イタリアのグッチ ミュゼオ
「トム・フォード ルーム」を開設
「グッチ(Gucci)」が、1990〜2000年代にクリエイティブ・ディレクターを務めたトム・フォードの功績を称え、彼のクリエイションをフィーチャーした2つの展示室をフィレンツェにあるグッチ ミュゼオに開設した。
ピッティ・ウォモ会期中の2016年6月16日、フィレンツェにて写真家アリ・マルコポロスによる「グッチ」の写真集「Epiphany」出版記念サインイベントが開催された。そのイベントに合わせて初公開された、グッチ ミュゼオの「トム・フォード ルーム」。ウィメンズ&メンズウェアを表現したマネキンの集まる部屋と、アクセサリーを集約した部屋という、ふたつのテーマに分けた展示室が登場した。キュレーションを手がけたのは、トム・フォードを師と仰ぎ、長年同じチームとして仕事をともにした現クリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミケーレ。
グッチを手がけていた時代にトム・フォードが表現した美学。当時ファッション界に多大なる影響を与えた挑発的かつ官能的なコレクションの中から、その代表ともいえるウェアの作品群。床、天井、カーペット、そして顔にスタッズがあしらわれたマネキンまでがすべてがチェリーレッドで統一された世界。マネキンの頭にはセンシュアルなオーキッドが飾られている。
まるで劇場のごとく、どのルックもスポットライトを浴びた演出の中に佇む。アレッサンドロはこの展示スペースを設けた理由として「グッチにセンシュアルな美意識を与え、自己表現するようになったのはトム・フォードによるものだったことを見学者に思い出してもらいたい」とコメント。
アクセサリーの展示室のカラーパレットは、レッドからピンクへのグラデーション。壁はライラックカラーのキルティング地。天井も同色でペイントされ、カーペットだけがチェリーレッドで彩られている。ガラスのショーケースの中に納められたバッグやシューズは、さながら歴史的な美術品。バッグやシューズなどおなじみのアイテムにとどまらず、当時話題となった「Gucci GG G-string (スイムウェア)」や手錠、犬の首輪といったアイテムも顔を揃え、歴史的な重みをよりいっそう強く印象付けている。
アレッサンドロ・ミケーレは2002年、トム・フォードに才能を見出されてグッチのロンドンオフィスに入社したという経緯もあり、これまでも折りにふれ彼への敬意を表していた。「トム・フォード ルーム」はその思いをさらに特別なものとして昇華し、彼の偉業を讃えるものとなっている。
GUCCI MUSEO
Piazza della Signoria, 10, 50122 Firenze, Italy
Photo:Courtesy of Gucci
Text:Yukiko Shinmura