ”とは?(「ヌメロ・トウキョウ」2018年5月号掲載)
僕が生まれた70年代は多様化されていないので、テレビの中の世界がすべてだったんです。いわゆる大衆化されたものや大量生産されたものに囲まれていたという感覚。僕にとっての“ポップ”とは、こういった流れの中で自然と身に付いたものであり、ただカラフルなものというより大衆化したものというイメージです。
藤子不二雄先生は幼少期から影響を受け続けている方なんですが、今のクリエイションの原点といえるのは画家の藤田嗣治(=レオナール・フジタ)さん。ご本人はポップなつもりで絵を描いていたわけではないと思いますが。さらにアンディ・ウォーホル、横尾忠則と大人になってから知ったアーティストたちは、色の使い方とかさまざまなものが詰め込まれたイメージがテレビ世代の僕にハマりました。昔から好きなものと今あるもの、この二つをミックスしてみると面白いものが生まれると考えています。
僕が“ポップ”だと思う人は、桑田佳祐さん。新曲のヴィジュアル撮影でご一緒したんですが、彼のスタイルはまさにポップ。有名なカメラマンに撮ってもらうとか、フィルムで撮るとかいうことではなく、彼にとって大切なのは出来上がったものを見た人が面白いと思うかどうか。ここは僕が考える“ポップ”の定義、大衆化に通ずるものがあるなと思いました。「わかる人がいればいい」というのではなく、みんなが面白いと思えるものを作りたい。
Photos:Takahiro Idenoshita Text&Edit:Yuko Aoki