ファッションと鉱物をめぐる占い放談 猫星ラピス×武笠綾子「目に見えないものを感じること」 | Numero TOKYO
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ファッションと鉱物をめぐる占い放談 猫星ラピス×武笠綾子「目に見えないものを感じること」

鉱石蒐集をライフワークにする西洋占星術研究家の猫星ラピスと石の持つパワーをジュエリーに落とし込むデザイナーの武笠綾子。「目に見えないもの」を敏感にキャッチしている二人がファッションやインスピレーションについて語らい、24年下半期を占う。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2024年7・8月合併号掲載)

──2024年上半期が終わろうとしていますが、振り返ってみて星の影響を強く感じたことはありましたか。

武笠綾子(以下、武笠)「私は新月や満月の影響を感じやすいほうで、水星逆行の期間もいろいろスムーズに行かず、ちょうど昨日(4/25)の蠍座満月でそれを越えた気がしています。もうすぐ誕生日を迎えることも自分としては大きな節目です」

猫星ラピス(以下、猫星)「武笠さんは牡牛座ですよね。シュタイナーが提唱した12星座12感覚によると牡牛座は思考感覚で、世界観を作ることに秀でているんです。ファッションデザイナーの方に牡牛座がすごく多いんですよ。武笠さんのホロスコープチャートを見ると、新月生まれで月も牡牛座にあって金星が双子座なので、先ほどコレクションについてクリアに説明していただいたことが腑に落ちます。夢や宇宙からインスピレーションをもらいつつもロジカル。海外や占星術、見えないものとの縁を感じます。美的感覚で社会に向けてメッセージを発信する役割がありますね。シーズンによって影響を受けるものは結構変わってきますか」

武笠「そうですね。自分自身も変わりますし、感覚的なものをアウトプットしてきたのですが、前回ムカサの春夏コレクションではタロットカードを引いてみたんです。そこで出てきた『THE SUN(太陽)』のカードからのインスピレーションを掘り下げたのですが、今回の秋冬ではグラウンディング(*)する感覚を覚えて、大地をテーマにしました。今後は水とか風といったエレメントにフォーカスしてみても面白いかなと考えています。まさにシュタイナーの12感覚論もすごく興味があるのですがすごく難しいですよね」

* グラウンディング:大地とのつながりを感じ、今に意識を向ける瞑想方法の一つ。

直感を信じて表現する

猫星「牡牛座は18年から天王星という変化の星が入ってきていて、今はちょうど木星も入っているので、始まりの機運やラッキーが膨らむ期間だったと思います。5/26に木星はお隣の双子座に移動するので、そこで一区切り。元来牡牛座は変化を好みませんが、ジェットコースターのように目まぐるしい数年間だったのではないでしょうか」

武笠「まさに子どもが生まれたのが19年で、独立したのが20年です。そのタイミングで『自分のクリエイションと向き合うための場所』が必要と思い現在のアトリエを構えたのですが、ブランド設立に向けての先行投資だったので結構勇気のいることでした。そこから物事が動いていって。いろいろ失って手放したところに新しいものが入ってくるという感覚になったのもちょうど20年から21年ぐらいのことです。宇宙にたくさん経験させてもらいました」

猫星「この時期に覚醒した牡牛座の方は変化を起こしてきたのですが、これから24年下半期にかけて地盤を築いていきます。官能的な星座でもあるので、第1チャクラ、第2チャクラみたいなものを否定しないといいと思います」

武笠「なんとなくですが、その感覚はありますね。20代の頃に父親を亡くして、スウェーデンボルグの漫画版を読んで死後の世界について探究してみたこともあったのですが、当時はまだ日々の生活に追われていました。それが子どもを産んだ後ぐらいから月がそこにあることさえも愛おしく思えたりして、同時に、見えないものの存在も意識するようになったんです。例えば今なら5月の香りや咲いている花に包まれて魂が動いている感覚があるんです。言葉にするのが難しいのですが、この感覚で表現を続けたいと思っています」

猫星「素晴らしいです。ちゃんと自分自身と対話していますよね。情報やマーケティングってもうこれからのファッションじゃないような気がするので、自己との対話を大切にされるのはすごくいいと思います」

武笠「目標をノートに書いたり、恥ずかしいのですが家の中にペタペタ貼ったりもしています。なりたい自分のイメージボードを作るような感覚です」

猫星「今年の春分の日は『イマジネーションと現実がますます直結していく』という意味のチャートだったんです。春分図はその先の一年の地図のようなものなのですが、従来のように、外側から見た自分を意識して整えていくのではなくて、まずイメージすることが大事ということを表していました」

──感覚を研ぎ澄ませてイメージを膨らませること自体が、人や置かれた状況によっては難しいこともあるかもしれません。それでいうと、身に纏うことができるファッションや、手に取りやすい石はあらゆる人に寄り添ってくれるものなのかなとも考えられますが、武笠さんがこのアトリエでジュエリーのカスタムオーダーを始めたのはなぜでしょうか。

武笠「独立後の充電期間に彫金教室へ通ってみたら、自らの手を動かして造形することがすごく楽しくて。それから京都を訪れたときに重森三玲さんの庭を見て、二度と同じものができない小宇宙のような世界をジュエリーで表現できたら素敵だなと思ったのが始まりです。それとはまた別の話なのですが、アメジストを握っていたら色が変わったことがあったんですね。それで鉱物も生きているということに興味が湧いて、お守り代わりに持って一緒に成長できたらいいんじゃないかと思ったんです」

