JURIN (XG)や是枝裕和らが来場。日常的な視点でおとぎ話を紡ぐ「シャネル」2026年秋冬 オートクチュール コレクション | Numero TOKYO
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JURIN (XG)や是枝裕和らが来場。日常的な視点でおとぎ話を紡ぐ「シャネル」2026年秋冬 オートクチュール コレクション

シャネル(CHANEL)は、現地時間の7月7日パリのグラン パレにて2026年秋冬 オートクチュール コレクションを発表。JURIN (XG)や映画監督の是枝裕和に加え、アンバサダーを務めるティルダ・スウィントン、ペドロ・パスカル、ヴァネッサ・パラディ、カトリーヌ・ドヌーヴらメゾンに近しいセレブリティが来場し、ランウェイ形式のショーを楽しんだ。

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会場となったグラン パレのサロンには、毒々しい花々やつるの絡まった木々を縫うようにランウェイが設置。絵本の中に入り込んだような世界観を構築するアイディアの発端となったのが、アーティスティック・ディレクターを務めるマチュー・ブレイジーがガブリエル・シャネルの本棚から見つけた『Les Fées, Contes des Contes(妖精たち―おとぎ話集)』という童話集だという。コレクションノートによればブレイジーは、今回のオートクチュール コレクションにおいて「まるで本のように服を通して物語を語るということを追求しました」と語っている。

会場内に、映画音楽を数多く手がけるカナダ出身の音楽家ハワード・ショアの『Bag End』が流れると、ショーがスタート。ファーストルックは、ギピュールレースとシルクモスリンを格子柄に編み上げた軽やかなスーツ。シャネルのスーツらしいコンパクトなシルエットと素肌が透けて見えるほどシアーなテクスチャーが、イノセントなムードを醸す。モデルの手には先述した『Les Fées, Contes des Contes(妖精たち―おとぎ話集)』も携えられている。本コレクション全体に通底するインスピレーションソースとして、『ジャックと豆の木』や『3びきのくま』といった絵本の存在が挙げられており、ファーストルックのレースあしらいも『ジャックと豆の木』に登場する魔法の豆の木をどこか連想させる。3番目に登場した身体に沿ったドレスは、バイアスにとった生地につるが螺旋状に絡まったような精緻なエンブロイダリーのパッチがあしらわれており、専門性の高い職人たちが集うメゾンの複合施設「le19M(ル ディズヌフエム)」の、卓越した技術の素晴らしさに息を呑む。

無垢でドリーミーな世界観は小物類にも貫かれており、木の枝を重ねた鳥の巣を模したヘッドウェアやビーンズ型のハンドバッグ、ヒール部分に蝶の羽根や植物のモチーフをあしらったポインテッドトゥのパンプスなどが登場。また、コートやドレスなど、序盤に複数のバリエーションで披露された、ブークレーのようなふくよかな生地に空いた穴から芯地のカラーが覗くピースも目を引いた。カットアウトのような規則的な配置ではなく、手仕事と思われるアトランダムな柄行きに、崇高なサヴォアフェールが息衝く。

鳥のさえずりや動物の鳴き声を織り交ぜた映画の劇伴のようなBGMが、服に宿るストーリー性を増幅させたかと思えば、中盤あたりには、女性の声で1日の慌ただしいルーティンをリーディングしたトラックが流れた。朝起きて、ドアを開けて、家事をして、ドアを閉めて、外出してという「日常の営み」を執拗に繰り返す声は、ブレイジーが語った「女性たちに常に突きつけられる現実であり、人生の一部」を示唆するものだ。それでも現実をタフに生き抜く女性たちへのブレイジーの眼差しは優しく、衣服を通じて個々人が内包するストーリーに光を当てる。本コレクションに登場するモデルたちの年齢は実に幅広く、そのキャスティングも含めてコンセプトの輪郭を補強していた。ブレイジーは、「シャネルのオートクチュールは、単なるおとぎ話ではなく、その本質は女性のため、彼女たちの現実や(日常的な)冒険のためにある」とも語る。もちろん、オートクチュールというのは、多くの人々にとってはまるでおとぎの国のような世界であり、それを手に取り、身に纏えるのはごく限られた人のみであることは周知の事実。それでも日常という冒険を繰り返すその先に、煌びやかなオートクチュールの世界が続いていることをブレイジーは明示する。

コレクションノートには、「ガブリエル シャネルの生涯は、ひとつのおとぎ話だったのではないでしょうか」というブレイジーの言葉もある。孤児として過ごした幼少期を経て、トップオブトップに上り詰め、画一的だった女性の装いを開放に導いたガブリエルの功績は、まるでおとぎ話のように映るかもしれない。ただ、立身出世のサクセスストーリーとしてではなく、自ら道を切り開いていくバイタリティと女性たちのエンパワメントを促すそのスタイルに、ブレイジーはおとぎ話のような夢物語を投影して見ているのだろう。

改めてショーに話を戻そう。さまざまな属性や異なる出自の女性たちに寄り添う意識は、多様なルックにも見て取れる。真っ赤なスパンコールのドレスの後には、金糸を混ぜたネルシャツとニットパンツのカジュアルなルックが登場。ロング丈のジレと透け感のあるワンピースの合わせや、ヌーディーなトーンで統一したシャツジャケットプリーツスカートというエフォートレスなスタイルが続いたかと思えば、パワーショルダーが印象的なグレンチェック柄のセットアップ、ピークドラペルのネイビーコートといったマスキュリンなルックでストイックに引き締める。シャネルのシグネチャーでもあるツイードジャケットは、袖口やヘムラインが粗野な切りっ放し処理となっており、中には安全ピンをアクセサリーに使ったパンキッシュなスーツも。メゾンの伝統をブレイジーなりに再構築した意欲的なコレクションピースも目立った。

最後に、演出面の素晴らしさにも触れておきたい。ブリージー指揮下のシャネルといえば、2026年 メティエダール コレクションにおいて、ラジオのオンエア風のベタな演出でナタリー・インブルーリアの『TORN』という曲が流れたのも記憶に新しい。誰もが知るポップナンバーで、市井に暮らす人々の共通項としての心象風景を鮮やかに浮かび上がらせたのだ。今回もショーの終盤、頭にヴェールを被り、手にはブーケを携えたマリエを思わせる純白のドレスを纏ったモデルが登場すると、シックスペンス・ノン・ザ・リッチャーの『Kiss Me』が大音量で鳴り響いた。アメリカの青春ドラマ『ドーソンズ・クリーク』の主題歌であり、日本でもNTTドコモのCMでも使われた90年代の大ヒット曲は、ノンビート+アカペラから原曲ヴァージョンへとシームレスにチェンジすると、会場全体を多幸感にも似た雰囲気が充満していく。あらゆる女性たちの日常に寄り添い、それぞれのストーリーに光を当てたコレクションとして、「心のベストテン」的なポップソングが、感情を揺さぶるスイッチの起動装置として確かに機能していた。

これはもちろん、ブリージーだけでなく選曲家も含めたチーム全体の仕事ではあるが、気を衒うことなく見る者の心を掴み、ノスタルジーを喚起させる演出には、今回もグッと来るものがあった。コレクションピースの素晴らしさはもちろんだが、セットデザインや音楽、演出に至るまで、微に入り細を穿つ出色の内容は、いつまでも心に強く残るものがあった。

Chanel
シャネル カスタマー ケア センター
TEL/0120-525-519
URL/www.chanel.com/

Photos: ©CHANEL Text: Tetsuya Sato

 

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