富永よしえさんと、パティ・スミス写真集『the doors of light』のこと
写真家の富永よしえさんがパティ・スミスの写真集を出されました。フジロックのライブフォトやレコーディング風景、オフショットまで、ほとんどがモノクロの写真と、当時の二人のやりとりの記録で構成された写真集『the doors of light』。内容もデザインも本当に素晴らしくて、パティを追い続けてきた富永さんの情熱を追体験させてもらうような気持ちで、大切に読みました。
富永さんと私が初めて撮影でお会いしたのは、Numero TOKYO創刊一年目に冨永愛さんとお子さんの2ショットを撮っていただいたときのこと。その後2011年にもWEBマガジン「.fatale」で、アンダーカバー特集の撮影を富永さんにお願いしました。高橋盾さんの発案で、YOUさん、近田まりこさん、大塚博美さん、森下璃子さんなどいろんな世代のパンチのきいた面々にアンダーカバーを纏って登場していただいた企画でした(実は編集長・田中杏子にも出てもらいました)。
当時、富永さんはメディアや広告の仕事を控えられていたのですが「ジョニオさんの仕事だから撮ります」と言って引き受けてくださって、同時に、現場ではまだ小さかったお子さんの写真を見せてくださったことを覚えています。そして悩める独身だった私に「走り続けるのが苦しいなら立ち止まっていい」「すごく辛い経験があって、一度いままでの生活から離れようと決めた」「子どもを産みたいと思った」といったようなことを数日間の撮影の合間合間でポツリポツリとお話ししてくださったことが、なんだか頭の片隅にずっと残っていました。
それから10年が経ち(その間に私は出産と通算3年の仕事のブランクも経て)、今回の写真集に綴られた富永さんからパティ・スミスへの謝辞を読んで、あの当時私が富永さんからかけていただいた言葉は、もとをただせばパティ・スミスから富永さん自身が受け取ったメッセージに由来するものだということを知りました。今回の本のカバーデザインは高橋さんが手がけられているし、急に過去と現在が繋がったような気がして、「光の扉」というタイトルも腑に落ちて、ますます私的にも尊い一冊になりました。
そんなわけでNumero.jpでは後日、富永よしえさんのインタビューを掲載予定です。乞うご期待!