松尾貴史が選ぶ今月の映画『ハイファイブ!』 | Numero TOKYO
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松尾貴史が選ぶ今月の映画『ハイファイブ!』  

ごく普通の日常を生きていた男女5人が、同じ男からの臓器移植で規格外の超能力を手に入れる。彼らはその能力を生かし、前代未聞のヒーローチームを結成するが……。映画『ハイファイブ!』の見どころを松尾貴史が語る。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年11月号掲載)

展開が絶妙! 奇想天外な物語

古典落語に「犬の目」という演目があります。患者が目医者に眼玉を外して洗浄してもらうのですが、ミスで犬に食べられてしまい、医者は苦肉の策で犬の目をくり抜いて患者に「装着」してしまいます。目がよく見えるようになったのはいいのですが、次第に患者には犬の習性が現れてくるという……。

映画の楽しみ方は人それぞれですが、その人にとっても楽しみ方はひとつではなく、作品それぞれでもありましょう。今回の作品は、実に荒唐無稽な設定ではありますが、私にとってこれほど痛快でストレスを感じないコメディアクションは久々の出会いでした。

コメディアクションといいましたが、そこに「超能力」がトッピングされます。超能力は私の大好物なのですが、ここに出てくる超能力は「そうだったらいいなあ」がそのままずらりと並んでいて、うれしい限りなのです。

悩みや傷を抱える5人の風采が上がらないごく普通の男女が、同じ提供者(ドナー)の臓器の提供を受けて、移植された途端にそれぞれの臓器の働きによる超人的な能力を手に入れてしまうのです。心臓なら怪力やスピードを、肺なら強烈な肺活量、肝臓は驚異的な回復能力、といった具合です。

それぞれの能力は違うのですが、客観的に見て頼りない人ばかりなので、彼らがどう連携し協力していくのがポイントであることは大前提です。こういう設定の奇想天外さは不可欠ですが、そこに期待感が膨らんでいく絶妙の盛り上がりは快適なものでした。

事象があり得ない分、リアルなやり取りはコミカルな展開を盛り上げてくれます。笑いからアクションや仲間意識の育つ具合をすこぶるスムーズに感じることができます。

韓国ということもありましょうが、例のというか、彼の国だからこそというか、組織的な悪徳宗教が絡んできて騒ぎが大きくなるということがなかなかにシニカルでもあります。

この作品は全く見ず知らずの5人が結束していく話ですが、彼らの関係性を想像するに『Mr. インクレディブル』を思い起こします。メンバーそれぞれが異なる能力を持つとか、その違いを組み合わせて困難を乗り越えるであるとか、能力の違いを組み合わせることで思いもよらぬ機能が生まれるというようなことは共通しているかもしれません。普通の人が突然超能力を身につけてしまうという状況は、『クロニクル』に通じるかもしれません。ただ、あのような悲劇的要素はあまり感じることはないと思われます。

似た要素を探せばきりがありませんが、とにかく痛快な作品です。「そんなバカな」が、これだけテンポよく連発されると、圧巻以外の何ものでもありません。

『ハイファイブ!』

監督/カン・ヒョンチョル 
出演/イ・ジェイン、アン・ジェホン、ユ・アイン、ラ・ミラン、キム・ヒウォン 
全国公開中
https://klockworx.com/movies/hifive

配給/クロックワークス
©2025 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & ANNAPURNA FILMS. All Rights Reserved.

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Text:Takashi Matsuo Edit:Sayaka Ito

Profile

松尾 貴史 Takashi Matsuo 俳優、タレント、創作折り紙「折り顔」作家など、さまざまな分野で活躍中。最新刊に毎日新聞のコラムの書籍化第6弾『違和感気質』。出演映画『月影のゴールデン街』10/30公開。カレー店「パンニャ」店主。@Kitsch_Matsuo
 

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