猫星「鉱物が呼吸していることをわかっていらっしゃるので、やっぱりこちらにある石の雰囲気がもう普通じゃないんですよね。どの石も生き生きしていて見たことがないくらいきれい。インドで採掘される大注目の石、スーパーセブンまであって! 石好きのセレブリティが見つけたら大量買いしちゃいそうです」

星と鉱物、これからの美意識

──石はケアをされているのですか。

武笠「そうですね。お渡しするときも呼吸できる木箱に入れてセージとセットで販売したり、浄化用の水晶と一緒にお渡ししたりもします」

猫星「ジュエリー自体、オニキスと水晶の組み合わせもいいですね。どんなインスピレーションだったのでしょう」

武笠「オニキスが言語をプラスするイメージで、水晶はクリアにするマイナスの力を感じるので、陰陽のバランスですね。天体の影響や流れを日々感じている中で、うまく言えないのですが、真ん中に一本軸を持ちたいんです」

猫星「伝わりますよ、受け取ってアウトプットすることが軽やかにつながっている感じがします。きちんと言語化もできているんだけど、ご自身はきっとその100倍ぐらい繊細に色彩一つ一つの微差を感じているから『言葉にできていない』という感覚になるのだと思います」

──ファッション業界的に最近ショッキングだったニュースは、ドリス・ヴァン・ノッテンの退任でした。ドリスも、同じくヴァレンティノを退任したピエールパオロ・ピッチョーリも牡牛座。24年秋冬以降のファッションのムードについて猫星さんにお伺いしたいです。

猫星「コロナも本格的に開けてきて、またファッションは元気になっていくように思います。大事なのはオリジナリティ。強いトレンドも全く消えるわけじゃないですが、ライフスタイルや価値観、内面がどういう状態であるかは必ず外見に表れるので、唯一無二の自分自身を表すツールとしてファッションが存在する時代になっていくはず。とはいえ色で表すと下半期のトレンドは植物カラー。グリーンやイエロー、自然界にある花の色にも注目です。お財布で取り入れてもいいと思います。また、ジュエリーはイエローゴールドもラッキーです。石でいうとダイヤモンドは無敵ですが孤独運を上げてしまうので、多様性を表すカラーストーンを自分流に楽しむのがおすすめです。自分が惹かれる色や波長にフィットするものを選ぶといいと思います。武笠さんが特にお好きな石はありますか」

武笠「ラピスラズリやアメジストに惹かれることが多いですかね」

猫星「あら、趣味が合う(笑)。ラピスラズリって、クレオパトラが砕いてアイシャドウにしたり、フェルメールやイヴ・クラインのウルトラマリンブルーなど、顔料や色彩としても無敵ですからね。世の中のどんな青より青い」

武笠「確かに。昨年フォンダシオン ルイ・ヴィトンで開催していたマーク・ロスコの大回顧展に行ったんですが、やっぱりそこでも青が気になりました。何層にも重ねられた色の深みにあらためて惹かれたんです。自分の目で確かめること、体験することが大事だなとよく思います。本当に必要なものは何なのかを考えて断捨離もできたけど、自分がやっていることは物質を作り出すこと。その矛盾に頭を抱えて、物質的なものってなんなのだろうと考えてしまった時期がありました。それとはあまり関係ないかもしれないのですが、先日滝を見に行ったとき、冷たさを感じてみたくなって飛び込んでみたんです。視界が開ける感じがして面白かったです。やっぱりお洋服もジュエリーも体に纏うものだから、魂や周波数を変える力があるんじゃないかと私は信じていて、その人が本来持っているものをいい状態にするような、人に寄り添えるお洋服とかジュエリーを作りたいなってすごく思うんです」

猫星「そう、結局は周波数なんですよ。ファッションはそれをチューニングする役割があると思うので、物に対する欲って究極的にはそういう魂的なところに向かうんですよね。どういう気持ちで生きているかによって、引き寄せたり不幸になったり。これからは、軽やかに今を生きることで幸せになっていきます。もう一つ、24年下半期のキーワードとして挙げたいのは健康。いろんな意味でのヘルシーさこそが、豊かさにつながります。信じられないかもしれないけど経済もちょっと明るいニュースがありそうですし、精神や肉体の健康を意識してポジティブなオーラを手に入れていきましょう」

日当たりが良く風が通り抜けるアトリエには枯山水のように飾られたジュエリーや天然石が並ぶ。武笠が手がけるジュエリーブランド「±Balance」には、天と地、陰と陽、月と太陽など両極端なものをジュエリーで調和してエネルギーを整えるという意味が込められている。オブジェ、花器、生けられた花など一つ一つに存在感がありつつも見事に調和した心地よい空間でお客さま自身が石を選び、ブレスレットやリングをセミオーダーすることが可能だ。

±Balanceのジュエリー、MukasaのコレクションはNumero CLOSETにて取り扱い中です。

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Photos:Ayako Masunaga Edit&Text:Chiho Inoue

Profile

猫星ラピスLapis Nekohoshi 水瓶座。美しい地球の鉱石に魅せられ、銀河系のはるか彼方・猫の惑星からやってきた西洋占星術研究家。パワーストーン蒐集は趣味を超えたライフワーク。タロットと猫パンチも得意。Numero.jpにてマンスリー占いを連載中。
武笠綾子Ryoko Mukasa 1986年5月8日生まれ、牡牛座。自身の名前を冠したファッションブランド「mukasa」、ジュエリーブランド「±Balance」を主宰。2021年にスタートしたブランド「Things That Matter」のクリエイティブディレクターも務める。

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