エディターたちは見た! 2020年秋冬コレクションダイアリー【ロンドン編】
長い歴史を重ねてきた従来のコレクションの形はこれで最後になるかもしれない。しかしデザイナーたちは、いま起きている世の中の変化を次なる進化の過程と捉え、すでに未来へと動き始めている。これからのファッションを楽しむヒントを現地で取材にあたったエディター視点で解説します。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年9月号掲載)
EU離脱による変化自国を見つめ直す
愛国心を胸に
──今回のロンドンコレクションについて
「1月末にイギリスがEU離脱に踏み込んだ直後ということもあり、自分たちの国を見つめ直すような愛国心の高まりを感じたロンドンコレクションでした。多くのブランドから、イギリス皇室の公式カラーであるロイヤルブルーなどのブルーカラーや、バーバリーをはじめとする、英国伝統のタータンチェックが登場していました」
(左上)MOLLY GODDARD(右上)CHRISTOPHER KANE(左下)SIMONE ROCHA
(左上)SHRIMPS(右上)BURBERRY(左下)ERDEM
「今後、イギリスの国の体制が大きく変化するため、さまざまな不安などに打ち勝てるような強さを表現したビッグシルエットやグリッターなども印象的。特にインパクトがあったのは、リチャード クイン」
「彼の服はいつも花柄プリントでパンクなものが多いですが、いつもよりもリアルに着やすい洋服も出していました。その中にイギリスの伝統衣装である『パーリー・キング&クイーン』にクイーンをもじったテイストを刺繍したルック、またタータンチェックや千鳥柄などクラシックなテイストも多数登場していて、今回のロンドンコレクションの象徴ともいえそう。徹底したサステナブル制作方法も環境に対する思いが昔から強いロンドンらしい考え方もしっかりと反映されていました」
サステナベースの過ごし方
──サステナブルな意識がベースにあるロンドン。その中でも印象的だったブランドは?
「マルベリーのプレゼンテーションです。『エムコレクション』という新作を発表していて、モノグラムやエコニールという素材ですべてエコのものを使用していました」
「デザイナーのジョニー・コカとのディナーに招待いただいた際も、ロンドンの地産地消で行われているレストランによるものでした。さらには若者の日常でもそういった意識が高いです。仕事場にもマイボトルを持ってくることが当たり前だったりとか。女性は月経カップもスタンダードです。イギリスは物価が高いというのもあり、エコで長く使えるものの方が安く済むという考え方とその仕組みが出来上がっているのかも」
期待の注目ブランド
JW ANDERSON
今シーズンはボリュームと動きの追求を体現したコレクション。異常なほどにボリュームのあるコートやメタリックファイバーなどの異素材の組み合わせなど、あらゆるアプローチで自由な楽しみ方を表現した。
──若手ブランドの勢いが強いロンドンコレクション。今季注目したい若手と期待したいブランドは?
「アシュリー ウィリアムズとJW アンダーソン。アシュリーウィリアムズは、人気のヘアピン然り、車メーカーのFordとBored(退屈)をかけるなど、タイポグラフィーで遊ぶ表現がとてもパンクで面白い。若手のブランドで一番エネルギーを感じました。JW アンダーソンは、大胆なバルーンシルエットやパンチングボールのバッグなど、見ていて元気をもらえました。クリエイティブディレクターのジョナサンの『トレンドに関係なく着ていて楽しいと思えるものを出したかった』というコメントがとても伝わってくるショーでした」
ASHLEY WILLIAMS
2013年秋冬よりデビュー。カラフルでポップな独特の世界観を漂わせるロンドンのニューフェイス。今回は猫やモナリザなどをプリントし、大胆なデザインが目立っているがその中にはキュートさが宿り、女心をくすぐられるアイテムが多く登場している。
MIDORI’S COMMENT
こだわりたい“やさしい”、“スロー”なファッション
今改めて気になる“やさしさ”。作り手にも自然にもやさしいものを、大切に着ることでファッションの未来を期待したい。ウィズコロナでも“スロー”なプロセスなら影響は少なそうですし、ゆっくりと吟味して選んだこだわりのアイテムなら愛着もひとしお。たとえエッジの効いたデザインでも、長く着たいと思えそう!
エディターたちは見た! 2020年秋冬コレクションダイアリー
Illustration:Kaoll Edit & Text:Saki Shibata