ティモシー・シャラメが難役に挑む!映画『ビューティフル・ボーイ』 | Numero TOKYO
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ティモシー・シャラメが難役に挑む!映画『ビューティフル・ボーイ』

2017年に公開された映画『君の名前で僕を呼んで』でティモシー・シャラメの虜になった人に朗報! シャラメの最新出演作が4月12日(金)より公開されている。薬物中毒者という難しい役どころに彼がどう挑んだのか…。もちろん一作品としても高評価の本作、ぜひご覧あれ。

ジョン・レノンの名曲が彩る息子と父親の愛と再生の記録

  『君の名前で僕を呼んで』の主演で世界中を魅了した新星俳優ティモシー・シャラメ。今回彼が挑んだのは、実話の映画化。8年間という長い歳月をかけて薬物中毒を克服し、現在は人気脚本家として活躍する原作者のベストセラー回顧録を基にしたヒューマンドラマだ。その内容やタッチは、極めて硬質。安易な泣かせや甘ったるさに傾斜することなく、ひとりの青年の困難と、彼を支えた家族のリアルストーリーを誠実に見据えて描き切る。

頭脳明晰で容姿端麗、サーフィンなどに親しみスポーツ万能。読書家で感性も豊か。さまざまな才能と可能性に満ちあふれ、輝かしい将来を期待されていた青年ニック――。だが彼は些細なきっかけから、クリスタル・メスというハードなドラッグ依存の闇に堕ちていく。そんな息子を粘り強く信じ続ける父親デヴィッド。

父親のデヴィッド役は、『40歳の童貞男』(2005年)や『フォックスキャッチャー』(2014年)など幅広い役柄をこなす名優スティーヴ・カレル。彼が演じたのは、劇中と同じくフリーランスの音楽ライター(現在は兼作家)として活躍するデヴィッド・シェフがモデル。数々の有力誌での実績があり、PLAYBOY誌によるジョン・レノン生前最期のロング・インタビューも担当した人物だ。そんな彼の、市井に生きる等身大の父親として苦悩と葛藤を重ねる姿が描き出されていく。

どん底でも手放さない親子の愛と絆を描いた希望と再生の物語。タイトルはジョン・レノンが愛息ショーンに捧げた1980年発表の名曲「ビューティフル・ボーイ」から。他にもニックが愛するニルヴァーナの「テリトリアル・ピッシングス」をはじめ、ニール・ヤングの「ハート・オブ・ゴールド」やシガー・ロスの「スヴェン・ギー・エングラー」など、おなじみの曲が登場人物の心情と絡み合う形で効果的に使用されている。

監督は『オーバー・ザ・ブルースカイ』(2012年)でアカデミー賞外国語映画賞ノミネートを果たしたフェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン。製作は常に良質の作品を届ける信頼のプロダクションとなった、ブラッド・ピット率いるプランBエンターテインメント。

最後にティモシー・シャラメの声によりフルで朗読されるチャールズ・ブコウスキーの詩“Let It Enfold You”(アメリカのポスト・ハードコアバンド、センシズ・フェイルがデビューアルバムのタイトルに使ったことでも知られる)も深い余韻を残す。この真摯な人間ドラマ、全身でしっかり受け止めてほしい。

『ビューティフル・ボーイ』

監督/フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン 
出演/スティーヴ・カレル、ティモシー・シャラメ
2019年4月12日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開

François Duhamel © 2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC.

Text:Naoto Mori Edit:Sayaka Ito

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