2大スターの初共演! 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピット、今世紀を代表するスターが初の共演。しかも監督はあのクエンティン・タランティーノ……。注目度に劣らず評価も高く、必見としか言いようがない映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が8月30日(金)より公開される。
ディカプリオ×ブラピ×タランティーノが1969年にタイムスリップ。この最強トリオがハリウッドの悪名高き伝説を“勝手に”再構築する!
ハリウッドの頂点に立つスター俳優、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピット。名実ともに今の映画界を代表するこのツートップが、満を持して初共演を果たしたのが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』だ。監督はあの鬼才クエンティン・タランティーノ。これほど観る前からハイレベルの品質が保証され、実際に破格の傑作に仕上がっている映画も珍しい。ワールドプレミアとなった今年5月のカンヌ国際映画祭でも約6分のスタンディングオベーションが起こるなど沸きに沸いた。
物語の舞台となるのは1969年のハリウッド並びにロサンゼルス。当時はヒッピーカルチャーの全盛期で、映画界にも時代の変わり目の風が吹いていた(ちょうど同年7月に全米公開された『イージー・ライダー』が大ヒット中の頃だ)。そんな中、ディカプリオが演じるのは時代遅れの落ち目感が漂う俳優リック・ダルトン。かつてはテレビ西部劇の主演を務めていたが、今は脇役やマカロニ・ウエスタン(別名「スパゲッティ・ウエスタン」。ハリウッドの亜流として流行したイタリア製西部劇)の仕事しか回ってこない低迷状態。そんな彼を励ます運転手兼スタントマンである相棒にして親友、クリフ・ブース役をブラピが演じる。
この微妙な負け犬コンビを中心に、“とある一日”をクライマックスとする三日間の様子が描かれていく。スクリーンの中は、まるで当時のハリウッドが疑似体験できる夢のテーマパークだ。1966年型のキャデラック・クーペデビルなど、リックやクリフが乗り込む車の窓から見えるのは『ジョアンナ』(1968年)や『キャンディ』(1969年)など時代色豊かな人気映画のポスター。そして撮影所にはビッグスターのスティーヴ・マックィーン(ダミアン・ルイス)や、まだ本格ブレイク前でテレビシリーズ『グリーン・ホーネット』に出演中のブルース・リー(マイク・モー)の姿も!
そして問題の“とある一日”とは、ズバリ1969年8月9日。ハリウッド有数の負の伝説である「シャロン・テート殺人事件」が起こった日だ。
シャロン・テートとは、当時『ローズマリーの赤ちゃん』(1968年)でハリウッドを席巻したロマン・ポランスキー監督の美しき若妻として知られた新進女優(ポランスキーの作品では1967年の『吸血鬼』に出演)。まだ26歳だった彼女は、しかも妊娠8ヶ月の身で、ハリウッドの自宅に侵入した若者たちの手で惨殺された。犯人は悪名高きカルト集団の指導者チャールズ・マンソンの信奉者――“マンソン・ファミリー”と呼ばれる面々だった。
当然この映画の中にも、シャロン・テート(マーゴット・ロビー)は、夫のロマン・ポランスキー(ラファル・ザビエルチャ)と連れ立って登場する。シャロンがUCLAのすぐ側にあるフォックス・ブルーイン・シアターで、自分が出演している『サイレンサー第4弾/破壊部隊』(1968年)を観るところなどグッとくる名シーンだ。
そして劇中、このポランスキーとシャロン夫妻が引っ越してきた新居は、なんとリックの邸宅の隣! タランティーノはここで「もし歴史がこう変わっていたら……」という映画上の夢想を用意する。『イングロリアス・バスターズ』(2009年)でも斬新な話法のギミックを仕掛けた彼だが、今回もまた驚きの“ラスト13分”が巻き起こる!
もちろんタランティーノの映画なので、いつもながら選曲も天才的。サイモン&ガーファンクルの「ミセス・ロビンソン」、ディープ・パープルの「ハッシュ」、ヴァニラ・ファッジの「キープ・ミー・ハンギング・オン」、そして映画を観た後も脳裏をぐるぐる回り続けるローリング・ストーンズの「アウト・オブ・タイム」……1960年代ロックの大ネタ続出だがどれも最高にハマっている。今回は彼の長編監督9作目(『キル・ビル』はVol.1とVol.2で2本にカウント)。10作での監督業引退を公言しているのだが、それは本当か!? ともあれタランティーノの全諸作の中でも格別&無双のドリーミーな幸福感(と、裏腹の切なさ)に満ちた一本。観逃し厳禁の2時間41分だ。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
監督/クエンティン・タランティーノ
出演/レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、アル・パチーノ
2019年8月30日(金)より全国公開
URL/http://www.onceinhollywood.jp/
Text:Naoto Mori Edit:Sayaka Ito