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賞レース席巻! サム・メンデス監督作『1917 命をかけた伝令』

第77回ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)で作品賞と監督賞を獲得。そして先頃発表された第92回アカデミー賞では、撮影賞、録音賞、視覚効果賞の3冠に輝いた。実のところ下馬評の段階では、作品賞において本命視されていた一本でもある。戦争映画の新たな地平を切り開いたマスターピースとして、各方面から絶賛を受けている話題作だ。

“全編ワンカット風”で体感するリアルな戦場の臨場感!
賞レースを大いに賑わせた驚異の新感覚ミリタリーシネマ

監督は長編デビュー作『アメリカン・ビューティー』(1999年)でいきなりオスカーに輝き、『007 スカイフォール』(2012年)では007シリーズ歴代最高の興行成績を記録した英国を代表する名匠、サム・メンデス。

舞台は1917年のフランスの戦場。第一次世界大戦の真っ只中、ある朝にイギリス軍の若き兵士2人――ウィリアム・スコフィールド(ジョージ・マッケイ)とトム・ブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)が重要な任務を命じられる。それは最前線にいる味方の兵士たちに、明朝に予定されている突撃中止の命令を届けること。もしその伝令が間に合わず、作戦をそのまま決行すれば、敵対するドイツ軍の罠に掛かってイギリス軍は敗北必至の甚大な犠牲を出すことになる。しかもその最前線の部隊にはブレイクの兄も配属されていた――。

この危険なミッションに挑む兵士の一日を、本作はなんと“全編ワンカット風”で見せていく。実際は黒味画面などを巧みに使い、数回の撮影をデジタル編集でつないだものだが、われわれ観客の体感としては、確かに119分の上映時間、驚異のワンシーン・ワンカットにより苛烈な戦場の臨場感をシームレスな流れで味わうことができる。

もちろん“全編ワンカット風”の手法自体は、例えば第87回アカデミー賞作品賞に輝いた『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014年/監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ)といった先例もある。だがその方法論を戦争映画に応用したことが本作の決定的な卓越だ。

自軍の陣地からドイツ軍の塹壕に飛び込み、破壊された町を抜けて、さらに敵地の奥を目指す――。ミッション遂行のために、ひたすらゴールに向けて突き進むというシンプルな構成の中で設定される“ステージ攻略”の段階性は、まるでロールプレイングゲームのよう。それがリアルな戦場の描写とあいまって、うねるようなダイナミズムを生んでいく。まさに新感覚の映像体験というしかない。

今回、アカデミー賞撮影賞を獲得したのは、『ブレードランナー 2049』(2017年)に続き2回目のオスカー受賞となる名手ロジャー・ディーキンス。主演にジョージ・マッケイ、ディーン=チャールズ・チャップマンという新進の若手俳優2人を大抜擢し、脇をコリン・ファース、ベネディクト・カンバーバッチ、マーク・ストロングという豪華キャストで固めたキャスティングも効果的だ。サム・メンデス監督は「映画は体験だ。観客には頭を空っぽにして観て、感じてほしい」とメッセージを贈っている。

『1917 命をかけた伝令』

監督:サム・メンデス
出演:ジョージ・マッケイ、ディーン=チャールズ・チャップマン、ベネディクト・カンバーバッチ、コリン・ファース、マーク・ストロング
2020年2月14日(金)全国公開
1917-movie.jp

(c)2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.

Text:Naoto Mori Edit:Sayaka Ito

Profile

森 直人Naoto Mori 映画評論家、ライター。1971年、和歌山県生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「TV Bros.」「シネマトゥデイ」などでも定期的に執筆中。 YouTube配信番組『活弁シネマクラブ』でMC担当中。

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