
名作というものの定義のひとつに、「時代を超えて、数多くの名優たちが演じる作品」というものがあるとすれば、『セールスマンの死』はその代表作の一つと言えるだろう。
アメリカの現代劇作家として有名なアーサー・ミラーが1949年に発表したこの作品は、消費社会によって繁栄していくアメリカ社会を背景に、そこから疎外されまいと必死にもがく、老いたセールスマンの姿を描いていく作品だ。
トニー賞ベストプレイ賞、ピューリッツァー賞、ニューヨーク劇評家賞など名誉ある賞を数多く受賞し、主役のウィリー・ローマン役はブロードウェイ初演のリー・J・コッブをはじめ、ダスティン・ホフマン、フィリップ・シーモア・ホフマンなどの名優が演じてきた。日本でも2025年に亡くなった仲代達矢のウィリー・ローマンを覚えている人もいるだろう。

今回は、イッセー尾形がこの役に挑む。ひとり芝居の名手として、たったひとつの身体から、無数の人物、声、記憶、時代の気配を立ち上げてきた彼が、ウィリー・ローマンという役をどう引き受けるのか。妻リンダ役の高橋惠子、ウィリーの長男ビフ役の中島裕翔、次男ハッピー役の竪山隼太をはじめ、長谷川初範、入野自由、内藤栄一、松田佳央理、佐藤誓ら共演者と新しい『セールスマンの死』を生み出していくだろう。翻訳は小田島創志、演出は小川絵梨子が手がける。
『セールスマンの死』は、ウィリー・ローマンが特別な悪人でも、極端な敗北者でもないことだ。よく働き、家族を愛し、成功を信じ、自分の人生には意味があるはずだと願っている。だが、その願いが強ければ強いほど、現実との距離は残酷に浮かび上がる。社会が約束したはずの成功、父親としてのプライド、子どもに託した夢。それらが少しずつほころび、やがてひとりの人間を追い詰めていく。
初演から70年以上を経たいま、この物語は決して遠いアメリカの過去ではない。成果を出し続けること、価値ある人間であり続けること、家族の期待に応えること。そうしたプレッシャーは形を変えながら、現代を生きる私たちのすぐそばにもある。ウィリーの物語は、いまもなお生々しい。
名作が何度も上演されるのは、そこに時代ごとの痛みと共感が映り込むからだろう。2026年の『セールスマンの死』は、痛みを感じながらも、人は何を信じて生きるのかを改めて問いかける舞台になりそうだ。
舞台 セールスマンの死
作/アーサー・ミラー
翻訳/小田島創志
演出/小川絵梨子
<東京公演>
日程/2026年6月26日(金)〜6月28日(日)
会場/東京芸術劇場 プレイハウス
<埼玉公演>
日程/2026年7月3日(金)〜7月12日(日)
会場/彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
<大阪公演>
日程/2026年7月18日(土)〜7月20日(月・祝)
会場/COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
<愛知公演>
日程/2026年7月24日(金)〜7月26日(日)
会場/東海市芸術劇場 大ホール
<富山公演>
日程/2026年8月1日(土)〜8月2日(日)
会場/富山県民会館
<長野公演>
日程/2026年8月14日(金)〜8月15日(土)
会場/ホクト文化ホール(長野県県民文化会館) 中ホール
公式サイト/https://salesman2026.jp/
