ダミアン・ハーストの「桜」でお花見【#私の土曜日16:00】 | Numero TOKYO
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ダミアン・ハーストの「桜」でお花見【#私の土曜日16:00】

春のお花見の時期は、なんだかそわそわしてしまいませんか。都内は桜が開花してきましたが、先週末は桜のつぼみの膨らみを目撃するなり早る気持ちを抑えきれず、本物のお花見に先駆けてダミアン・ハーストの「桜」を鑑賞してきました。

会場は国立新美術館 2階の展示室。ダミアン・ハーストといえば見ると不安に襲われるような、刺激的だったりミニマルな作品を思い浮かべますが、今回の絵画は一見すると真逆? という印象を受ける、とても大きく美しい絵画(すべて桜!)のシリーズから作家自身が選んだ24点が並ぶ圧巻の展示です。しかも、日本初の大規模個展。

ドットの延長線上にありながら奥行きのある、抽象と具象の間のような桜はそれぞれ、下から見あげるような図だったり、ちょうど目線の正面に枝が広がるようだったりしていて、会場入りしてから3秒もあれば即没入です。来場者がわさわさと鑑賞していたり記念写真を撮ったりと賑わっているのもむしろすごくいい感じで、リアルなお花見かと錯覚してしまいます。私的には、目黒川や代々木公園のそれではなくて、上野を感じました。青いビニールシートと熱燗とおでんが欲しくなる!

アートってもっと自由に楽しんでいいんだよ! と背中を押してもらったような気持ちにもなりました。子ども(静かな空間をぶち壊す天才)を連れているとどうしても肩身の狭い思いをする展覧会も多々あるのですが、その点は安心。ジュニアガイドが用意されているのもすごくよかった!

作品に近づいてみると、ジャクソン・ポロックのようなアクション・ペインティングが生々しく、非常に多くの色が使われていて、自然の色彩というのは容易には再現できないのだな感じると同時に「はて、これがどうして桜にしか見えないのだろうか??」と考えてしまいます。少し引いてみれば、枝のシェイプと、だいたい桜の色という印象がつながってか「はぁ〜美しいなぁ桜ってのは……」という気持ちで思い出に耽ったりもしてしまうので不思議です。

また、会場で見られ、展覧会オフィシャルサイトにも掲載されているインタビュー動画も必見です。その動画内でダミアン・ハーストは、母親が桜の絵画を描いていたことが着想源だと語っていますが、美しく儚い「桜」への思い入れは日本に暮らす人にとってはやはり特別ですよね。お花見真っ盛りの時期から新緑の季節までたっぷり楽しめるアートなお花見、何度でも足を運んで没入したいなと思っています。

キエフのピンチュークアートセンター所蔵の作品。帝国の桜 Imperial Blossom 2018 Coutesy of PinchukArtCentre(Kyiv, Ukraine)
キエフのピンチュークアートセンター所蔵の作品。帝国の桜 Imperial Blossom 2018 Coutesy of PinchukArtCentre(Kyiv, Ukraine)

ちなみに今回来日している作品のほとんどは個人蔵で、展覧会が終わったら散り散りになるそうです。その中に1点、ウクライナの美術館蔵の作品がありました。1日でも早い平和が訪れることを願ってやみません。

ダミアン・ハースト 桜

会期/〜5月23日(月) 毎週火曜日休館 ※ただし5月3日(火・祝)は開館
会場/国立新美術館 企画展示室2E
住所/東京都港区六本木7-22-2
https://www.nact.jp/exhibition_special/2022/damienhirst/

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Profile

井上千穂Chiho Inoue コンテンツ・ディレクター。『Numero TOKYO』創刊に参加し、エディターとして主に特集を担当。2011年に卒業後、ウェブマガジン「honeyee.com」「.fatale」の副編集長をつとめ、19年よりNumero TOKYOへ出戻り。ウェブや本誌の編集、デスク業務の傍らで、NFT販売など新規プロジェクトを遂行中。プライベートではピアノ、ギター、多言語(6カ国語)を学び直し中。ランニングとワークアウト、韓国ドラマにも目覚めてしまい、1日24時間じゃ全然足りない、二児の母。

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