「Dior」創設70周年を記念した展覧会がデンバーで開催!
「Christian Dior(クリスチャン・ディオール)」のメゾン創業70周年を記念した展覧会「Dior:from Paris to the World(ディオール:パリから世界へ)」がアメリカ・コロラド州の「Denver Art Museum(デンバー美術館)」にて2019年3月3日まで開催中! 先日行われたオープニングにファッション・エディター清原あいかがお邪魔してきました。
昨年パリで開催され大きな話題を呼んだ、創業70周年を記念するエキシビション。この度、内容を刷新してデンバー美術館にて回顧展が開催されています。デンバーの中心地、コロラド州の州議会議事堂の近くに広がる「Civic Center Park(シビックセンターパーク)」内にある一際目立つ建築が、デンバー美術館です。
1947年、クリスチャン・ディオールによって設立されたブランド「Dior(ディオール)」は、パリのオートクチュールの究極のシンボル。70年以上の歴史にオマージュを捧げ、創業者の旅する魂と未来を予見するセンスを彷彿させる今回の展覧会。「Florence Müller(フローレンス・ミュラー)」がキュレーターを務める本展には、180点以上のオートクチュール コレクション、アトリエが手掛けた25の生地、写真、ビデオ、未発表フィルム、スケッチ、フレグランス&メイクアップに関する200点近くのアクセサリーやオブジェが集められました。それらの作品はテーマ、デザイナーごとに展示されています。
まずは「ニュールック」の世界へ!
扉を開けてすぐ。目の前に広がるのがシックなブラックのオートクチュール コレクションが立ち並ぶ「ニュールック」の世界「The Revolutionary New Look」。「ニュールック」とは、1947年2月2日クリスチャン・ディオールが初めて発表したコレクション。なめらかな肩のライン、美しい曲線を描いたバストライン、細く絞ったウエスト、豊かに膨らませたヒップ、フレアのたっぷり入ったロングスカート…。第二次世界大戦中やその前後では、女性らしさを抑制したファッションが主流。そのご時世でディオールが発表した全く新しく華やかで美しい「ニュールック」は、長らく抑圧を感じ続けていた女性たちから圧倒的な支持を受け、センセーションを巻き起こしました。そして、一躍、平和のシンボルとまで言われるようになったのです。
かの有名な「Bar Suit」。「ニュールック」の中でも最も喝采を浴びた、アイボリー色のシルクシャンタンのジャケット。
いま見てもとても新鮮で素敵な2体。
さらにムッシュ・ディオールに迫ります。「Chrisitan Dior」の展示スペースへ。
クリスチャン・ディオールの優雅な世界観! 写真上の真っ赤なGala dressのエレガントな背中のカッティングと柔らかなチュールがたまりません。
大変貴重な写真たちも展示されています!
幼少期を過ごしたフランス北部ノルマンディ地方・グランヴィルにあった自宅のファサード(1910)この家やガーデンがなかったら、いまのファッション界やビューティ界はいったいどうなっていたことでしょう。芸術と自然を愛した母とともに、独創的な園芸の教養を身につけた経験が彼の感性を育てました。メゾン ディオールのすべてがこのグランヴィルから生み出されたと思うと非常に感慨深い写真です!
珍しいIDも!
クリスチャン・ディオール唯一の弟子とは?
左に見えるのが、クリスチャン・ディオールの一番弟子にして唯一の弟子となったイヴ・サンローランのスペースです。ディオールは1955年にアシスタントとして19歳のイヴ・サンローランを雇い、早くからその比類なき才能に惚れ込み、後継者として育成。1957年、予期せぬ心臓発作でディオールが死去した1957年に、サンローランはまだ21歳の若さでメゾン ディオールを引き継ぐことに。1958年、サンローランの最初のコレクションは全体的に台形を描いたシルエット「トラペーズライン」を発表し、ディオールのエレガンスの伝統を見事に受け継いだことを証明しました。
ピオニー(芍薬)プリントの「トラペラーズライン」
シルエットの可愛さに個人的に大興奮したイエローのドレス!
本展の見どころの一つ。圧巻の「The Office of Dreams」へ!
この真っ白な空間は、ディオールのアトリエ(Office of Dreamと呼ばれた)で制作されたムッシュ ディオールからマリア・グラツィア・キウリまでのオートクチュール コレクションのトワル。気持ちが良いほどの真っ白な空間は、息を呑むほどの美しさ。何10分でも見ていられそうです。
真っ白な空間を抜けると…さらにエレガントな世界が待っていた!
「Ladies in Dior」には創業以来のディオールのオートクチュールを身に纏った時代のファッションアイコンや女優たちが着用したルックたちが展示されています。マレーネ・ディートリヒからリアーナまで! 「No Dior, no Dietrich!(ディオールなくして、ディートリヒは存在しない!)」という言葉があるように、いつの時代もセレブリティはディオールに夢中なのです。
グレース・ケリー着用!
美しいカラーリングが存在感を放っていた、マリア・フェリックス着用モデルのドレス。
記憶に新しいカンヌ国際映画祭でリアーナが着用したドレス
展示のアイディアに大興奮! 個人的にMy Favoriteのスペースへ
クリスチャン・ディオールが提案した「トータルルック」を6色に分けて展示した、とてもクリエイションにあふれた空間「The Total Look」! ドレスはもちろん、ハットからシューズ、アクセサリー、そして香水、リップスティックに至るまで、もちろん全部ディオール! 夢のようです。年代もデザイナーもあえてミックス。とっても素敵な空間で、ここには軽く1時間はいられそうです。笑
「The Splendors of the Eighteenth Century」には、第二次世界大戦の暗黒時代を経て、クリスチャン・ディオールがもたらしたかった18世紀のフランスの華麗な世界が展示されています。時を経て後継者たちが表現した、ゴージャスなオートクチュール コレクションの世界は圧巻! そしてやっぱり、ジョン・ガリアーノが得意な分野!
“After woman, flowers are the most divine creations(女性の次にもっとも美しい創造物は、花である)”と語るほど花を愛してやまなかったクリスチャン・ディオール。幼少期のグランヴィルの庭の花々は、生涯にわたってクリエイションのインスピレーションの源となり、また彼の後を継ぐデザイナーたちにも愛され続けているメゾンのシグネチャーコードです。そんなフラワーモチーフのオートクチュール コレクションが展示されているのが「Fields of Flowers」。
エクストリームなプリントのサテンドレス!
そのほか、偉大な写真家たちによるレジェンドなファッションフォト、デザインに影響を与えたアートピース、未発表フィルム、スケッチなどなど、まだまだ貴重な展示品が多数。ムッシュ ディオールの生涯と彼の偉業を伝えるとともに、6人の後継者(イヴ・サンローラン→マルク・ボアン→ジャンフランコ・フェレ→ジョン・ガリアーノ→ラフ・シモンズ、そして現在のアーティスティック・ディレクター、マリア・グラツィア・キウリ)のクリエイションにもそれぞれフィーチャー。美しく展示されています。
展覧会の締めくくりは「From Paris to the World(パリから世界へ)」
さて、15番目となるラストの展示「From Paris to the World(パリから世界へ)」では、世界のさまざまな文化からインスピレーションを得て制作された、豪華でバラエティに富んだオートクチュール コレクションが展示されています。
クリスチャン・ディオールは多くの旅をしました。若い頃は頻繁にイギリスへ。1931年には革命的な建築家とロシア。1947年にはニーマン・マーカス賞を受賞するためにアメリカへ。また、ファッショングローバリゼーションの先駆者であるクリスチャン・ディオールは、ニューヨーク、ロンドンからベネズエラのカラカスまで、国際的な店舗やブティックなどを展開。ヨーロッパ、アメリカ、北アフリカ、アジアの各市場に向けた特別なコレクションも制作しました。「From Paris to the World」では、なにか壮大なメッセージが秘められているとともに、メゾンにおいて、常に世界のさまざまな文化や時代からインスピレーションを得て、メゾン ディオールの伝統は継承し続けられているのだと感じます。
70年以上の歴史にオマージュを捧げ、さまざまな角度からメゾンのルーツを紐解き、後継者たちの豊かなクリエイションにも迫った、時代を巡る魅惑の旅。それぞれの感性を持つ選ばれし6人の後継者たちの、メゾンに対する愛、さまざまな表現を一同に見ることができるのは、またとない機会!
<上、下>ジョン・ガリアーノのクリエイションに脱帽!
日本の桜がモチーフのラフィアドレス
最後に、クリスチャン・ディオールの壮大な世界観を表現し、パリとは全く印象の異なるモダンな展覧会をデザインしたのが、日本人建築家の重松象平氏。同じ日本人として誇りです! コロラド州・デンバー。少し遠いですが、アメリカ旅行に行かれた際にはぜひお立ち寄りくださいね!
(至る所にアートが存在するデンバー。とっても可愛らしい街でしたよ!)
Dior:from Paris to the World(ディオール:パリから世界へ)
会期/2018年11月19日(月)~2019年3月3日(日)
会場/Denver Art Museum
住所/100 W 14th Avenue Pkwy Denver, CO 80204
電話番号/+1 720-865-5000
開館時間/10:00~17:00(金〜20:00)
料金/コロラド州の住民の場合、一般$10 / それ以外の一般 $13、その他詳細はウェブサイトを参照
Photos:James Florio, Naho Kubota